梶哲日記

鉄鋼流通業会長の日々

銀行との付き合い(その3)

2021年11月06日 05時23分00秒 | Weblog
さて「銀行はわが社のどこを見ているのか」について、私が想定している具体的な項目に入ります。「銀行はわが社のどこを見ているか」は、「銀行は経営者のどこを見ているのか」に通じます。それも包括して、個々の事項をお伝えしていきたいと思います。

【財務知識】 

経営者のどこを見ているの観点からすると、財務知識があるかないかは大きな要素です。むしろ財務知識を最低限身につけることは、経営者にとって必須条件です。何故なら、銀行とその共通の土俵で相対峙するのですから。さしあたり決算書が理解できるかどうかです。その決算書で中核となるのが財務諸表です。財務諸表は財務三表ともいわれ、貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書のことです。

ではこのような会計原則による処理がなぜ必要なのか。それは会社とは私的なものではなく公器だからです。公器とは、利害関係者の存在を意識し、また国への納税義務があるということです。会社は事業を行う上で様々な取引を行い、そこに債権・債務が発生しますが、その債権者(利害関係者)が保護される必要があります。一方会社は税法に則って法人税を納めるため、正しい算出で公平に課税されるべきです。これから逸脱すると公器ではありません。
 
ある規模の会社となれば経理部があり、社外には顧問の税理士がいます。従って経営者は経理会計の専門知識はいりませんが、最低限の財務知識を介して、上記のような社会的な責務を認識すべきです。その意味で、銀行は決算書(財務諸表)の改ざんを特に嫌います。銀行が重視しているのは、良い数字かどうかよりも、嘘がなく正確に作られているかどうかです。

私の失敗談をここで一つ。先代がまだ存命の頃、メインの仕入れ先の商社に決算書を持参して、その年度の業績報告に行った時のことです。一通りこちらの説明が終わると担当者から質問がありましたが、貸借対照表の中の『仮払金』や『未収入金』についての内訳に答えられなかったのです。担当者からは「梶さんは社長の代理でしょうが、自社の決算書でしょ。会社の実状を知らないのですか」と、厳しい指摘がありました。とても恥ずかしい思いをしました。社長の息子に対する指導だったのだと、今はそのように捉えています。

自社の決算書で、そのような洗礼を受けました。これが切っ掛けで、先代が亡くなった後、時間を作って外部の財務会計の勉強会に何回か通いました。その後は、その知識と自社の毎期の決算書の実態を照らし合わせながら、財務が何とか分かるようになりました。経営者は知らないことは、ある段階で勉強しないといけません。財務について自信が持てれば、銀行は怖くありません。

【資金繰り・月次決算】

社内でどこまで管理会計ができているかです。納税のような法律に基づいて行われる財務会計ではありませんが、お金の流れや収益の把握を、自社流でもタイムリーに把握する努力です。会社経営でこの管理会計は義務ではありません。しかしながら銀行に運転資金などの融資を申し込む際に、これに関連するデータ(数字)や資料を要求されることが多く、提出できないと自社の実態を正確に知らないとされ、評価は下がります。

会社は利益が出ていて予算内の経費で収まっていれば、新たな資金需要は発生しません。しかし、赤字であれば繋ぎ資金が、売上が急増し在庫を増やそうとすれば運転資金が、新規に機械や設備を導入すれば投資資金が、相応に必要となります。黒字倒産という言葉がありますが、見掛けの利益より実際のキャッシュフローが大切だということです。わが社では三カ月先までの資金繰り表を作成しています。経理任せではなく、経営者による売り上げや仕入れ予測を立て、そこに組み込んで更新していかないと意味がありません。

年度決算だけではなく、月次決算するのであれば、それなりの体制が必要となります。わが社の場合、メインの事業としては素材販売と加工品販売となります。加工品の場合、製造現場の作業員個々から、どの素材を使ってどこ向けの製品を加工したか克明に日々の記録を上げてもらい、そのデータを集計する業務も一人分の仕事となります。毎日の日計を出し月次決算に積み上げていくには、手間が掛かり経費の負担を覚悟しなくてはなりません。月次決算は翌月10日以内に出せるようにしています。この月次は、やった結果を全社員で共有し、業績次第では直ぐに手を打つためのものです。

月次決算を実施することは、年度ごとの予算化や経営(利益)計画を策定していることが前提です。年度初めに、最低一年先まで人材採用や設備メンテなども予定に組み入れ、経営計画は少なくとも場当たり経営をしないとの覚悟の表明です。経費にしても社長だから自由勝手に使っていいのではなく、社長も管理されるべきであり、会社でイレギュラーは誰一人としてありません。そのような社長の後ろ姿を社員は冷静に見ています。後の項で触れますが、経営計画書は立派な「○○」になります。銀行がその企業へ貸し易くするための助けになります。   ~次回に続く~
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