仔馬の跛行を診たら一番疑わなければならないのは「感染」による跛行だ。
細菌性関節炎、蹄の感染、細菌性腱鞘炎、骨髄炎などが多いし、その場合少しでも早く抗生物質投与を始めることが予後を左右しかねないからだ。
当歳馬は特別感染に弱いから、と思われているが、1歳馬、まれに2歳馬でもありうる。
もちろん成馬でも。
跛行を診てほしいと頼まれて、来院して体温を測ってみたら発熱していて、血液検査をしたら炎症像があって、
抗生物質投与を始めたら良くなる跛行にかなり遭遇する。
細菌性関節炎なら腫れるからわかるじゃない?と思われるが、肩、肘、股関節など腫れてもわかりにくい関節もある。
足根間関節、近位指・趾節関節、蹄関節などもそうかもしれない。
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股関節周囲炎だろうと診断して、抗生物質投与してもらって良化した2歳馬。
しかし、納得してもらっていないようで股関節のX線撮影をすることになった。
まあ、念のために骨に異常がないことを確認しておきたいという事情があるのかもしれない。
骨盤は全身麻酔しないと撮影できない。
美しいX線画像が撮れた。
おんまさんの2歳はしっかりしたものですね。
右上のモニョモニョっとしたのは何ですか?
牛でも撮る人がいると思うのですが、人手パワーが不足しますから横から枕を当てたほうがよいかなと思います。
X線装置保持もマンパワーですか。
脚立使いたくなります笑
うちでは成馬における外傷からの感染性関節炎、腱鞘炎で、診断はそれほど難しくないことが多いです。記事のように血行性であれば、触診して関節穿刺しますが、股関節などは難しそうです。
治療は関節鏡下(または注射針)で洗浄しますが、抗生物質だけでも治る症例は多いのでしょうか。また抗生物質の種類、期間などはどのように決められているのでしょうか。
質問ばかりで申し訳ないです。
大型x線装置は天井走行です。手押し床走行の装置にくらべてとても楽に安全になりました。
治療は抗生物質全身投与と局所の洗浄、関節内投与、部位と状態によっては局所灌流療法RLPを行います。うちは関節鏡手術をすることはほとんどありません。
大切なことは仔馬の細菌性関節炎のほとんどは血行性の感染で、血液検査所見からみても全身性の敗血症だということです。
抗生物質の全身投与だけで経過良好の症例は多いですよ。原因菌にもよるのだと思います。Staphy.aureus、Rhodococcus equi、大腸菌群などによる細菌性関節炎は難しいです。しかし、原因菌を特定できている症例が多くないのも現状です。
抗生物質の選択と治療期間は原因菌しだいなんですが・・・
ポータブルはなかなか正中で撮れないです。
対称性を確認したい症例は結構多いのですよ。
なかなか細菌を培養するのも難しいですよね。血液培養用のボトルを使えば確率は上がるのかもしれませんが。
感染の改善を見るときに関節穿刺を行うことはありますか?跛行の改善などの症状と組み合わせれば、治療がうまくいっているかどうかはわかるかもしれませんが、いつまで抗生物質を続けるか悩んで、長めに投与することが多いように思います。どの時点で細菌を排除できているのか知ることができればいいのですが。
培養ボトルを使ってはいますが、分離できないことが多いです。初診の抗生物質投与前に採材することが大切だと思います。
細菌性関節炎で、菌がどこにいるのかは良く考えた方が良いと思います。実は滑液中にフリーの菌はそうそう居ないのではないでしょうか。では、滑膜に細菌を証明できるか?ぜひ知りたいところです。