真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「武蔵野夫人の唄 淫舞」(昭和53/製作:ユニバースプロ/提供:東映セントラルフィルム株式会社/監督:渡辺護/脚本:高橋伴明/企画・製作:向江寛城/撮影:笹野修司/照明:森久保雪一/音楽:飛べないアヒル/編集:田中修/助監督:成田裕介/監督助手:鈴木敬晴/撮影助手:長井勝人/照明助手:柏城志朗/スチール:田中欣一/録音:東映撮影所録音部/現像:東映化学《株》/出演:北乃魔子・梓流香・椙山拳一郎・鶴岡八郎・下元史朗・永田道子・大塚淳子・東あき・久保今日子・波田夏樹・村上久子・橘美誇・豊島六郎・堺竜次・鈴木英雄・杉佳代子)。出演者中、梓流香・永田道子・大塚淳子・波田夏樹・村上久子・橘美誇・堺竜次・鈴木英雄は本篇クレジットのみで、逆にポスターには名前の載る川口朱里と藤俊介が本クレには見当たらない、誰なんだ藤俊介。更に椙山拳一郎と下元史朗が、ポスターには杉山挙一郎と下元史郎。よくあるパターンともいへ、出入り含めフリーダム過ぎる。企画と製作の向江寛城は向井寛の、出演者中豊島六郎は渡辺護の変名。提供に関しては、実際にはエクセス。
 普通に三角マーク開巻、料亭か何かか、和風の邸宅から川口朱里が出て来る。但し川口朱里の名前は本篇クレジットに見当たらないゆゑ、限りなく確信に近いビリング推定で梓流香といふのが、川口朱里の別名義か。一方、四日間家に帰つて来ない夫・佐藤裕介(椙山)のスナップを前に、ナミコ(北野)が悲嘆に暮れる。ところに、裕介の妹で、客に朝まで捕まつてゐた女子大生ホステスのマリ(梓)が訪ねて来る。ところにところに、警察から裕介が自殺した旨の電話が着弾、ナミコが愕然としてタイトル・イン。
 小田原湯本の現場に入つたナミコは、刑事(豊島)から裕介が心中したことと、女は助かつたこととを聞く。漫然と沈むナミコに、ユリは死に損じたか生き残つた女・タケダユミコ(杉)が水商売の女で、ケロッと店に出てゐる事実を告げる。ナミコは佐々木裕子と名前を偽り、ユミコの店で働き始める。
 配役残り下元史朗は、ユミコの店のバーテン。遅ればせながら今回初めて気がついたのがこの人、調子を外して歌をがなる声が凄くサマになる。鶴岡八郎は客としてマリに垂涎する、裕介生前の上司で営業部長の大林オサム、実はユミコに店を持たせたパトロンでもある。ここから先は火に油を注いで雲を掴むがポスター掲載推定で東あきと久保今日子が、裕介とユミコが心中したホテルの竹村祐佳似の仲居と、交通事故に遭ひ左足を骨折したユミコが入院する玉井病院の、岸辺シロー似の看護婦か、何れが何れかは知らん。残りはホステスが五人もゐたかなあとは疑問を残しつつ、大体ユミコの店の店内要員―ほかには豊島刑事の連れの駐在―だと思ふ。
 東映セントラルフィルム(昭和52‐昭和63)が主に獅子プロ(ex.ユニバースプロ)に外注する形での、成人映画レーベル「東映ナウポルノ」。今年になつてエクセスが回し始めた東映ナウポルノの、第一弾「夜のOL 舌なぶり」(昭和56/監督・脚本:宗豊/主演は朝霧友香でいいの?)は、勿論網を張つてゐたので確か素通りした筈の地元駅前ロマンに、「舌なぶり」が八幡は通称前田有楽に来るのと同じタイミングで―厳密には駅前は二週間番組のため一週早く―着弾した第二弾。因みに渡辺護的には、昭和53年全十四作中第七作。幾度と繰り返した雑感で恐縮でもありつつ、量産型娯楽映画が、本当に量産されてゐた時代が麗しい。
 何気に実に凡そ四十年後ともなる今の目からすると、正直真綿色したシクラメンほど清しくモッサリした主演女優の容姿に連動するかのやうに、サクサク懐に飛び込んでおいて、前半復讐譚の足取りは遅々と特段進みもしない。リベンジャーの相を隠し、ナミコ改め裕子が病室でユミコの介護に当たる辺りから、漸く重い腰を上げ始めるものの、直截な話北乃魔子と杉佳代子がパッと見ではどちらが実年齢が上なのか全く判らない中、少し前の泥酔したユミコを介抱するナミコが、杉佳代子の体を捕まへてこの醜い体と心中罵つてみせるシークエンスは、画面(ゑづら)的に甚だしく成立に難い。ところがモタモタ仕事をしないヒロインに対し、川口朱里が飛び込んで来るどんでん返しが切れ味鋭く決まる。決まつたかに、一旦は思へ。その時点で文字通り十二分余した尺で蛇に足でも付け足す気かよと思ひきや、杉佳代子が点火する二段目のロケットが土壇場で噴射。依然といふか矢張りといふか、相変らずポケーッと気の抜けたラスト・ショットではあれ、鮮やかな幕引きはクリアな後味を残す。


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