真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「変態盗み撮り ‐生々しいSEX‐」(1992『盗撮《生》ラブホテル』の1999年旧作改題版/製作:新映企画株式会社/提供:Xces Film/監督:新田栄/脚本:亀井よし子/企画:伊能竜/撮影:千葉幸男/照明:渡波洋行/編集:酒井正次/助監督:高田宝重/撮影助手:新川四郎/照明助手:石井克男/監督助手:高橋ルナ/音楽:レインボー・サウンド/効果:時田グループ/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/出演:北野まりも・水沢亜美・須藤静香・坂入正三・吉岡市郎・石神一)。企画の伊能竜は、向井寛の変名。
 アトラスと並んで御用達のラブホテル「アラン・ド」の看板抜いて、301号室。ホテトルを呼んだ常連客の野村(坂入)がイメージ・トレーニング風に腰をヘコヘコ振つてゐると、嬢到着。ホテトル「ニャンニャン」に入つて一週間との源氏名エル(北野)に野村は狂喜、気前よく弾みつつ、プレイの方は有無もいはさず手篭めにする。その模様、カット跨ぐやガラッと画面のルックが変るのが、また無頓着な映画だなあと呆れかけてゐると、隣室の覗き窓視点、すまなんだ。フロント係の佐川ミサオ(石神)が、社長の趣味で盗撮カメラを回し始めてタイトル・イン。幾分焦点のボケた新題に対し、直球勝負の旧題はピシャッとハマる開巻に、新田栄の馬鹿にならないシャープな手腕が光る。この際だから―どの際だ―どエラい筆禍をしでかしてのけると、m@stervision大哥の功罪最大の後者は、新田栄の過小評価だと思ふ。
 エルこと典子(改めて北野まりも)はニャンニャンの同僚兼、一軒家を二人で借りる同居人の金井ミミ(終盤幾許かのドラマも担ふクレジット序列推定で水沢亜美)に男が出来たと出て行かれ、一人では家賃を払へぬと頭を抱へる。ところが帰宅したところ、人の気配に典子が一室のドアを開けてみると、「今日からここに住むんだヨロシク」と超絶気軽に佐川がゐた。ミミの代りに―多分不動産屋が―捕まへて来たのが佐川で、ホテトル日勤の典子と、フロント夜勤の佐川とは生活が被らないだとか何とか、ミミには適当に言ひ包められる。因みにエルと佐川が既に覗き窓越しに交錯してゐる点に関しては、典子はエル時にはショートのウィッグで変装してゐるとかいふ大らかな方便。徹頭徹尾、髪が短いだけなんだけど。
 配役残り不完全消去法で須藤静香と吉岡市郎は、見られてゐないと興奮しないとエルを呼ぶ、面倒臭い不倫カップル。「最近変つたのは撮れたか?」とザックリした電話を佐川に寄こす、社長の声は新田栄。
 物の弾みで始まる男女の共同生活、と掻い摘むと案外どストレートなラブコメにも思へて来る新田栄1992年第四作。どストレートなラブコメがとてもさうは見えないのは、ラスト十分に突入するまで満足に本筋らしい本筋が起動すらしないのんびり屋さんの展開に加へ、専ら俳優部の面子。男優部が否応もない量産型娯楽映画スメルを爆裂させるのはまだしも、折角北野まりもがプリップリの肢体で、正体不明奇々怪々な主演女優が木に馬の骨を接ぐ、エクセスのよくある悲劇を華麗に回避したかと安堵しかけたのは、正しく束の間。縦に長いブスと横に広いブスの二番手三番手は、幾ら初頭とはいへ九十年代の商業映画でこれはない。逆からいふと、ビリング頭だけで油断するな、エクセスライクは何処からでも撃てるんだぜ的な、ボクシング漫画の如き例証ともいへるのかも知れないが。何れにせよ、終盤に至つて漸く重い腰を上げた物語をアバン同様手際よく捌き、一度は別れた恋人達が、再び巡り会ふ。煙に巻かれてゐるやうな気もしないではないにせよ、意外と正攻法のラブストーリーをそれはそれとしてそれなりに形にしてみせる辺りに、改めて新田栄の何気な堅実さが窺へる。


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