馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

橈骨神経麻痺

2008-01-08 | その他外科

Photo これは古い写真なのだが、当歳馬のひどい「肩跛行」。

まったく負重できない。ように見える。

しかし、蹄を正しい位置においてやって、腕節を押さえてやると、患肢に体重をかけることができる。

体重をかけることに痛みはないことがわかる。

P1020003 橈骨神経は脇の下から出て、上腕骨の上を通り、橈骨の頭側を肢先へと走っている。(図はJRA発刊 Rooney 先生の「馬の跛行」より)

支配している上腕三頭筋は肘を引き付ける筋肉だし、

橈側手根伸筋は腕節を伸ばし、肢を前へ振り出す筋肉だ。

これらの筋肉を使えないと、馬は肢を前へ出せず、腕節を伸ばして、体重をかけることができなくなる。

 上の当歳馬は放牧中に他の馬と激突したらしい。

神経を伸ばしたり衝撃で麻痺しているだけなら回復が期待できるが、神経が切れてしまっていては回復しないかもしれない。

                                -

 私たちが橈骨神経麻痺にお目にかかるのは、もうひとつは横臥の全身麻酔の後だ。

今ではたいへん気をつけているのでまず起こさなくなったが、固い床の上に寝かしていたり、出血などで血圧がさがっていたり、長時間同じ側を下に寝かしていたり、肢を縛り付けたりしてポジションが悪いと、肢が痺れてしまう。

そして、どうも筋肉を傷めるのではなく、神経を傷めてしまうことがある。

全身麻酔で麻痺した橈骨神経は1-2日で回復するようだ。

神経が切れているわけではなく、血液供給が乏しいかったための麻痺だからだろう。

                                -

 橈骨神経麻痺は、ひどい骨折などと姿勢が一見似ているために注意が必要だ。

                                -P1290045

 今月末にはまた公営競馬獣医師協会の研修(右は昨年のようす)に行きます。http://homepage2.nifty.com/uma-vet/index.htm

今年は、1月27日(日)に移動して、2月2日(土)に帰ってきます。

私も研修を受けさせてもらおうと思っています。

関係者の皆さん、参加者の皆さん、よろしくお願いします!

那須で会いましょう!


8 コメント

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 hig先生こんにちは。 (カワイ)
2008-01-09 11:46:14
 hig先生こんにちは。

 トウ骨神経麻痺の記事ありがとうございます。
私のおぼろな理解が大きく外れていなかったことが分かり、一安心しました。

 全身麻酔後のトウ骨神経麻痺の場合、覚醒時の事故などもありうるのでしょうね(麻痺自体が事故ともいえるかもしれませんが)。
日夜、そういう手術をされている診療所の先生方は、技術、知識の蓄積本当にすごいことだと思います。

 先生方も動物もこれからもご無事とご健康をお祈りします。
遅ればせながら、本年もよろしくお願いします。
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>カワイさん (hig)
2008-01-09 19:11:27
>カワイさん
 神経麻痺、筋障害などでは、二次的に骨折を起こさないように注意しなければなりません。それがなかなかむずかしいのですが・・・・・・
 大動物ゆえの問題のように思いがちですが、牛は硬い床に寝かせていても筋障害や神経麻痺をおこすことは少ないようです。なんなんですかね。
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今月末の研修会はとても内容が面白そうですね。 (grasshopperaki)
2008-01-09 19:20:05
今月末の研修会はとても内容が面白そうですね。
12月号馬術情報誌に記載されていたときから、参加希望でしたが、、、
母子家庭では行けそうにもありませーん!!

ここでまたその様子をお知らせいただければ幸いです。

遅くなりましたが。
あけましておめでとうございます。

七日、新冠レコード館シアターにて、初めてのフォーラムを開催しました。
今回は競馬界と乗馬界から私たちの友人を招いて、講演と事例発表し、交流を深めました。
マスコミ関係者もいらしていたので、組織の設立案が初めて公になりました。
参加者はそんなに多くはなかったのですが、質疑応答や談笑が飛び交う活発な時間を過ごしました。
本当に馬の好きな人の集いでした。中でも乗用馬の人工授精は直ぐに取り掛かりたい案件です。
こちらが組織化したら日本馬事協会と連携したい考えです。

hig先生もこの組織運営の参加いただけたらと希望します。

今年もよろしくお願いいたします。

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新年は明けまくっていますが(笑)今年もよろしく... (きゃさりん)
2008-01-10 11:07:42
新年は明けまくっていますが(笑)今年もよろしくお願い致します。
hig先生や周りの方々、馬たちにとって良い一年であることを願っています。
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>grasshopperakiさん (hig)
2008-01-10 18:36:34
>grasshopperakiさん
 ことしもよろしくお願いします。
 研修は終わったらまた報告しましょう。
 フォーラムは盛会だったようですね。これから日本の馬を支えていくのは「馬好き」の人たちでしょう。頑張ってください。
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>きゃさりんさん (hig)
2008-01-10 18:39:21
>きゃさりんさん
 今年もよろしくお願いします。
 月曜から1週間、たまっていた診療をこなすのが実はキツイ私です(笑)。
 少し余裕の持てる年にしたいものです。
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あけましておめでとうございます。 (nichol)
2008-01-12 16:16:44
あけましておめでとうございます。

麻酔後の撓骨神経麻痺、先日お目にかかりました。私の麻酔歴では2件目です。
1件目は日本で、バン馬の多分タイバックだったんじゃないかと思います。日本にいたときは大概麻酔側の人間(つまり大概私)が肢を頭側にひっぱっていましたが、その馬のときにはすっかり忘れてしまいました...失敗。この馬はたしか翌日もしくは翌々日に普通に馬運車にのって帰って行ったと思います。
2件目は先月。これはほぼ確実に麻酔時間の影響でした。4時間15分。かつ覚醒室でも患肢の関係で同側臥位。かつ覚醒にも時間がかかりました。ロープで補助しつつもなかなか苦労して立ちましたが、支持のバンデージを施され一晩翌日いっぱいまでその場(覚醒室)で過ごし、数日後にはすっかりよくなりました。

もちろんみんなこの麻痺の事実に喜ぶことはありませんが、「数日で治るよ、ちゃんとバンデージで支えてられれば」と言った感じでなかなか慣れた感じでした。

「そんなもん?」

といった感じでちょっと驚きでした。
起立できて居なかったら大違いですが...

最近いくつか覚醒がらみの後遺症、事故に短期間に集中して遭遇し、かなりへこんでいます。
でもこの難しさが余計興味をそそるところでもあります。でももう見たくないですね...こういうことは。

今年もよろしくお願い致します。
新年が先生にとって良い一年に(忙しすぎない一年に?)なりますように。
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>nicholさん (hig)
2008-01-12 18:50:26
>nicholさん
 たまに起きる障害などは経験年数の長い者が注意しなければいけませんよね。
下になる肢や肩、大腿部が痺れないようにポジションに気を使うことは大事です。

 私は肢の手術でも仰臥を好みます。横臥でやるとたいてい患肢を上にして手術し、覚醒の時も患肢を上にしたくなります。それでは、反対肢がずっと下になってしまいます。だから仰臥で手術したいわけです。

 バンデージで支えるとはどうするんでしょうか?吊起帯slingのことですか?

 うちでもmyopathyが年に数頭あります。ぜんぶ全身状態が悪かったり、出血が多かったりする症例なのですが、1頭でも減らしたいと考えています。
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