放牧を中止して様子を見ていたが良くならないとのこと。
飛節の角度や曲がり方や動きが気になって、まず飛節からX線撮影をしてみた。
足根骨の崩壊かと疑っていたのだが、足根骨はほとんど潰れていない。
関節が融解し、関節でなくなり始めている。
X線画像診断学的に言うと、関節腔の狭小化、不鮮明化、軟骨下骨の不整な透亮像、 などと表現されるのだろう。
この馬の場合は、まだ関節辺縁の骨棘の形成や、贅骨形成や、完全な骨癒合は起こっていない。
しかし、もっと病状が進行すると、関節の外にも骨増勢が起きて、外見上もわかるようになる。
左の馬のように・・・
こうなると、「飛節内腫」と呼ばれるようになる。
古典的な病気で、跛行診断で行われる飛節の屈曲試験(しばらく関節を屈曲させておいたあと歩かせる走らせるすると跛行がひどくなることで、その関節に問題があることがわかる)は、「飛節内腫試験」と呼ばれるくらいだ。
他の診断方法としては、足根骨間関節や足根骨中足骨関節に麻酔薬を注入して、跛行が和らぐかどうか検査する。
足根骨間関節に針を刺すのは、治療のためにステロイドを関節注射するためにも必要な手技なのだが、これがなかなか難しい。
左図はAdams' Lameness in Horses 5ed. より。
足根骨間関節はBが穿刺ポイント。
あまり刺す機会がある関節ではないので、かえって練習しておく必要が ある。
かつて海外では、足根骨関節腔をドリルで穿孔し、骨癒合させてしまうことで痛みを軽減させる手術がよく試みられていたようだ。
しかし、近年はアルコールをこの関節注入を、ドリルによる関節癒合より優先させる馬外科医が多いようだ。
ただし、脛骨足根骨関節(飛節)と足根骨関節がつながっていないことをその馬で確かめておかないと、アルコールが飛節に入ると困ったことになる。
最初は造影剤を足根骨関節に注入し、X線撮影し、飛節とつながっていないことを確かめてからアルコールを注入する。面倒だ・・・・・・
あるいは、レーザーファイバーをこの関節腔へ入れてレーザーで焼灼することで関節を癒合させるという方法もある。
ドリルにせよ、アルコールにせよ、レーザーにせよ、足根骨間関節の癒合術を行っても、乗馬程度ならともかく、競馬は厳しいだろうと考えている。
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