真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「ロリータ恥辱」(昭和63/製作:獅子プロダクション/配給:新東宝映画/監督:佐藤寿保/脚本:夢野史郎/企画:大橋達夫/撮影:斉藤幸一/照明:加藤博美/音楽:ラジカル・ヒステリーツアー/編集:酒井正次/助監督:小原忠美/監督助手:山田修一/撮影助手:青柳知之/照明助手:松本キヨシ/車輌:若月誠一郎・町田晃一郎/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/出演:藤沢まりの・芳村さおり・伊藤清美・渡剛敏・風見怜香・南崎ゆか・隈井士門・佐野和宏)。
 グリル越し視点でマイクテストした藤沢まりのが、恐らく原宿のホコテンを適当にインタビューして歩き回る。女性ヴォーカルの「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」起動、マイクがガンマイクを持つた隈井士門と激突すると、何故か男の方が突き飛ばされて大の字に。軽く遣り取りを交したちさ(藤沢)がその場をローラースケートで離れるロング噛ませて、自宅にてハレー彗星が地球に激突しただとか何とか超日記をちさが書いてゐると、ラジオが「マジカル・パイレーツ・ツアー」なる海賊放送にジャックされる。パイレーツ?とちさが呟くと暗転、「藤沢まりの 淫媚楼」のビデオ題でタイトル・イン。双方眼鏡をかけたまゝ、加へて母親はハイヒールを履いた両親(伊藤清美と渡剛敏)のゑぐい夫婦生活を、ちさは途中まで覗く。多分同級生なのに何故か制服が違ふ、男言葉のカズコ(芳村)との掴み処があるのかないのかモッサリした一幕挿んで、深夜再びマジカル・パイレーツ・ツアーをキャッチしたちさは、周波数帳―そんなのあるんだ―を頼りに出撃、勝手について来たカズコは構はず送信地点と思しき廃小学校に忍び込む。ちさが散策する内に、置き去りにされた機材を集めた放送車に辿り着いたカズコは、マジカル・パイレーツ・ツアーの主(佐野)に犯されかける。カズコが自力で逃走したのち、ちさも放送車に乗り込む。“ABCDジャンピン・ジャックのパイレーツ”とその場の勢ひで海賊放送を更にジャックしたちさは、カズコが犯される嘘実況を放送する。
 配役残り南崎ゆかは、ちさがジャンピン・ジャック・パイレーツで実際の殺人を実況する、隈井士門にレイプされた末に殺される女。作中、最良質の当然要求されて然るべき商品性を担保する風見怜香は、同じくちさが実況する蛇―のオモチャ―でオナニーする女。南崎ゆか殺害時、実はジャンピン・ジャック・パイレーツ即ち自身の殺人の実況を聴いてゐた堀田ジュン(隈井)は、下調べの一言で片付ける虚構の方便で捜し出したちさに接触する。
 後述するVHSジャケには“BRAIN SEXが股間を爆裂する”なるとんでもなくイカれた、もといイカした惹句も躍る佐藤寿保昭和63年最終第四作。結論を先走ると、当時平板なヌキ目的のAVユーザーからは、新東宝ビデオは一部地雷視されてもゐたのではなからうか。
 海賊放送を流す男と、海賊放送を更にジャックする少女。故郷である東京の荒廃を憂ふ男に対し、少女は軽やかにいつそ破滅を願ふ。やがて悪ふざけの度が過ぎた少女は、殺人者とミーツする。箍の外れたロマンティックな大風呂敷は、確かに震へるほどに魅力的ではあつた、途中までは。今なほ最前線のその先に駆け抜け得よう、藤沢まりのの冴えたキューティーは刹那的な幻想を易々と不滅とも誤認させるものの、片や甚だ限定的な風俗の枠内より半歩とて踏み出で得まい隈井士門の糞ダサいハンサムぶりは致命的も通り越して絶望的。上下とも画期的に中途半端なサイズのジージャンとジーパン、しかもケミカルウォッシュのといふ扮装は逆の意味で衝撃。何で見てゐるこつちが無性に恥づかしい気持ちにさせられなければならないのか、後生だから勘弁して欲しい、80年代。唐突極まりないちさ両親の死が、呆気ないか不甲斐ない情死なのか劇中イマジンなのか判然としない辺りから、順調に拡げられた風呂敷は畳まれるどころか綻び始め、兎にも角にも今作最大の難点は、肝心要本丸ビリング頭の藤沢まりのが何時まで経つても脱がない―寧ろ脱がずとも映画を支へきるのは、この場合諸刃の剣ともいへるのだが―挙句、不発気味の映像マジックに頼つた濡れ場の意味が判らない、裸映画的には論を俟たず、量産型娯楽映画のポップ性に固執するならば敷居の高さが如何なものかな、何れにせよ根本的な不誠実。佐野が殺られるカットの鮮烈さで幾分盛り返しつつ、所詮は焼け石に水、到底逆転しない程度の反撃。殺傷力の高いモチーフを乱れ撃ち、圧倒的な主演女優を擁しながら、ある意味見事に尻すぼんだ一作である。

 一点映画本篇からは全く離れて凄まじいのが、VHSジャケがわざわざ御丁寧に“いんびろう”と振り仮名まで打つておきながら、“淫媚桜”の大誤字。そんな豪快な代物がそのまゝ店頭に並んだ、昭和の大らかさが今となつては麗しい(´・ω・`)


コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )


« 変態姉妹 亭... 陶酔妻 白濁... »
 
コメント
 
 
 
Unknown (はる)
2016-09-25 21:54:34
地雷なのは新東宝ではなくて佐藤寿保の方かも。
ロマンポルノとかでも結構アレな作品がありますからねぇ。
名作ですが。

渡剛敏は昔AVにも出てたみたいです。
にっかつの『制服処女 ザ・えじき』で高校生役で出てましたw
それは結構名作なので面白いですよ。
因みにちゃんとちんこ出してました。
隈井士門は薔薇族映画に出てました。
今でも現役みたいです。
藤沢まりのは一時期ファミ通の編集やってたらしいです。
漫画も描いてたとか。
 
 
 
>はる様 (ドロップアウト@管理人)
2016-09-26 00:01:57
>地雷なのは新東宝ではなくて佐藤寿保の方かも

 いやあ、それが四つ前のエントリーの佐々木良も大概ジャケ詐欺でして(笑

>にっかつの『制服処女 ザ・えじき』で高校生役で出てましたw>>渡剛敏

 わはは、量産型娯楽映画らしい配役の振り幅ですね   >あるいは貧弱な俳優部の頭数

>隈井士門は薔薇族映画に出てました

 ああ、如何にも出てさうですねえ。

>今でも現役みたい

 福島からヨーロッパに疎開してからが今ひとつ漠然としかしてないみたいですが、
 どうしてるんですかね。

>藤沢まりのは一時期ファミ通の編集やってたらしいです
>漫画も描いてたとか

 今作の超日記にその辺りの片鱗が垣間見えます、時代を易々と超え得る大逸材ではないかと。
 
コメントを投稿する
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。