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馬医者残日録

サラブレッド生産地の元大動物獣医師の日々

北海道産業動物獣医学会2019から戻ってみれば・・・・・

2019-09-02 | 学会

今年の北海道獣医師大会&産業動物獣医学会は北見工業大学のキャンパスを借りて行われた。

オホーツクの先生方をはじめ開催の労をとられた先生たちのご努力のおかげで、ローカル色のある楽しい学会だった。

3泊と長かったこともあって、職場の仲間と懇親を深めることもでき、その点でもたいへん有意義だった。

この地域から参加した獣医師も、ほとんどが研究発表も行い、それもそれぞれに工夫と努力がされていて感心させられた。

たいしたもんだ。

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長距離を走って帰ってきたら、馬運車が何台も止まっている。

どうした?と覗いたら、開腹手術が始まるところだった。

仕方がないので手伝う。

先の手術の1歳はまだ覚醒室で立てない。

その間に、予定の腕節血腫の1歳馬を診察する。

続いて、肢軸異常の当歳馬の診察。

そして、中手骨骨折の子牛の診療依頼を私が受けたので、仕方なく5時過ぎまで待つ。

入院厩舎には疝痛馬が2頭入っていた。

おかしいな、もう9月になると言うのに・・・・・・

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学会が終わった日、北の大地の水族館に寄った。

水族館の魚ってシュールで面白い。

誰かに似てるような気がしたりするんだな、これが。

 


北海道産業動物獣医学会2018

2018-09-30 | 学会

北海道産業動物獣医学会だった。

その前日はプロダクションメディスン研究会だった。

3日間、座りっぱなしは体に悪い。

大勢の人に会って、刺激を大量にもらうので夜は眠れない。

安っぽいビジネスホテルだったが、部屋に馬の絵が飾られていたので気に入った;笑

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さて、あまりに多くの情報や刺激や知識を受けた3日間だったが・・・・・・

耐性菌の問題と、抗生物質の”慎重使用”は強調され、発表の中でも”慎重使用のために”とか、”慎重使用につながる”とか述べている発表者が多かった。

あんたがやっていることは慎重使用にならないだろ?と突っ込みたくなる部分もあった。

しかし、”慎重使用”が常識のように語られるのは良いことだ。

牛の肺炎を抗生物質で予防しようとか、

馬の輸送熱を抗生物質で予防しようとか、

そういう発表はし難くなるだろう。

私ひとりが手を挙げてインネンをつけているようにコメントせずに済む;笑

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ただ、畜産分野の抗生物質のもっとも多くは、豚や鶏に飼料添加されて与えられている。

それを規制しないと畜産分野の抗生物質を減らすことはできない。

獣医臨床で使われる抗生物質と混同しないようにしてもらいたい。

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若い獣医師たちが多くの良質な発表をしていたのに感心させられた。

発想と言い、遂行する努力と言い、発表のまとめ方と言い、素晴らしいものだった。

発表態度も格段に良くなったように思う。

以前は下を向いて原稿を読んでいる演者が多かったものだけど。

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私はこの17年間やってきた大結腸切除の症例について報告した。

馬は大結腸がなくても生きていける、と簡単に思われても困るし、

やっぱり大結腸がないと生きていけない、だから結腸切除なんてしてもダメなんだ、と思われても困る。

やるべきときにはやるべき手技だから、できるようになっておくべきだ。と述べたのだけど、

どうも信じてもらえなかったようだ;泣笑

術後について、もっと詳細に調べて、文献記述も含めて考察して、学術報告として学術誌に載せなきゃだめだね。

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仕事復帰は土曜日。

午前中、3歳競走馬の腕節骨折の関節鏡手術。私は執刀ではない。

昼、血液検査業務。私は溜まった労務管理ソフトの処理。

午後、1歳馬の飛節OCDの関節鏡手術。私は執刀ではない。

夕方、2歳競走馬の”肩”跛行の大型X線撮影。肩は異常なし。

神経ブロックすべき跛行なのだが、休み明けにうるさい2歳馬に神経ブロックする気がしなかったし、

夕方からじゃあ跛行診断しているうちに日が暮れる。

 

 

 


北海道産業動物獣医学会 2017 温故知新

2017-09-09 | 学会

今年の北海道産業動物獣医学会へ出て感じたこと。

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過去の発表や報告、教科書、文献をもっときちんと調べた方が良い。

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私は2004年の北海道獣医師会雑誌に、子牛の大腿骨骨折をプレート固定して治せたことを報告している。

口頭発表はしていない。

口頭発表しても学会の抄録しか残らない。聴いた人の記憶にしか残らない。

それより、正確に詳しく文章で書いて、記録に残すことで、後世に役立てて欲しいと思うからだ。

今回、子牛の大腿骨骨折をトマススプリントで治した、という発表があった。

その中で、大腿骨骨折の内固定は困難で、報告はない、とぬかしやがったので、述べておられたのでむかついた発言しておしらせしておいた。

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そして、数年前から牛の骨折についての講演や発表を聴いて思うのは、牛の整形外科はまだまだ未開拓の分野のようだ。

基礎知識が不足しているし、症例の経験も不足している。

そして、たしかに牛はほんとうに優秀な患者で、他の動物では内固定が必要なタイプの骨折も、外固定で治るのかもしれない。

しかし、何でも外固定で治せるわけはないことは、牛を日常的に診ている先生たちが一番よく知っている。

少なくとも、骨折の研究発表や症例報告をするなら、基本を勉強し、抜け落ちがないように文献検索しておくべきだ。

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その発表を評価しようという目で内容を聴いていても、それが発表者のオリジナルな治療方法や研究成果なのか、他でもやられている方法なのか、

広く受け入れられているものなのか、それともまだ評価が定まっていないものなのか、わからない。

その症例報告や研究発表の、「背景」を聴く人に伝えることはたいへん大事なことだ。

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われわれは、23年前に、北海道産業動物獣医学会で、後肢吊り上げによる馬の難産介助について研究発表し、賞をもらった。

それ以来、毎年20頭近い難産馬をこの方法で娩出させている。

重種馬でも、この方法で対応している。

野外で行ったこともある。

おそらく、もう数百頭、この方法で難産介助してきただろう。

われわれはすっかりルーティンとしている方法だが、それを知らない人や地域ではわれわれが発表したことや内容など、とうに忘れられているのだろう。

数百頭経験したら、その成績も報告しないといけないのかもしれないけど。

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かつて、日高では毎年数十頭の白筋症仔馬が死亡していた

私が大学院の学生だったとき、ひと月半日高に滞在し、20頭以上の発症馬からサンプリングできたくらいだ。

それから、セレニウムが飼料に添加されるようになり、輸入飼料の給与が増え、日高では白筋症はほとんど発生しなくなった。

多くの関係者は白筋症のことなど忘れたか、あるいは若い獣医さんは白筋症自体を診たことがないだろう。

道東で、愛玩用に買われている混血種の新生仔馬が白筋症で死亡し、Vit.Eとセレニウムを測定して欠乏を確認した発表があった。

飼料を改善し、その後のVit.Eとセレニウムも測定し、続発もなかった、とのことで感心した。

栄養欠乏症は、放っておくと続発したり、多発したりする。

(私は、33年前、軽種馬が4頭生まれるはずが、4頭とも白筋症で3頭が死亡した牧場を知っている)

”古い”病気になっても、獣医師が過去から学んで、熱意を持って対応することで、悲劇が防げるのだ。

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温故知新。という。

ふるきをたずねて、あたらしきをしる。

あるいは、

ふるきをあたためて、あたらしきをしる。

”古き”をきちんと調べて積み重ねていかないと、低レベルのまま繰り返しだ。

                          ---

ひとつ提案だ。

北海道獣医師会三学会も、今は抄録はファイルで提出している。

タイトルと内容をデジタル情報として蓄積して、のちのちの獣医師が検索できるようにしてはどうだろう。

産業動物獣医学会では、毎年100題近い発表がある。

北海道の産業動物獣医学の貴重な財産となっていくのではないだろうか。

(プリントアウトして送っていた時代の抄録は今からデジタル情報化するのはたいへんすぎるかな・・・・)

 

 

 

 


北海道産業動物獣医学会 2017

2017-09-09 | 学会

北海道獣医師大会ならびに三学会へ出張していた。

今年は酪農学園での開催。

でも泊まりはススキノ;笑

特別な配慮があったわけではなく、アジア系旅行者などでホテルの空きがなかなかないらしい。

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この学会はとても多くの研究発表・症例報告を聴ける。

われわれ大動物臨床獣医師は、大学を卒業し、国家試験に合格したからといって十分な知識や技術を身につけている、などということはなくて、

一生勉強しつづけなければならない。

では、その方法や情報源はというと、周りの人に教わったり、本や文献を読んだり、今ならネットで情報を集めたり、講習会や学会を聴講したり、がスキルアップの主な手段だろうか。

その中で、北海道の産業動物獣医師にとって、この北海道産業動物獣医学会はとても大きな役割を果たしていると思う。

もしなかったら?と考えると、その意義の大きさを感じる。

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さて、発表の内容では・・

子牛の骨折治療の報告があったのは嬉しかった。

黒毛和種も搾乳種も、個体価格が高くなり、治療して欲しいという要求も高まっているのだろう。

北海道の牛の診療所は、手術室やx線装置が設備されているところが多い。

内固定も含めてレベルアップを考える時期に来ているのではないか。

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今の獣医科大学にはCTやMRIが設備され、学生たちは小動物臨床で骨折内固定も教わってくる。

いつまでも、「産業動物はそんなことはできない」とか「してもしょうがない」と言っているようでは、その職域で働こうという意欲さえ殺いでしまう(削いでしまう)。

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実習に来た学生から、「NOSAIへ就職を考えているけど北海道以外のNOSAIを勧められました」と聞いた。

北海道は、群管理、プロダクションメディシンは進んでいるけど、個体診療には「力が入れられない」、「レベルは高くない」、と言われることもあるらしい。

(私はそんなことはないと思っている)

以前にも書いた。日本の牛は、1/3が北海道に居る

牛の個体診療だって、日本のトップであるはずだ。

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獣医師になってからも意欲を持ち続け、立派な”仕事”を続けている獣医さん達の発表を今年もたくさん聴きことができた。

自分が上達していること、自分が向上していけることを感じられることが、意欲を持ち続けられることにつながるのではないか。

今年もまた大いに刺激をもらえた学会だった。

(つづく)

 


日本獣医師会学術学会・年次大会2017 3日目

2017-03-01 | 学会

これは日航ホテルのロビーのネコ科像。

ネコの飼育頭数は増えているが、すでにイヌの飼育頭数は25%減少しているのだそうだ。

人口減少社会は始まっているのだし、超高齢化社会になることも避けられない。

日本獣医師会も、それにどう対応していくか模索している、というところかな。

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動物愛護法の改正で、ブリーダーの数が減り、子犬の価格が3倍に上昇したのだそうだ。

それを残念なことだと言いかねない発言は気になった。

劣悪なブリーダーは廃業させるべきだし、子犬ビジネスの問題は以前から指摘されている。

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3日目午前中はシンポジウム「他の動物種との類似点・相違点からみた馬の繁殖」を聴いた。

聴衆は・・・・30名くらい?

日高でやれば100名近く集まる講師陣なのにね。

まあ、馬が関心を持たれない地域でやることに意義があるのだ。

サラブレッドでも制限しながら人工授精を認めてはどうだろう、という個人的提案などもあり、興味深いシンポジウムだった。

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類似点・相違点という観点からなら、たとえば

どうして牛も馬も発情は21日周期?

季節繁殖動物と非季節繁殖動物って何がちがう?牛だけじゃなく、他の動物種ってどうなの?

というような幅広い動物学的な話も聴いてみたかった。

また、すでに日本の生産地の受胎率・生産率は世界No1になっているが、毎年連産させることは良いことなの?

高齢になると産駒の競走成績が落ちるというデータはあるが、連産した産駒や、1年空いたあとの産駒の成績はどうなの?

というような競馬に関わるディスカッションも聞いてみたかった。

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もう話を聴くのにも飽きて、午後は小松空港へ向かった。

羽田で乗りついて、千歳へ帰る。

新幹線で東京へ移動して・・・という人も居たようだが、4時間新幹線に乗るのも辛い。高いし。

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思えば、学会や出張以外で旅行することはほとんどない。

学会は、札幌か東京がほとんど。

ときどきは、行ったことがない街へ出かけて、日頃考えないことを思わないと思考が偏り、硬直化する。

と感じた3日間であった。

駅前の多目的ビルのフィットネスクラブ。

わざと吹きぬけから見えるように創られている。

頭も心も体も、鍛えて、柔軟に。

高齢化社会では必須だね。