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馬医者残日録

サラブレッド生産地の元大動物獣医師の日々

葉状条虫を媒介するササラダニの研究

2024-08-08 | 急性腹症

回盲部重積や盲腸重積が葉状条虫症ですよ。という話をして、ダニが媒介するんです、と言うと、

シカが多いんでダニが増えてます、とか、

うちはダニは多くありません、と言われる。

葉状条虫を媒介するのは、ササラダニと呼ばれる1mm前後のダニ(節足動物門鋏角亜門クモ網ダニ目ササラダニ亜目)の総称で、マダニとか、フタトゲチマダニ(マダニの1種)のような血を吸うダニとはちがう。

真田良典先生は、三石町におられた獣医師で、みついし農協の参事を務められた。

長く三石獣医師会の会長も務められた。

退職されたあとも獣医学研究を続けられ、

特に馬の葉状条虫症と中間宿主ササラダニの研究を博士論文としてまとめられた。

ササラダニってこういうヤツよ。

とても手間のかかる面倒な調査と研究だったろうと思う。

葉状条虫症が問題だと考えても、なかなか中間宿主であるササラダニまで調べようとはしない、思わない。

牧草地に多いササラダニの種類がわかる。

活動は夜間が多いらしい。

かと言って、夜間放牧や昼夜放牧が望ましくないとも言えない。

           ー

放牧地を消毒することも、焼き払ってしまうこともできない。

糞を拾うことができれば、ササラダニが多く居ても、葉状条虫を持っている率を下げられるだろうと思う。

1~2年、馬を放牧するのを止めれば、その放牧地のササラダニは葉状条虫を持たなくなるだろう。

古典的な「休牧」というやつだ。

しかし、それも無理か・・・・・・

           ー

去年、この地域も記録的に暑かった。

この1年、葉状条虫症も多かった。

今年も、蒸し暑い。

ササラダニも爆発的に増殖していると考えた方がいいだろう。

           -

そうだ。真田先生のご研究の成果の1つは、葉状条虫卵検出のためには、駆虫後24時間後の虫卵検査が有効であることが確認されたこと。

条虫は積極的に産卵して増殖する寄生虫ではないが、駆虫して体節がバラバラになると内部の虫卵が放出されるのだろう。

          ///////////////

不快指数高い。

北海道じゃないみたい。

地球温暖化に対策を!

でもエアコンは止められない・・・・・

 

 

 

 


盲腸結腸重積は葉状条虫症 駆虫とそれ以外の対策が必要だ

2024-07-02 | 急性腹症

夜間放牧中に疝痛で苦しんでいた1歳馬。

朝来院し、超音波検査で盲腸結腸重積が疑われて、開腹。

盲腸が完全に右腹側結腸へ飲み込まれていた。

なかなか抜けなかった。

抜けないまま、回腸を結腸へバイパスしても助かることはある

しかし・・・・

なんとか術者ががんばって、汗だくになりながら40分ほどかけて引きずり出した。

盲腸は腫れ上がっているので、切除。

断端には、大量の葉状条虫が見えていた。

盲腸重積は葉状条虫症だ。

葉状条虫が大量に寄生すると盲腸が腫れて動きが悪くなり、

おそらく盲腸尖あたりが反転し、自分の収縮で裏返り、最後は結腸に飲み込まれるのだろう。

            ー

この1歳馬は手術が終わっても2時間近く立ち上がらなかった。

夜中疝痛で苦しんでへばっていたのだろう。

翌日も元気回復とはいかなかった。

顔も肢も腫れていた。あちこちぶつけて擦りむいていた。

それでも食欲はあり、帰って行った。

            ー

3ヶ月、駆虫していなかったそうだ。

年に1-2回、葉状条虫の駆虫が必要だ、と書いてある本もあるが、ウソだ。

少なくとも、このわれわれの地域では通用しない。

もっと葉状条虫の駆虫をしないと、当歳馬も1歳馬も葉状条虫症を起こしてしまう。

            ー

そして、もう駆虫薬だけに頼った寄生虫対策は限界に来ていると思う。

放牧地の糞を拾う、とか、

それ以外の方法は難しいのだが・・・・

あらゆる方法で寄生虫対策を考えていかないと、馬は死ぬか、開腹手術することになる。

今年、当歳馬から1歳馬の回腸盲腸重積、盲腸結腸重積がとても多い。

           ///////////

6月末の某日、仕事が終わってから羽田へ飛んだ。

始発で飛ぶと、会議に間に合う自信がない。

この晩は羽田のホテル泊まり。

シャトルバスで移動。

 

 

 

 

 


有茎脂肪腫による小結腸閉塞

2024-06-10 | 急性腹症

繁殖牝馬が朝5時から疝痛。

けっこうひどかったらしいが、直腸検査に来た獣医さんは、「あきらめろ」と言ったらしい。

20歳だからだろう。

間違った判断ではないかもしれない。

           ー

結局、6時間以上経って連れてこられた。

馬運車の中で立てなかったが引っ張って無理矢理立たせた。

腹囲膨満いちじるしい。

胃液も10リットル近く抜けた。

超音波検査で直腸壁は肥厚しておらず、小腸?らしき拡張した消化管が見えた。

PCV48

           ー

開腹したら、小結腸の閉塞だった。

それで、便も水もガスも抜けず、腹囲がひどく膨満したのだ。

ただ、これほど痛いのは小結腸閉塞にしては珍しい。

有茎脂肪腫が小結腸に巻きついて絞扼された。

高齢馬に多い。

この部分はもう壊死している。

切除吻合しなければならない。

小結腸の腸間膜は脂肪が厚くついていて、切除のために血管を結紮止血するのが難しい。

無影灯でも、窓の光でも良いから、透かしてみると良い。

血管の走行が見える。

これは私のオリジナルテクニック;笑

           ー

術後は軟らかい便が続くように給餌管理してもらう必要がある。

吻合部位は2週間後にもっとも狭くなる、とされている。

それを過ぎるまでは、あのボールのような小結腸便は通過しにくいからだ。

          ////////////////

オオデマリ

1本の幹だが葉色も花色もちがう。

そういうもんなの?

 

 

 


結腸捻転 miscellaneous bits

2024-05-27 | 急性腹症

結腸捻転が続いている。

2頭も3頭も重なる、ということはない。

この涼しさのせいか。

         ー

それでも、青草いっぱい食べました、という腸内容。

この5月は数日おきに順調に雨が降っている。

「草の伸びヤバいっすよ」

と結腸捻転を連れてきた牧場さん。

         ー

「去年、やってもらったのはひどくて、結腸を切り取ったけど、今年ちゃんとお産したし、また受胎した」

と別の牧場さん。

痩せてもいないそうだ。

「2月にやってもらったのも、1発情投げて、PGうって種付けして受胎した」

とのこと。

         ー

結腸捻転歴のある繁殖がまた結腸捻転みたいだ、との依頼。

調べたら4年前の2月に私が手術していて、分娩予定日を過ぎていてcolopexyはしていない、とのこと。

これだけ結腸捻転の手術をしていて、colopexyをして生存している数多くの繁殖牝馬が居て、

colopexyをした馬では再発はほとんどないし、

妊娠末期に疝痛を繰り返すこともない。

私たちがやっているcolopexyの方法の再発防止の有効性と、complications の少なさの証拠だと思う。

                             ////////////////

シカ横断注意、の看板のそばでたむろするエゾシカ。

獣道と車道が交わっているところに看板が立っているので、

道外から来て車を運転する皆さん、気を付けて。

 

 


疝痛開腹手術続き 必要のないdeja-vu

2024-04-20 | 急性腹症

午後、もう2週間疝痛が続いている1歳馬。

超音波で右腹腔を診たら、盲腸重積像が見えた。

手術室が空くのを待って開腹手術。

          ー

その夜は、そのあと1歳馬の結腸右背側変位の開腹手術があって、

さらに、繁殖牝馬の結腸捻転の開腹手術があったそうだ。

          ー

そして、朝出勤したら、繁殖牝馬の疝痛が来ます、とのこと。

来院したら馬運車の中で立てない。まず採血だけする。

なんとか起こして、診療室へ入れて、超音波検査だけやって開腹手術。

結腸捻転だった。

          ー

それから2頭ほど来たのだけ・・・・何を診たのだったか・・・・

午後、予定の関節鏡手術。

そのあいだに2週間不調が続いている1歳馬の診察。

胃潰瘍の内視鏡検査のために絶食して来院しているが、超音波検査で小腸の膨満が見えた。

小腸閉塞なのだ。

胃潰瘍があっても、それは小腸閉塞が続いていることによる二次的な障害の可能性大。

これも開腹手術。

回盲部の重積だった。

          ー

その間に、8日前にも疝痛で来院した繁殖牝馬の診察。

胃潰瘍の内視鏡検査のために来院したが、超音波で小腸の閉塞像が見えた。

1ヶ月ちょっと前に分娩している繁殖牝馬だが、もう痩せても来ている。

これも開腹手術した方が良い。

先の開腹手術が終わるのを待って、開腹手術。

もう既視感 deja-vu で何が何だか覚えていられない。

           ーーー

今年、3月は31頭の開腹手術だった。

子馬の膀胱破裂は除く。

4月、17日までで14頭の開腹手術だったので、ちょっとペースは落ちたんじゃないの、と思っていたら、

これで19日間に20頭を超えてしまった。

            ー

盲腸重積、回盲部重積は葉状条虫症。

エクイバランゴールド、エクイマックスなどプラジクワンテル含有剤で駆虫できるはずだが、

ちゃんと口に入らなかったんじゃないの?と思われる症例が続いている。

駆虫の際にはちゃんと馬が飲み込んでいるか確認を!!

            ////////////

ウメが開くのはまだか

毎年 季節はめぐり 花は咲くけど 待ち遠しい

既視感はこういうものにして欲しい