瞋恚を助けて賜び給え

2019-08-22 | 読書
 久しぶりに、能の関係の本を開いた。
 松岡心平著「能の見方」(角川文庫)だ。
 謡曲「重衡(笠卒塔婆)」のことが書かれている部分を改めて読んだ。
 今度、奈良へ行く機会があったら、奈良坂へ行ってみようと思った。
 奈良坂は、今はどうだか知らないが、般若野と呼ばれるところにあり、いにしえの都を一望できる場所である。
 南に、西大寺、東大寺、法華寺、興福寺、不退寺、飛鳥寺(元興寺)が眺められる。
 そこは、平重衡が、南都焼き討ちの命令を出した場所であり、首が晒された場所である。
 古寺である般若寺があり、そこの大卒塔婆の前に晒されたと伝えられている。
 斬首されたのは、木津川の畔だそうだ。
 そう遠くないところだ。
 重衡は、寺を焼き、その魂は、奈良坂をさまようことになる。
 謡曲では、そういうことで、重苦しさに終始する。
 人の罪業や弱さについて、思わずにはおられない。
 「瞋恚を助けて賜び給え。瞋恚を助けて賜び給え」と。