真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「ねだる人妻たち ひわいな悶え」(1993『本番 恥知らずな人妻たち』の2000年旧作改題版/制作:アットホームプロダクション/提供:Xces Film/監督:林功/脚本:林功/プロデューサー:沖本健一/キャスティング・プロデューサー:今井英明/撮影:伊東英男/照明:井和手健/音楽:ミッシェル・P/編集:フィルムクラフト/助監督:高田宝重/監督助手:広瀬寛巳/色彩計測:余郷勇治/照明助手:加藤美明/メイク:樚本豊子/制作主任:蛭田唯詩/スチール:会田定広/現像:東映化学/録音:銀座サウンド/効果:東京スクリーンサービス/制作進行:大楽智久/出演:姫ノ木杏奈・南奈美・三崎セリナ・牧村耕次・木下雅之・武藤樹一郎)。広瀬寛巳と余郷勇治のクレジットが、背景に埋もれ本格的に読めねえ(笑
 今作がピンク映画初陣の姫ノ木杏奈と、脱けの可能性も大いに残しつつ、jmdb準拠ではラスト二作目の武藤樹一郎―最終戦は小林悟の「強制わいせつ姉妹」(1994/主演:工藤ひとみ)―の絡みで開巻。前髪を下した武藤樹一郎に否応なく迸る違和感が、結果論的には最大の琴線の振り幅。三分通過して挿入、「いゝ、いゝ」と喜悦する姫ノ木杏奈のショットにタイトル・イン。「私、何かモヤモヤして街をブラついてたんです」、「そしたらほら、ナンパつていふんですか」。外出した人妻の本山杏子(姫ノ木)は、河合五郎(武藤)のキャッチに捕獲。「これもインポの主人を持つた因果でせうか」なる、実も蓋もないモノローグが涙を誘ふ、泣かんけど。杏子がホイホイついて行つた雑居ビルの一室では、晴れやかに人妻には見えないエミコとサエ(特定不能の南奈美と三崎セリナ)が既に待機してゐた。すると河合が杏子に投げた一言が、「この人達今日から君のお友達」、ザクザクした世界観がグルッと一周して清々しい。とか何とかだか何が何だか、兎も角詳細が全然要領を得ないまゝシークエンスは勝手に進行し、杏子は河合が運営するデートクラブに参加。早速“特訓”とやらで、河合は三人を各々抱く。
 配役残り牧村耕次はサエの常連客にして、実は杏子の旦那、げに狭き世間。木下雅之はエミコの常連客だが、エミコの貪欲に音を上げ杏子への鞍替へを希望する。
 林功純正ピンク第五作は、四年後にVシネを一本残すのみの大体最終作。二作前の「女医聖名子 私をベッドに連れてつて」(1992/主演:藤本聖名子)ではお話はスッカスカにせよ、それでも窺へた撮影の丹念ささへすつかり見る影もなく、画面のルックはエクセス作標準的に白々しい。物語的にも何やかや持て余す人妻が人妻専科のデートクラブに足を踏み入れるまではいゝとして、件の業者が嬢を劇中用語ママで“恋人”と称し、最終的には顧客に結婚まで斡旋するのを辞さないとなると、ほんなら何か?河合は嬢だか“恋人”を今の配偶者とは離婚させる気なのか!?といつた終ぞ顧みられかけもしない巨大かつ、根本的な疑問点。杏子の旦那は不能ぢやなかつたのかよ、といふ脇の甘さがある意味微笑ましいツッコミ処と、スッカスカどころかボッロボロ。撮影部と演出部が共倒れたとしても、生命線たる女優部が残つてゐるぢやないか。ところがこゝも、特定すら難い二番手三番手が何処から連れて来たのか感を爆裂させる脆弱ぶりで、一縷の望みも絶たれ完全に万事休す。序盤と締めの都合二回繰り広げられる、河合が杏子とエミコとサエを一人づつ相手にする一幕。あぶれた二人も遊ばせてはおかず、百合の花を咲かせる周到さなり執拗さには裸映画に込めた鉄の信念が透けて見えなくもないにせよ、正直時間くらゐしか潰せない寂しい一作である。


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