四条五条の橋の上、
四条五条の橋の上、
老若男女貴賤都鄙、
色めく花衣、
袖を連ねて行く末の、
雲かと見えて八重一重、
咲く九重の花盛り、
名に負う春の気色かな、
名に負う春の気色かな。
能「熊野(ゆや)」の一節である。何とも語呂がよくて、時折、口ずさむ。
いにしえ、平宗盛が清水寺で花見の宴を催す。宗盛の寵愛をうける熊野は、東国に住む母の命が尽きかけているのを知り、一刻もはやく母のもとへと思いつつ、舞を舞わないわけにはいかなかった。
春雨の、降るは涙か、降るは涙か桜花、散るを惜しまぬ人やある。
熊野は歌をよみ、短冊に書いて、宗盛にさしだす。
いかにせん 都の春も惜しけれど 馴れし東の花や散るらん
宗盛は、この歌を読む。熊野の思いが通じ、暇をもらって東国に下ることができることになる。謡曲には、桜にまつわる傑作が他にもある。この季節にと思う。
四条五条の橋の上、
老若男女貴賤都鄙、
色めく花衣、
袖を連ねて行く末の、
雲かと見えて八重一重、
咲く九重の花盛り、
名に負う春の気色かな、
名に負う春の気色かな。
能「熊野(ゆや)」の一節である。何とも語呂がよくて、時折、口ずさむ。
いにしえ、平宗盛が清水寺で花見の宴を催す。宗盛の寵愛をうける熊野は、東国に住む母の命が尽きかけているのを知り、一刻もはやく母のもとへと思いつつ、舞を舞わないわけにはいかなかった。
春雨の、降るは涙か、降るは涙か桜花、散るを惜しまぬ人やある。
熊野は歌をよみ、短冊に書いて、宗盛にさしだす。
いかにせん 都の春も惜しけれど 馴れし東の花や散るらん
宗盛は、この歌を読む。熊野の思いが通じ、暇をもらって東国に下ることができることになる。謡曲には、桜にまつわる傑作が他にもある。この季節にと思う。