16日齢の子馬が、跛行し、脛骨近位の内側が腫れて、X線撮影で脛骨近位成長板損傷が確認された。
程度は軽く、変位はごくわずかだった。
これなら温存で治まっていくかも、ということで経過を観た。
跛行や負重の状態は悪くなることはなかったようだが、あまり改善もしなかった。
X線撮影で、徐々に変位してきているのが確認され、これ以上ひどくなるとよろしくないだろうと判断した。
発症から18日後に来院したことになる。
若い獣医さんたちのために、この典型的な子馬の成長板損傷の外貌写真を載せておく。
一見、飛節で外反しているように見えるかもしれないが、傷んでいるのは脛骨近位だ。
普通は様子見しない方がイイ。
すぐX線撮影で確認して、できれば当日、あるいは翌日には内固定手術した方が好い。
変位すると整復が困難で、手術もたいへんになる。
子馬は骨折していても寝起きを繰り返す。
痛い肢を上にして起きるだろう。
起立の時にその肢には、外反させる力がかかりやすい。
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左後肢を尾-頭方向で撮った画像。
内側の成長板は剥がれたようになり、骨端外側には透過部位ができた。
”結果的には” 発症すぐに内固定手術してやるべきだった。
でも、そうしていたら、「やらなくても良かったんじゃないか」という思いが残ったかも知れない。
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この内固定では近位骨端のよい位置にしっかりscrewを入れることがキモ。
aiming device を使う。
内から観るとこんな位置になる。
脛骨近位骨端は、尾側に厚さがないことに注意。
それでも、横幅が一番広いのはこの位置なのだ。
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DCPでもできなくはない。しかし、角度安定性がないので牽引力も保持力も強くない。
LCPを使って、骨端にLHSを入れれば、角度が固定されるので、強く牽引でき保持力もある。
T-LCPを使えば、骨端に2本、あるいは3本のscrewを入れられる。
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できれば、minimally invasivelly に手術したい。
大きく切開せず、皮下にプレートを刺し込んで固定できないか・・・・
しかし、18日間で変位してしまったので、プレートを使っていくらかでも整復したい。
これ以上変位させないためにも、しっかり牽引したい。
T-LCPを使うことにして、骨端部だけ曲切開してT-LCPの横棒部を当て、縦棒部は皮下へ刺し込むようにやってみた。
こうなってしまうので、骨端部に入れるLHSがT-LCPに垂直に入らない。
minimally invasive をあきらめて、皮膚を切開した。
こういう風に、LCPが脛骨から浮いているようにして、遠位にscrewを入れることで、脛骨の軸をプレートへ引っ張りたいのだ。
中央部のscrew 2本はbicortical にできないので強度は弱い。
その遠位の5.5mm screw は長すぎたので短いものに差し替える。
一番遠位にはLHSを入れた。
まだ外反しているが、成長板の内側を成長抑制しているので、徐々に外反は弱まってくれるかもしれない。
それは、成長板の機能が残っていての話。
成長板を骨癒合させてしまわない、成長板を早期閉鎖させないためには、適切な時期にプレートを外す必要がある。
通常は、発症してすぐ手術し、4-6週間でプレートを抜きたいと考えているが、
この症例は手術が遅くなったので・・・・
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映画「孤狼の血」は面白かった。
原作は読んでない。
短編集ならこの季節でも読みやすいかと思って・・・
玉石混交、かな。
人気作家もたいへんなんだろう。
いつも質を高く保っていられるとは限らない。
初診時に手術となった場合もT-LCPでのプレート固定となったのでしょか?
趣味系の読書時間の優先順位が下方に。そんな時期となりました。
読むほうも季節変化あり。
程度が軽いうちにやるなら、通常のLCPでminimally invasiveにやったかもしれません。
やはり読書は、秋や冬ですかね。この春は雨の日も多いです。晴耕雨読。
とりあえずX線診断必須ですね。
牛でも外固定はしないと治らないんじゃないですかね。
内固定までは必要ないかもですが。
アシブラブラ、にはならないのですが、急いでX線撮影すべきです。この部位を尾頭方向で撮るのは牛の獣医さんたち大丈夫でしょうか?
牛でも外固定で治すのは難しいでしょう。プレート固定一択です。
負のEBMだと思います。
牛は靭帯やってしまう確率が高いのかも知れませんが、可動制限が馬よりゆるいのかも知れません。
関節の固定以前に踵すらキャストしておけばの現在地な訳ですが、希望的観測に任せるのは良くないですね。
関節割れていれば廃用で良いと思います。牛は。
多分素人が金に物言わせて道具揃えて見よう見まねしても関節割ると思います。
成長板損傷で関節まで割れているのはtype3と4だけです。
aiming deviceはなくてもできます。プレート固定のふつうの器材があれば、あとはX線撮影しながら治せると思います。
手根の成長板とか大きくずれていても整復してキャストで治ってしまうのですけれど、どこどうやって治すかの方策を語るには報告数少なすぎるかもしれませんね。
それが問題を発見できないようなX線像提示して糊塗していることに由来するならがっかりということになりますけれど。
成長版の近位側が圧迫骨折になっているパターンはないのでしょうか。
X線では判別つかず、でも乗っているようだから様子見ていたんだけれど乗っているように見えた部分が実は骨折でした、であるなら徐々に傾いでいくだろうなとも思います。
そしてLCPの角度保持がないと思ったような治癒転帰に至らないとなるのではないかと。
球面の頭すべっているだけならDCPの引付だけでもいいように思えるのですけれど、現実そうではないのですよね。
手根の成長板って・・・橈骨遠位成長板のことですか??完全に整復できれてうまく固定できればキャストで治る成長板損傷はあります。それが難しいから多くが廃用になっているだろうと思います。
かつてはLCPではなく角度保持のないTプレートで内固定していました。子牛も子馬もうまく治りましたよ。