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馬医者残日録

サラブレッド生産地の元大動物獣医師の日々

臨床研究 序章

2020-12-06 | 図書室

調査や研究なんてしないで、日常の臨床だけやってればいいんだ、という考えもあるだろう。

臨床をやりながら研究発表している大動物獣医師は限られている。あるいは若手。

今も、獣医科大学では特に調査研究のHow to や、症例報告の仕方とかは習わないらしい。

文献を読め、と強要もされないし、読んでないと答えられない質問もされないし、書け、とも言われない。

残念なことだ。

臨床観察研究をどうやってするか、それをどうまとめるか、やはり獣医科大学で臨床の授業の中で教えてもらいたい。

             ー

 

ヒト臨床医学の中でも、臨床観察研究はevidenceとしてレベルが低い、トップジャーナルには掲載されにくい、という見方もあるようだ。

しかし、現実にはそんなことはないことが、この本の序章にも示されている。

          ー

臨床の中は、どうすれば良い?、どちらが良い?、という疑問や選択を迫られることはしばしば。

それは、「臨床医が持つ疑問 CQ;clinincal question」

それを研究として計画していくために、2005年に日本で初めて京都大学に clinical researcher  養成コースが開設されたのだそうだ。

逆に言えば、今でも臨床研究 Clinical Research のHow to は教えられないままに実践されているのだろう。

          ー

この本の序章に吉田松陰の言葉が引用されているので、書き留めておく。

夢なき者に理想なし

理想なき者に計画なし

計画なき者に実行なし

実行なき者に成功なし

故に、夢なき者に成功なし

        /////////

とうちゃん

おらとまたさんぽできてよかったな

 

 


逃げるな新人外科医

2020-10-30 | 図書室

エアコンも稼動するようになり、通常業務に戻った。

午前中は、大腿骨滑車OCDの関節鏡手術。

昼から、肢軸異常のscrew remove 。

続いて、ロド腹腔内膿瘍の剖検。

そして、大腿骨骨嚢胞 Subchondral Cystic Lesion のscrew固定。

PRP 多血小板血漿も作成して病巣内注入した。

PRPの血小板数は、採血時26万、調整時189万だった。良い出来だろう。

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逃げるな新人外科医。 

泣くな研修医の続編。

相変わらずの研修医生活だが、進歩はしている。

厳しくも優しい先輩外科医とは相変わらず。

優秀なお嬢様新人医師が後輩としてやってくる。

少しずつ外科医らしくなりながら、自分自身の変化に戸惑ってもいる。

そして、悲劇が待っている・・・・

こういう若いお医者さんが増えて欲しいね。

若い獣医さんはどうだ?

 


泣くな研修医

2020-10-22 | 図書室

外科医の修行物語。

この研修医クン、とても純粋。

90を超えて生活保護受給者で、身よりもない患者でも、胃がんを手術してやりたくてもだえる。

内視鏡で診てわかるほどリンパ節が腫れていたら、胃切除だけでは助からないだろうに。

ほとんど家に帰らず、病院で寝泊まりしながら担当の患者さんから目を離すまいと頑張る。

これじゃあ、世間のことに疎い、凝り固まった医師になってしまわないか?

上司や先輩医師も、悪いヤツは出てこない。

対照的にマンガチックなチャラい同僚が居るだけ。そいつも悪いヤツじゃない。

現役の外科医が書いているので細部にはリアリティーがある。

(忙しそうだけど、小説を書いてる時間はあるのか?)

楽しく読めたので続編も読んでみようと思う。

なにせ私は若かった頃のことは忘れてしまっているので、思い返すよすがとしたい;笑

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林の秋。

オラは食欲の秋。

 


牛の小腸閉塞 成書の記載 Rebhun's Disease of Dairy Cattle

2020-07-10 | 図書室

 

これは、乳牛の病気、の本。

3rd edition で、監修者は、Simon Peek先生と、Thomas Divers先生。

Peek 先生はウィスコンシン大学の先生、

Divers 先生はコーネル大学の先生、

両先生とも私は存じ上げない;笑

                   -

写真はカラーで、とても良い本だ。(コピーさせてもらった部分しか知らないけど)

                   -

Obstructive Diseases of the Small Intestine  小腸の閉塞性疾患 として詳細に記述されている。

この本のまとめ方が、私には最もすっきりする。

乳牛の、となっているので、動物種は牛だけだし、それも乳用種だけなので、整理しやすいのだろう。

飼われ方だって共通性があるし、それゆえに病気や病態もしぼられてくる。

                   -

そのtreatment の項。

最初に書かれているのは、

The only treatment for small bowel mechanical obstruction is right-sided exploratory laparotomy, ---

小腸の機械的な閉塞の唯一の治療は右側での探査的開腹手術であり、---

当たり前のことだが、開腹手術するしかないことがしっかり書かれている。

そして、成牛を含めて書かれているせいか”right-sided” とも書かれている。

子牛の小腸閉塞が第一胃が発達する前に多く、臍周囲の問題も多いのであれば、仰臥で正中、あるいは傍正中切開で開腹した方が良いのではないか?と私は考える。

そして、

Small bowel surgery in cattle is difficult under the best of circumstances and often requires trained assistants or multiple surgeons when complications occur or bowel resection is required.

(成?)牛の小腸の手術は環境が整っていても難しい、そして熟練した助手が必要なことや、合併症が起きたり、腸管切除が必要なときは複数の外科医が必要になることもしばしばである。

この”cattle” は子牛calve を除外してあるのかもしれないし、そうではないのかもしれない。

この本は”Rebhun's Disease of Dairy Cattle” だが、子牛についても記述されているし、小腸閉塞の写真も子牛の症例が載っているので、「牛の小腸の手術は難しい」と解釈してよいのかもしれない。

が;笑

馬の腸管手術を年間120頭、牛の腸管手術を年間1-3頭やる家畜高度医療センターの経験では、

牛の小腸の手術が本質的に難しくてたいへんだとは思わない。

牛の小腸の手術が難しくて、予後が良くないとしたら、手遅れが多くて、牛の腸管手術に慣れていないからではないだろうか。

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コンブ干しが始まって、コンブ干場の周りに無神経な車の停め方。

スクールバスも通るのに苦労する。

この運送会社のトラックは途中であきらめてバックした。

このあと馬運車も入ってくるので、コンブ干場まで行って、「車どけて!!」と叫んできた。

 

 

 

 

 


外科基本手技を考える

2020-06-17 | 図書室

 

私と同い年の外科医による、よくある間違いや知っておくとためになるコツが書かれた本。

教わったことを鵜呑みにするのではなく、自分で考えて工夫すれば”こうなんじゃない?”となる。

楽しく読めた。

まあ、特に新しかったり、重大な問題の提起ではない。

          ー

それと、この本の”例えば、縫合の丸針は回すな!”がコツとしてあげられているが、

それには私は異論がある。

回るから針が曲がる、と書かれているが、そうじゃないよ。

回そうとしなかったり、回し方がヘタだから針が曲がるんだよ。

組織に垂直に刺入し、最後まで針に垂直に力がかかるように回せば針は曲がらない。

それでも針が曲がるのは、縫いたい組織より短い針を使っているか、

抜くときに針の先端を掴んでしまって針が切れなくなっているか、どちらかだ。

         ー

しかし、金言も多い。

ー医学にとって、統計学はあくまで道具のひとつであって、医学が統計学の下僕にされてしまっては本末転倒だ。

エビデンスを軽視して良いってわけじゃないけど、それが全てじゃない。

         ー

ー布の裏面に注意

これは私もしばしば思う。

滅菌布をかけて滅菌エリアとして扱う獣医外科医が多いが、布の裏は洗浄、消毒、滅菌されていないし、布はいつまでもバリアにならない。

水平ならまだしも、滅菌布をかけた部位が立っていると、布の中で汚れが上から落ちてくる。

布をしっかり留めておかないと、布はずれるし、ずれる時には汚れも術部に運ばれてくる。

ドレーピングは衛生的な手術のための重要な技術だ。

          ー

外科器械の使い方、なんかは私もこのブログに書いたことがある。

なんでもメスで切ってとか、止血なんてほとんどしない、とかいう獣医外科医は読んでみるといい。

          ー

糸結びの項では、かえってヒト外科医がどうして手結びにこだわるのか訊いてみたい。

長い持針器を使ってでも器械結びした方が良いように思うけどな~

生産地の馬外科医は、見えないところで片手結びしないとならないことがあるので、手結びは必要だよ。

          ー

腹腔洗浄の項はエンジンオイルの交換と比べられていて面白い。

私たちも腹膜炎の腹腔洗浄を年に何頭もやるから。

使った生理食塩液の量くらいしかカルテの記録に残せないが、洗えたかどうかは、

その馬の腹腔の状態や、

隅々まで洗う外科医の工夫や注意力によってずいぶんちがうと思う。

          ー

「頭ごなしにおぼえてるんじゃ、ただの試験知識であって実践には全く役立たない。」

「ケチることを悪徳視するな」遅かれ早かれ日本の保険医療は破綻する・・・・

家畜共済制度もそうだろう。

          ー

大動物獣医師も読んでみるといい。

われわれは開腹手術だってやるんだからね。

それにしては「外科基本手技」の”なぜなんだろう?”を考えることが少なすぎるのだと思う。

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そりゃ「考える人(ロダン)」も頬杖ついてるけどさ~