腸管手術は特別な手術ではない。
外傷縫合を上手にできる人ならできる。
これがプレートやスクリューを使う骨折手術だとまったく違う道具、知識、技術、etc.が必要だし、関節鏡手術だと、どこを見ているのかもわからないだろう。
腸管手術は、腹腔探査ができれば、あとは腸管の操作と閉腹ができれば済む(・・・・それがたいへんなのは身をもって知っていますとも)。
・汚さないように
・吻合部の血行が維持されるように
・内容が漏れないように
・しかし、狭窄しないように
やらなければならない。
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一般には、連続縫合で2層に縫われることが多い。
・粘膜を縫合した方が漏れにくい。
・粘膜、粘膜下織、筋層、漿膜を層ごとに合わせたほうが早く、良好に癒合する。
・内反を大きくすると漏れにくいが、狭窄しやすい。
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左は粘膜だけを連続縫合し、2層目は漿膜から筋層へ針を通して連続縫合する方法。
この他にも針のかけ方は数多く考案されていて、それぞれ長所、短所がある。
私は、症例ごと、腸管ごと、一針ごとに糸のかけ方を使い分ける。
考える要因は数多く、そして縫合しながら様子によって縫合方法を選ぶ。
たとえば、空腸上部の吻合だと、狭窄は絶対に避けたい。通過障害を起こすとすぐに胃拡張につながり、予後にかかわると考えるからだ。
回腸と盲腸の吻合だと、腸壁の厚さが全然違う。同じような糸のかけ方にはできない。
結腸の閉鎖、吻合だと、早さ、丈夫さが問題になる。狭窄させないことは大きな要因ではない。
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粘膜もひろい、粘膜下織同士が合わせられ、漿膜もとめられるので、漏れも狭窄も少ない。
一針ごとに結紮しなければならないが、1層縫合なので慣れれば2層縫合より早い。
しかし、漿膜面に多くの結紮糸が露出しているのが癒着の要因となると言われている。
私も一時Gambee縫合をかなり使ったが最近はあまりやらなくなった。
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丁寧に縫合し、うまく縫えた手本として載っているのだと思う。
腸粘膜は、このように外反し、丈夫でもなく、縫合しても内反しない。
左は2層目、漿膜から筋層へ糸を出し、連続縫合した写真。
妙に腸管が弛緩しているのと、糸がたくさん露出しているのが気になる・・・・・
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どう吻合すれば内容が漏れず、狭窄せず、癒着しにくいか、術者が判断しなければならない。
外傷縫合ができるなら腸管縫合はできる。と書きたかったのだが・・・・・・・・まあ、練習は充分しておいたほうが良いだろう。
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今、外科実習で腸管縫合なんてするのでしょうか???
Gambee縫合は優れた方法ですが、漿膜面にたくさん結紮を残すという欠陥があります。腸管吻合の奥深さを学生達に教えるには良い練習かもしれません。
小動物の腸管吻合くらいは、実習でやるんだと思います。いろいろな縫合法の利点、欠点を理解した上で、選択して実践できるようになるには、「自習」が必要でしょうけど。