真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「Eカップ 満乳」(昭和63/製作:プランナーズハウス・パオ/配給:新東宝映画/監督:佐々木良/脚本:斉藤美恵/製作主任:渡辺明彦/撮影:伊東英男/照明:斉藤正明/助監督:石崎雅幸/編集:金子編集室/効果:髙野効果団/音楽:東京スクリーンミュージック/演出助手:四宮一志/撮影助手:渡辺たけし/照明助手:横須賀港一/車輌:田治康伸/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/出演:豊田香里奈・鈴木美子・秋本ちえみ・田山ガン・石神一・真山豊・西田新太郎)。
 ラブホ―まづ間違ひなく目黒エンペラー―にて男女が交戦中、但しぎこちないパンがベッドの上に到着するまで三十秒。ラスト電話口で二十歳と名乗るのは、後述する宇野との上下関係を鑑みるに怪しいかも知れない女子大生の水口セツコ(豊田)と、劇中呼称ママで出会ひクラブを介して月四回二十万の愛人契約を結んだ田島(田山)の情事。事後の会話、柳沢慎吾のレプリカのソックリさんの隣に住んでる人みたいな、田山ガンの素頓狂なハスキーに耳を抱へる。紹介して貰つてよかつたと満足する田島に対し、「これが友情の始まりだ、なあんちやつてね」とセツコが「カサブランカ」に軽く掠めておどけてみせたところで、頭に豊田香里奈を冠するVHS題のタイトル・イン。何処ぞの御仁に似た類の輩かと、何気にでもなく不安に駆られる。
 田島がセツコを送る車を俯瞰のロングで追つた後、朝の雑踏。出勤する田島に美沙(秋本)が接触、“お昼に公園で待つてます。”とするメモを手渡す。表向きの間柄は語られない美沙は元々田島の愛人で、セツコを手に入れたことも影響してか、田島は美沙を疎んじてゐた。豊田香里奈と秋本ちえみなあ、オッパイと若さ以外何ひとつ豊田香里奈が秋本ちえみに勝つてゐるポイントが見当たらないのだけれど。閑話休題、一方セツコは後輩の宇野(ビリング推定で真山豊)に、宇野が監督する女子大生と中年のラブストーリーを描くとの8ミリ映画に誘はれる。
 配役残り、活動期間の短さも兎も角、何かしら代表作に恵まれてゐれば時代を獲つてゐてもおかしくなかつたのではあるまいかとこの期に思はれる、絶対美人の鈴木美子は田島の細君・マリコ。だからそこそこ以上の美巨乳も誇る鈴木美子を嫁に持ちながら、余所の女にうつゝを抜かす田島に本格的に腹が立つ、発声は柳沢慎吾のレプリカのソックリさんの隣に住んでる人だし。不完全消去法で西田新太郎が、宇野の8ミリ映画に於けるセツコ演ずるマリの相手役にして、孤高のラッパーEJD似の小林、別に宇野の同級生にしか見えない。そして脆弱な男優部の中何気に役者の違ひを見せつける石神一は、マリコの間男・マコちやん。宇野8ミリ映画の撮影現場にもう一人―だけ―見切れる、まだ幼い顔立ちの男は不明。
 鈴木美子の出演作を何か見られないかと辿り着いた、謎の監督・佐々木良の多分最終作。jmdbで僅かにトレース可能な略歴としては一年間の助監督修行を経て前年「激写!! 本番フォーカス」(脚本:池田正一/主演:秋本ちえみ)でデビュー、十年空けて最後の活動は自主映画「八月の光」(1998/監督・脚本:岩田正惠・桜蘭桃子)の製作。
 映画の中身はといふとピンクを殆ど全てのメインにポスターを貼り巡らせた、宇野のアパートの造形。小林の最後の台詞は「マリ、君の瞳に乾杯」に、映画全体のラストを締める―締まつてはゐないのだが―セツコは「愛とは決して後悔しないことだ、ナンチャッテ」と、良くも悪くもピュアな映画愛をストレートに覗かせる。それでゐて、あるいはそれなのに。驚く勿れ宇野はセツコと小林の絡みを、おまけに本番で大敢行。8ミリ映画といふか、ブルーフィルムでも撮影する気か。となると俳優部の全員が何れかと挿しつ挿されつする格好となり、裸映画的には極めて従順に濡れ場濡れ場を連ね倒した挙句、結局終ぞ物語らしい物語は碌に起動もしない始末。一本調子で中途半端にムーディーな劇伴の選曲も、全体何がしたいのだが生煮え感を加速、より直截にいへば火に油を注ぐ。終始ぼんやりしつつも突発的な絶対値の酷さを叩き込むのは、実は田島の子を宿してゐた美沙宅に、田島が出向いての一幕。脅かすつもりが美沙が本当に手首を切つてしまふ一悶着経た上で、何故か美沙は唐突に別れに同意、即座の正しく舌の根も乾かぬ内に「だから抱いて」。何だそれ、“だから”の意味が全然判らねえよ。尤も、正否はさて措き振り幅を感じさせるのはその件が関の山、全般的には臭いシネフィルぶりを窺はせるものの当の映画は漫然とするばかりで一欠片たりとて面白くも何ともない。いはば、清水大敬スーパーライトとでもいつた風情の一作。ジャケ写に釣られて普通にヌキ目的で借りられた諸兄は、相当ババを掴んだ思ひをなされたのではなからうか。


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