修羅の夜戦

2014-02-25 | 【断想】ETC
 謡曲の笠卒都婆の十段目。
 最後の段であり、修羅のさまが謡われる。
 旅の僧が尋ねる。
 「・・・東方より、ともし火あまた見えたり・・」と。
 重衡の霊が応える。
 「あれこそ・・・春日の野守りの飛ぶ火なり」
 春日野は、かつて戦場であった。
 その火は、戦の軍勢がともす篝火、松明の火である。
 切っ先磨きし剣の光も見える。
 火炎と火炎を反射させる刃。
 修羅の夜戦、瞋恚の炎。
 「山河を動かす修羅道の、苦しみの数は・・・」
 「重衡が、瞋恚を助けて賜び給え、瞋恚を助けて賜び給え」

妄執を助け給へや

2014-02-25 | 【断想】ETC
 謡曲の笠卒都婆の九段目。
 重衡が木津川で最期をむかえたときのことが謡われる。
 重衡は、川原の砂に木仏をすえ、浄土への導きを願って拝む。
 木仏の御手と重衡の手を紐でつないで。
 南都の寺々を焼き、僧を殺した悪逆は消えることはない。
 だけど、人の世に生きる重衡にとって他の選択はできたろうか、と。
 「罪業まことに深しといへども、聖教値遇の順縁にて、かへって得道の、因になりけるとかや」と。
 しかしながら、それはかなえられなかった。
 「・・・涼しき道に入る月の、光は西の空に、至れども魄霊は、なほ木のもとに残り居て、ここぞ閻浮の奈良坂に、帰り来にけり・・・・」
 そして、この段は、「重衡が、妄執を助け給へや」としめられる。

みぬいにしへの春

2014-02-25 | 【樹木】梅
 ながむればみぬいにしへの春までもおもかげかをるやどの梅がえ
 式子内親王の歌。
 「いにしへの春」とあるが、それは単に過去のことか。
 それだけではないように感じる。
 その前の「みぬ」に、「みぬ春」が思われる。
 さみしさもただよってくる。