真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「欲しがる女5人 昂奮」(1990/製作:メディアトップ/配給:新東宝映画/監督:深町章/脚本:周知安/企画:伊能竜/撮影:稲吉雅志/照明:守田芳彦/編集:酒井正次/助監督:瀬々敬久/監督助手:広瀬寛巳/撮影助手:佐久間栄一/照明助手:恵応泉/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/出演:橋本杏子・川奈忍・しのざきさとみ・風見怜香・中島小夜子・池島ゆたか・山本竜二・荒木太郎・芳田正浩)。脚本の周知安は、片岡修二の変名。クレジットにはないが、スチールは津田一郎の筈。
 タイトルからイン、俯瞰の並木道に、主人公の自己紹介モノローグ。二部上場商事会社の総務課に勤務する園山タカシ(池島)は、三年前係長昇進と同時に同じ課の妻と結婚。マイホームも買ひ、順風満帆な日々を送る園山の目下満更でもない悩みの種は、部下からの公私に亘る相談であつた。と、ロイホ窓越しの結構なロングからカメラがグーッと寄ると、轟(荒木)が園山に、矢張り総務課の江藤サンへの恋の悩みを打ち明ける。童貞の轟に押しの一手とやらを教授すべく、園山は轟の部屋にホテトル嬢のユウ(風見)を呼ぶ。
 配役残り川奈忍が、そんな訳での江藤倫子。山本竜二は、園山らが勤務する会社の佐伯専務。何だかんだで事は上手く運び、轟と関係を持ちつつ、倫子は実は元々佐伯の愛人であつた。しのざきさとみは、この人は恐らく社外の佐伯愛人―劇中―二号。しのざきさとみの濡れ場に際して佐伯がバイブを持ち出す件、山竜がバイブを口に咥へて責めるのが、ジョイトイとクンニが融合したサイバーパンクの趣で斬新に映つた、何がサイバーパンクだ。閑話休題―与太を吹くにもほどがある―橋本杏子は、倫子の悲運に秋田から園山を訪ね上京する、ホステスの姉。一旦ピリオドが打たれての一年後、芳田正浩は、総務課の新しいヤリ手部下。そして中島小夜子が、芳正が係長に自慢気に語るテレクラ武勇伝中に登場する、二十代半ばの人妻。中島小夜子が芳正と絡んでゐるのを見ると何故か無性に腹が立つ、この正体不明の感情は一体何なのか。これこそ正に、知らんがな(´・ω・`)
 深町章1990年第二作は、残りの四作は瀬々の第一作第二作と佐藤寿保といふ伝説の絶対美少女・中島小夜子にとつて、唯一のオーソドックス・ピンク。尤も、公開当時前月に封切られた「半裸本番 女子大生暴行篇」(監督:佐藤寿保/脚本:夢野史郎)ではエターナルを撃ち抜く鮮烈な輝きを放つた中島小夜子が、案外今回豪華五枚並ぶ綺麗処のワンノブゼンに大人しく畏まつてもしまふのは、物語なり撮影部なり深町章と佐藤寿保の演出の相違云々も兎も角、寧ろ登場順に川奈忍としのざきさとみに、当時女王として君臨する最初の“最後のピンク女優”橋本杏子。何処からでも頭を狙へるビリング―後述する構成上、今作のビリングに然程意味はないが―に名を連ねた、如何せんな分の悪さが否応なく影響してゐるやうに思へる。オッパイで先頭打者に飛び込んで来る、風見怜香にも言及せえよ。
 係長風情がザクザク部下の首を刈れる、件の商事会社のワイルドな社風はさて措き、轟の相談を起点に、新規俳優部の投入と御役御免に連動して、話がつらつら連なつて行く展開は実に秀逸。芳正が的確な読みを開陳する時点でサルにも明らかとはいへ、狙い澄ましたオチもピシャッと決まる。小一時間女の裸を心豊かに楽しませた上で、気がつくと何気に完成してゐる、開巻も回収した起承転結。一見何てことない裸映画に見せて、深町章と片岡修二の両輪が見事に噛み合つた地味ながら、量産型娯楽映画の佳品である。


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