①2022年1~3月期 の詠句ー私撰6句:
・山茶花の残る一花に四十雀 ・冬木立落葉で遊ぶ子犬かな
・雪の後垣根の赤き藪椿 ・陽溜まりを探して渡る冬目白
・繕いし椨の根元の木瓜の花 ・隣国へ避難の母子凍てる春
初春らしい山茶花の残り花や緑濃い藪椿の赤い花が被る白い雪。冬木立広場の落葉で遊ぶ子犬や春近しのちょっと暖かい陽溜まりを探して飛ぶ目白などの日本。その反対側の国ウクライナ。戦火を逃れ まだ凍てる春を探して隣国ポーランドに避難する母子が 哀しくテレビに映る。
②2022年4~6月期の詠句ー私撰6句:
・菜の花の見上げる空やウクライナ ・雉鳩の春の羽傘卵抱く
・田植田の水面の空に舞う揚羽 ・鵯の声のやかまし桑の揺れ
・短夜や起きろ起きろと鳴く尾長 ・蠛蠓を払うその手や泥と稗
庭先の緑濃い桑に飛来するキジバトやヒヨドリ。散歩する堤の土手には、菜の花が真っ黄色に咲いて ウクライナの空を見上げる。蠛蠓(まくなぎ)の煩さや高い声で鳴くヒヨドリを避けるように散策する田植田の畔道。田植田の水面に映る己を見てアゲハ(揚羽蝶)が 舞っている。
③2022年7~9月期の詠句ー私撰6句:
・ことし初ミンミン蝉の声を聴く ・戻り梅雨ゲリラ豪雨に濡れ雀
・真夜中のカミナリ豪雨蕎麦の花 ・雨上がり庭先の一男郎花
・青い空 桜落葉とアカタテハ ・庭先の灯りが点る秋の暮れ
コロナ感染第七波の2022年夏季。三密を避ける家居の日々を高めるゲリラ豪雨や戻り梅雨。真っ白く咲く蕎麦の花やオミナエシや秋山の花々につづく街の桜落葉が、秋の暮れ景色を濃くする。
④2022年10~12月期の詠句ー私撰6句:
・秋そばの白花見上げる紅コキア ・夕暮や途切れ途切れの虫時雨
・行く秋を惜しむ赤い実ナナカマド ・ふる里の赤黄緑の山眠る
・山茶花の残る一花に冬の蝶 ・枯木立風に抗うレジ袋
赤黄緑の眠る山麓の秋そばの”白さ”が目立つ。街路樹のナナカマドには赤い実花。家々の庭先では コオロギなどの秋の虫たちが時雨る。山茶花の花の終る街には 枯木立の枝にぶら下がるレジ袋が 景色をつくる。