真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「女教師の秘密 縛つてあげる…」(2016/製作:オフィス吉行/提供:オーピー映画/脚本・監督:吉行由実/撮影:小山田勝治/録音:西山秀明/編集:中野貴雄/助監督:江尻大/撮影協力:山川邦顕/スチール:本田あきら/緊縛協力:佐倉萌/制作応援:広瀬寛巳/ポストプロダクション:スノビッシュプロダクツ/仕上げ:東映ラボ・テック/出演:加納綾子・岡田智宏・桐島美奈子・ピン希林・白石雅彦・白石みお・和田光沙・吉行由実・樹カズ)。高速クレジットに振り切られ監督助手をロストする。
 ダサいオフィス吉行新ロゴからズージャー開巻、外回りを一仕事終へた岡田智宏が颯爽と登場すると、速攻のタイトル・イン。進藤(岡田)が直行した先は、スレッスレのミニスカが徒に煽情的な玲子(加納)の英会話教室。a.k.a.さらだたまこのピン希林と白石雅彦・和田光沙が、生徒の珠代と白木に、名もなき生徒要員。クレジットレスの生徒要員がもう三人、その中で一人だけ目立つ髭のオッサンは、何処かで観たやうな気もするのだが。英会話もさて措き玲子に見惚れる進藤は、教室明け珠代と白木に捕まり一杯に。進藤をガッカリさせる玲子と夫・直樹(樹)のキレイキレイな夫婦生活挿んで、進藤は帰宅。一切出て来ない息子は留学中、目下二人で暮らす妻の夏江(桐島)とは、進藤の意には反する形で長くレスの状態にあつた。母親が軽く倒れ実家に戻る夏江を送つた帰り、進藤は大きな荷物を抱へた玲子を拾ふ。自宅に届けた後、下しそびれた玲子のキャリーバッグを開けてみると出て来た緊縛用の赤いロープに、進藤は静かに衝撃を受ける。
 配役残り、三番手投入をヒロインの秘密の真相に絡める。地味に秀逸な起用が光る白石みおは、三年前直樹の部下にして浮気相手・美紀。ラストに飛び込んで来る吉行由実は緊縛要員、家庭内別居中の白木妻。並走する普通のホームパーティー含め更に若干名見切れる内、パートナーもをらず―恐らく―自縛した状態で一人モゴモゴしてる、樫原辰郎いはくピンク映画の妖精こと広瀬寛巳が捧腹絶倒、この人本当に妖精だ。
 妻との関係に隙間を抱へる二枚目中年が鼻の下を伸ばす、英会話教師の別の顔。吉行由実2016年第一作は近作の傾向とりわけ椿かなり主演作を想起するに、飛び道具臭がプンプンする起承転結の転部から又ぞろ派手に玉と砕けるのか、と事前には思ひきや。結局、中年夫婦が倦怠期を緊縛で解消しまんた(≧∀≦)、の清々しい一点突破で駆け抜ける案外アッサリした展開には、ある意味逆の意味で驚かされた。ともいへ濡れ場を介錯する男優部を岡田智宏と樹カズ、グッドルッキングが爆裂する渋いイケメンで固めた上に、ロケーションから小洒落た女優部を綺麗に撮ることに全てを賭けたハーレクインなピンクは、それはそれとしてそれなり以上に安定する。加納綾子と桐島美奈子が全裸で年相応の世間話に話を咲かせる、プログレスした女子トークピンクの可能性には、幾分の心残りも感じつつ。その際桐島美奈子のボリューム溢れるオッパイが絞り込まれてあれば、それでもなほ桐島美奈子が普通に旦那の愚痴や親の健康の話とかしてたりしたら完璧、超絶、吉行由実は映画の歴史を変へる。歯止めのきかなくなつた与太はさて措き、面白いかどうかは一旦兎も角吉行由実のオサレ系裸映画はピンクを女性層にも販路を拡げる上で、目出度く盛況の内に終了したらしいOPP+にうつてつけに思へなくもない。あるいは、浜野佐知で敢然とクィア戦線に突入してみせるか。


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