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馬医者残日録

サラブレッド生産地の元大動物獣医師の日々

橈骨遠位のLimb Perfusion

2013-07-22 | 感染症

日曜日、飛節のOCDと言われた馬のX線撮影をし直す。

異常はないようだ。

飛節軟腫(下腿足根関節の滑液増量;こういうとなんか違うネ)はあるのだが、どうも肢を捻ったらしい。

それもかなりひいてきているとのこと。

手術必要なし。と判断した。

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P7214636 Rhodococcus equi肺炎を1ヶ月近く治療し、治癒して夜間放牧もしていたら腕節が腫れて痛くなり、X線撮影で橈骨遠位成長板に骨髄炎と思われる透過像が見つかった当歳馬。

肘の遠位で駆血してlimb perfusion 肢灌流治療を行う。

静脈に抗生物質を押し込むと逆流して駆血部位より遠位が抗生物質漬けになる。

そのまま20分間待つ。

組織中の抗生物質濃度が、全身投与するより高くなる。はず。

骨の中には骨の血管孔からしか血液は行かない。

これで果たしてどれくらい病巣内の抗生物質濃度が上がっているか基礎実験データはみたことない。

それでも、やってみたほうがいいだろう。

細菌性骨髄炎はとても恐ろしい病気だ。まして原因菌がRhodococcus equi なら。

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午後は、肢軸異常のシングルスクリュー成長板阻害手術。

そして、1頭は肢軸異常のスクリュー抜去手術。

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P7104588 北海道へ来て35年。

はじめて扇風機を買った。

もちろんエアコンは買ったことがない。

(車は別)

ためしに回してみたけど、今のところまだ使ってない。

やっぱり要らないかな。

朝夕は涼しいんだし。

あの大阪の寝苦しい夜、そして朝からうだるように暑い夏を思えば、避暑地にいるようなもんだ。


ベイスン式消毒法はもう時代遅れ

2013-02-22 | 感染症

P2223818 馬鼻肺炎ERVの流産を予防するためのリーフレットが届いた。

この冬も寒く、ERVの流産も出ているようだ。

昨年は「多発」してしまった。

たいへん厄介なウィルス性流産であり、

生産牧場が神経を尖らせるのも無理はない。

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このリーフレットはERVによる流産を防止するためにたいせつなことをたいへんわかり易くまとめてくれているのだが、ちょっと気になる写真があった。

P2223820 洗面器に消毒薬を作っておいて、それに手を漬けて消毒している。

この方法は、ベイスンbasin 式消毒法と呼ばれて、かつては病院でもよく行われていた。

クレゾールがよく使われていて、病院のクレゾール臭さはそのせいでもあった。

しかし、一度作った消毒薬がいつまで消毒効果があるかわからないし、

消毒薬に強い病原菌が入ると、消毒どころか次に使う人の手を汚してしまうので、もうこの方法はやるべきではないとされている。

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P2223819_2  同様に、ベイスン式消毒法の後、タオルで手を拭くのも感心しない。

ぶらさげたタオルなどいつまで衛生度が保たれているかわからない。

「消毒」を目的にするなら、ペーパータオルを使うか、

あるいはアルコールの擦り込み消毒をするのが良い。

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P2013685 ここ1-2週間、外傷が多い。

胸や前腕部で、

夕方、

牧柵にぶつかった。

というのがパターン。

どうしてなんでショ?

日が長くなったから?

雪が多くて牧柵が低くなっている?


もうひとつの寄生虫対策 パドッククリーナー

2012-11-29 | 感染症

海外でも日本でも、駆虫薬に耐性を示す寄生虫が見つかっている。

もう駆虫薬だけに頼って寄生虫対策をすることはできないようだ。

定期的に全頭一律に一斉に駆虫するやり方をしていると寄生虫の耐性を促進してしまうかもしれない。

駆虫薬に頼る以外にできることは、放牧地の糞を拾って、放牧地が寄生虫で汚染されるのを防ぐことだ。

昼夜放牧する牧場も増えているので、必要なことだろう。

しかし、これはとても時間がかかる重労働だ。

Maxi20vac20towed266x178 こういう楽しそうな道具も海外では売られている。

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補助事業の対象になっているようだから、日本でも販売されているのだろう。

paddock cleaner  で検索すると何社もの製品が出ているようだ。

http://paddockcleaners.com.au/

http://www.fresh-group.com/paddock-cleaner-poo-vac-paddock-vacuums.php

http://www.paddockcleaner.com.au/

糞を撒き散らして、乾燥させて虫卵を殺そうというのは湿潤な日本ではダメなようだ。

かえって虫卵を広げてしまうし、日本の気候では虫卵は死なないらしい。

なんらかの方法で放牧地の糞を拾う必要がある。

そのことで、馬が食べなくなる区域を減らすこともできる。

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昨夜からもけっこうな風が吹いた。

2時間ほど停電もした。

今はストーブも電気がないと消えてしまう。

厳寒期なら真っ暗な中、寒い思いをすることになる。

登別はまだ停電しているようだ。

ダメージを受けていた車庫も気になったが、なんとかトタンもめくれず済んだ。

しかし、自転車小屋が家の裏まで移動していた・・・自転車はもちろんそこに残ったまま。

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Pb223343 オラ、風が吹いても寒くても平気!

ハラ、減った。


馬伝染性貧血

2011-06-30 | 感染症

今日午前中は、馬伝染性貧血の検査のための採血を手伝った。

これは国の指示で、各町村と北海道の家畜保健衛生所が行う事業なのだが、それを地元の家畜防疫員である獣医師が手伝う、ということなのだそうだ。

当歳馬は除いて、つまり生産牧場では1歳馬と繁殖雌馬を採血する。

かつては毎年やっていたのだが、今は各町村5年に1回の検査になっている。

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私が日高へ来たころに比べれば馬の数は減ったし、馬はおとなしくなったように思う。

その頃は、太い(14G?)の採血針を刺して、垂れてくる血を試験管に受けていた。

今は18Gの採血針と真空採血管か20Gの注射針を使うので、ブッスっと刺さなくて良くなった。

その差も大きいと思う。

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もう日本は馬伝染性貧血ウィルスを清浄化できたと思っていたら、宮崎県御崎馬で集団感染が見つかった。

宮崎県では抗体陽性馬を隔離しようとしているようだ。

しかし、吸血昆虫による媒介も考えられるので、隔離で新たな感染が完全に防げるとは思えない。

淘汰すべきなのではないだろうか?

馬伝染性貧血を撲滅するために、馬関係者はたいへんな犠牲をはらい、苦労を続けてきた。

検査方法があいまいだった時代から感染馬だと判定されれば涙を呑んで淘汰してきた。

飼養されている馬は毎年毎年、同じ検査を繰り返してきた。

移動するたび、競馬場へ入厩するたび、費用を払って陰性証明をもらってきた。

そして、やっともう10年近く感染馬が見つかっていない、もう日本の馬の中には馬伝貧ウィルスはどこにも生き残っていない、海外から入ってくることさえ気をつければ新たに感染する恐れはない。

だから、もう毎年の、何年かに一回の、移動ごとの、入厩ごとの検査は必要ないだろう。というところまで来たのに。

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御崎馬は、天然記念物だから。家畜ではないから。というのは、御崎馬の発祥を考えればおかしな気がする。

本当に日本古来の自然の中で生き残ってきた馬ではない。

あくまで人が放して手をかけないで「飼ってきた」のだ。

御崎馬は100頭あまりしかいないそうなので、その1割ほどの馬が伝貧ウィルスに感染していたことになる。

御崎馬自体を守るためにも今、完全な検査と淘汰をすべきではないか。

P9150844


馬伝染性貧血 発生

2011-04-15 | 感染症

馬伝染性貧血が18年ぶりに日本で確認された。

いままで伝貧については何度か書いてきた。

伝貧検査 摘発淘汰について

馬伝染性貧血 感染源

日本全国で、馬関係者はたいへんな思いをして伝貧検査を繰り返してきた。

そして、日本は馬伝染性貧血ウィルスを一掃したと信じていた。しかし・・・・

JRA宮崎育成牧場で御崎馬の関連馬が陽性であることがわかり、

保存されていた御崎馬の血清を調べたら抗体陽性個体が5頭含まれていたとのこと。

天然記念物都井岬の御崎馬の中で馬伝染性貧血ウィルス感染が続いていたのだ。

御崎馬は野生馬ということになっているが、完全な野生馬ではない。

とても手間がかかることなのかもしれないが、全頭検査して陽性馬は淘汰してもらいたい。

でないと、封じ込めることはできないだろう。

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羊のスクレピーも発生したと報道されている。

このBSE(牛海綿状脳症)の羊版とも言える病気は、30年ほど前に国の牧場が導入してきた羊で発生した。

それをもみ消そうとしたり、発生頭数を少なく報告させようとする動きもあったそうだ。

とんでもないことだ。

伝染病は誰の責任でもない。

それを防ぐためにとれる最良の策をとることが大切だが、どうしようもないことも多い。

にもかかわらず、責任問題になるからといって認めようとしなかったり、実状を誤魔化そうとすると、被害が拡大する危険もある。

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他にも公的機関が、管理する施設で発生した伝染病・感染症を認めようとせず揉み消した事例を知っている。

問題が起こると責任ばかり追及するあり方がそういう体質を作り出すことも考える必要がある。