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馬医者残日録

サラブレッド生産地の元大動物獣医師の日々

全国公営競馬獣医師協会研修2019 その1

2019-02-02 | 講習会

恒例の全国公営競馬獣医師協会の研修に行ってきた。

千歳-福島は1往復だけになっているので、空港へ迎えに来てもらって、夜の到着になる。

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初日は腸管手術実習。

4名の獣医さんは手洗いして開腹手術を練習してもらった。

メスの腹を使って、one smooth motion で皮膚と皮下織を切れ。とある。

それも経験がないと難しい。

この写真と説明は新しいEquine Acute Abdomenから。

The Equine Acute Abdomen
Anthony T. Blikslager,Nathaniel A. White II,James N. Moore,Tim S. Mair

Wiley-Blackwell

 

 

残った時間は、他の先生がたに腹腔内探査を体験してもらった。

そして、腸管吻合の練習。

生産地では年間100頭以上の腸管手術が行われている。

救命率は70-80%。

手術を最後までやった症例では、ほぼ9割が退院していく。

ほかの地域でも疝痛馬が開腹手術で助かるようになってもらいたい。

              ー

この研修は、はじまって18年。

今回で20回目だそうだ。

記念のケーキのロウソクを物江名誉会長が吹き消した。

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27名の獣医さんが参加されていた。

北海道十勝、胆振、東北、関東、関西、そして沖縄宮古島まで。

             ー

オラは留守番でした。

遠吠えして吠えておこられました。

 

            


10年目研修 子牛の骨折内固定

2018-12-13 | 講習会

10年目研修の第2班。

また骨折内固定の実習を頼まれて行ってきた。

Synthesの全面協力で器材を使わせてもらえる。

脛骨から始めて、橈骨、大腿骨、上腕骨もやってみたり、アプローチを確認してもらった。

キャノンのDRもデモをかねて使わせてもらい、

骨折の評価、内固定途中の評価、できあがりの評価をその場で確かめられる。

実際の内固定手術でもDRは大活躍してくれる。

            ー

本当は、3日くらいかけてゆっくり勉強し練習すると、少なくとも基本的な手技と知識が身につくと思うのだけれど、

なかなかそうも行かない。

しかし、うちで1日だけ練習して行って、上腕骨骨折の内固定を2頭成功させた(上腕骨骨折の内固定は難しい!)

本州の獣医さんも居る。

「北海道では子牛の骨折は内固定してでも治してもらえる。

北海道の牛の獣医さんは骨折の内固定の知識や技術も持っている。

さすが北海道だ。」

と、なる日が来てもらいたいと思う。

「北海道で牛の臨床やって、整形を専門にしたい」

という若い獣医さんだって出てくるかもしれない。

まずは、成功の報告が来るのを楽しみに待ちたい。

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研修の前日、私は薪割り。

けっこう息もあがる。

背筋や肩周りをはじめ足腰も使い、全身の筋力トレーニングにもなる。

そして特有の爽快感がある。

バッティングセンターでの運動と似ているかもしれない。

成果(割った薪)が増えていくので、達成感もある。

流行る?・・・・・・・・そんなことはないな;笑

 

 

 


軽種馬振興会での講演

2018-12-11 | 講習会

軽種馬振興会に頼まれて講演した。

予防の話をしてほしい、というリクエストだったので、

馬の手術や解剖をしている立場から、生産牧場が事故防止のためにできるのではないか、という点について話させてもらった。

           -

半分は疝痛を減らすためには、という話。

日高の結腸捻転の率は、諸外国の文献に比べてとても高い。

雨量豊富な初夏、暑い夏、そして放牧管理がその要因だろう。

しかし、昼夜放牧をするようになって夏の結腸捻転は減った。

その点から考えれば、昼夜放牧しない牧場や馬の夏の結腸捻転も減らすことができるはず。

           -

結腸左背側変位は、従来考えられてきたように、ガスが張った大結腸が浮かび上がって脾臓にひっかかるのではなく、

重くなった胃が大結腸を押しのけるように沈みこみ、胃と脾臓に大結腸がひっかかる。

と私は考えている。

だから、

濃厚飼料を与える1回量を減らす。

飼い付け回数は増やす。

粗飼料を与えてから濃厚飼料を食べさせる。

ビートパルプは完全に水で戻してから、水分を完全に切って与える。

このことで結腸左背側変位が激減した牧場もある。

           -

馬の寄生虫の薬剤耐性を進めないことに留意した駆虫方法。

もう全頭いっせいの駆虫は望ましくない。

子馬はフルモキサールで回虫の駆虫を。

繁殖雌馬も含めて葉状条虫の駆虫が必要。

イベルメクチンによる普通円虫の駆虫が必要。

駆虫薬に頼らない寄生虫対策を。

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当歳馬の骨折は治せるようになってきている。

骨折事故発生時の対応が重要。

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分娩事故を減らすには、人手をかけすぎない分娩対応

そして、分娩後の異常には適確な診断と対応を。

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子馬の、ロドコッカス感染症、ロタ腸炎、ローソニア感染症、を減らすには?

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チフニービットによる舌の損傷は人の責任。

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というような内容で話した。

参加者は170名だったそうだ。

「わかりやすかった」、という感想ももらったが、ホントは獣医さん達も知らない、あるいは獣医学的には認められていない私独自の考えも披露させてもらった。

病気や事故についての理解が、それらを減らすことに少しでもつながればと思う。

「面白かった」、という感想も聞かせてもらった。

ロタ腸炎を減らすために、種付けには子馬を置いていったらどうだ、というようなまだ普及しているとは言えない方法も提案した。

各自の牧場で、試してみることができるか、考えてもらいたい。

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父が図書館から借りてきていたのを読んだ。

どん底: 一流投手が地獄のリハビリで見たもの
元永知宏
河出書房新社

職業柄、スポーツ選手の故障、手術やリハビリ、そして復活あるいは復活できない例にとても興味がある。

人もうらやむ才能に恵まれ、華々しい世界で、一流選手として活躍していた投手たち。

それが、いったん故障すると悲惨な日々をおくるようになる。

それでも勤め人には考えられないような年収があるじゃないか。

批判されるのも知名度と期待の裏返しじゃないか、と言う人もいるだろう。

しかし・・・・

手術したあとは、もとどおりにはならない。

日常生活の動きから、少しずつできるように、もう一度一から体に覚えさせるしかない。

いいところまで来ていても、痛くなったら最初からやり直し。

故障するのも、プロ野球選手ならどこか痛いところや不調はいつも抱えていて、それといかに付き合うかが大事。

「必ず故障しますよ。」と言う選手も居る。

トレーニングが洗練されていくとともに、スポーツ医学が進歩して、故障が減るように、そして故障しても治せるようになることを願う。

                -

大谷君ガンバレ!!

復帰戦で160km/hを投げるようなことをしちゃダメだ。

 

 

 

 

 

 


講習会 局所麻酔と静脈麻酔

2018-11-15 | 講習会

今日は地域の獣医師会の講習会。

講義だけではなく、実習をやりたかった。

話だけ聴いても、ふ~んで終わってしまうことが多い。

実際に自分でやってみてはじめて、できるかな、やってみよう、と思える。

話を聴いても、へ~と思うだけ。実際に目で見て、お~そうか、と思える。

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プロポフォールの全身麻酔は、静脈麻酔を一変させた。

しかし、それを目の当たりにしている獣医師は少ない。

まして自分でやってみようとする獣医師はごくごく少ない。

で、デモンストレーションでプロポフォール麻酔の覚醒の良さを見てもらいたかったのだが、

それは諸事情で実現しなかった。

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局所麻酔の実習はそれなりに体験していただけたのではないかと思う。

人数は実習が成立する限界だった。

これ以上多いと部屋に入れないし、見て触ってやってみて、という実習の利点がなくなる。

それにしても若い獣医さんが増えた。女性獣医師も増えた。

お互い馬の診療のプロフェッショナルとして高いレベルでやりとりできるようになるか・・・・

これからの課題だと思っている。

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頼まれる診療、できる診療をこなすことだけしていると、進歩はないのです。

今たべられるものをもらうことだけしていて、進歩しない、こいつのように、です。

 

 

 


10年目研修 骨折内固定

2018-11-08 | 講習会

北海道NOSAIでは、10年目の獣医師を集めて1週間の研修をしている。

北海道各地で、NOSAI獣医師として10年働いて、また集まる機会があるというのは素晴らしいと思う。

(私たちのときはそのような研修はなかった)

その研修の1日を受け持って、子牛の骨折内固定を指導しに行った。

参加者8名。

生き残っているのは半分ほど、だそうだ。

Synthes Vet の全面協力で、実践的な実習ができる。

AOのcourse に準じた研修と言っても良いだろうと思う。

AOのcourse だと1日5万円ほどの参加費を取られる。この研修は・・・・・・笑

私は、このような実践実習を指導するのは、もう・・・・那須、宮崎、十勝・・・とやってきたので4回目。

今回は、2名ずつの4チームだったので、各チーム人手が足らないくらいだった。

2名とも指導を受けながら、交互に実習できた。

とても濃密な時間だったと思う。

            ー

各地域に骨折内固定機材も導入され始めている。

普及するかどうか、この数年にかかっていると思う。

「プレート固定してでも牛の骨折を治せるようになったのはあの頃からだよ」

と言われるようになるのか、

「あの頃、器材を買い込んだけど無駄に終わったし、むなしい努力だった」

になるのか、

今、現役獣医師であるわれわれにかかっている。

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研修の朝、研修所周辺を散歩した。

かつては郊外で空き地がいっぱいだったのだけど、今はおしゃれな家が建ち並ぶ住宅地になっていた。

街路樹も美しかった。

いくつかの公園もよく整備されている。

私はこの家畜臨床講習所で臨床獣医師にしてもらったと思っている。

今は、研修所。

家畜臨床講習所研修生の名を刻んだ銅板ははずされてしまい込まれていた。

大動物臨床獣医師の最も充実した卒後教育を行ってきた機関であり、それは現在も継続されている。