梶哲日記

鉄鋼流通業会長の日々

顧客の困りごと(その1)

2019年04月20日 06時04分10秒 | Weblog
他社と競合しない。同業他者と連携ができる。販売価格が通る。そしてお客様から喜ばれる。このような会社は実際存在しづらく、いわば理想的な会社です。これから紹介します企業は、少しでもそれに近づこうと努力した会社の軌跡でもあります。
 
2000年の12月に、鋼材の小口混載・共同配送サービスを専業として立ち上がった運送会社があります。その社名は“メタル便”です。元々母体の運送会社があり、そこは鋼材輸送の他、建築資材や貿易貨物など保管配送も行い、地方からの帰り便を利用し全国への運送斡旋業務を併せ行なっていました。その母体の会社名は“総合トラック”です。

総合トラックの社長(梶大吉:私の弟)は、浦安鉄鋼団地の懇意にしている経営者から、輸送における鉄屋の悩みや困りごとの相談を長年受けていました。それは、小ロットの配送です。請け負っている運送会社は、一車満載で一箇所降ろしなら喜んで引き受けますし、荷主もそれなりの運賃も支払うことが出来ます。

しかし小ロットを何軒もの納入先に降ろしていく配送となると、手間や時間が掛かりますので、運送会社はそれなりの運賃はもらいたいところです。まして一箇所だけ飛び離れた納入先となると、なにがしかの割り増し運賃を貰ったところで中々ペイはしません。

一概には言えませんが、力関係からすると鉄屋の荷主の方が運送会社より上位に立ち、運送会社の運賃交渉は難航してきました。反面、長年の取引だからとか、貸し借りを繰り返し一回で清算をしなとか、荷主と運送会社の運賃設定は「なあなあの世界」でもありました。

小ロットの遠隔地でも、納期を十分もらえれば配送もやり易くなります。厄介なのは小ロットでも納期がありますので、はっきり言って運送屋からしたらやりたくない仕事です。しかし鉄屋は小ロットでも、売上に寄与するためだとか、普段量を買ってもらっている得意先なので繋ぎの商売として、売りたい心情も理解出来ます。

鉄屋が自社社員の運転手で自社所有のトラックで、一ヵ月のコストとしてその運賃を管理しまえば、小ロット配送は何とか解決します。しかし鉄屋と運送屋との配送形態となると運賃が跳ね返り、これが潜在的な悩みや困りごとになっていました。

19年前にメタル便が発足する前は、鋼材の小口混載・共同配送サービスを専業とした会社はありませんでした。似た機能を有する会社はあったようですが、使い勝手が悪かったようです。この小ロットを多くの鉄屋から、鋼材の種類・形状は問わず積極的に集めて、その方面に一車満載を追求しようとしたのがメタル便です。当初は関東地区に限定して、前日の夜までに荷物を出荷してもらえれば、翌日配送を可能としました。

そして画期的だったのが、分かりやすい運賃表を開示したことです。縦軸は重量(kg単位)、横軸は距離(エリア単位)、そのマトリックスの料金設定です。これに当てはまれば、どの荷主も同一です。荷主は運賃交渉する手間も省け、納期も気にせず、その運賃を基に小口販売の損益を判断出来ます。

商売は何でもそうですが、創業して採算に乗るまではリスクを負います。メタル便の場合は、一定のトラックを用意しますが、その方面への荷物が集まるかです。逆に多く集まり過ぎれば更に一台チャターしますが、そのトラックが満載になるか、つまりコストの補償はないのです。

いずれにしてもメタル便は、そのような顧客の困りごとを解消するユニークな会社を興しました。専業の他社が存在しなかったということは、市場がニッチ過ぎたのか、それまでの運送会社の取り組み方が違っていたのか、メタル便はそれを実践しながら、問題解決を試みました。そしてその後は、意外な展開となっていきます。 ~次回に続く~


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