真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「異常下半身 またがる快感」(1993『裏本番 嗅ぐ』の2001年旧作改題版/企画:セメントマッチ/製作:BREAK IN/提供:Xces Film/監督:池島ゆたか/脚本:五代響子/撮影:稲吉雅志/照明:渡波洋行/編集:酒井正次/スチール:津田一郎/助監督:高田宝重/監督助手:梶野考/撮影助手:村川聡/照明助手:斗桝仁之/録音:シネキャビン/現像:東映化学/出演:有賀ちさと・しのざきさとみ・井上あんり・杉本まこと・山本竜二・山ノ手ぐり子・神戸顕一・的場研磨・征木愛造・林由美香《特別出演》・池島ゆたか)。出演者中山ノ手ぐり子から征木愛造までと、林由美香のカメオ特記は本篇クレジットのみ。
 クレジットが同期する、三本柱が大輪の百合を狂ひ咲かせる開巻、喜悦する有賀ちさとの止め画にタイトル・イン。キネコで、しのざきさとみが浴槽の中で死んでゐる。ニュースキャスター(神戸)が、人気ミステリー作家の日向文枝(しのざき)が自宅浴室で急死した事件を伝へる。当時日向は睡眠薬を服用してをり、死因は溺死。日向は四年前から山梨の古民家、となると要は御馴染水上荘に幽居してゐた。とりあへずな、捜査といふほどでもない調査を開始した山梨県警の長谷川(池島)を、日向の助手・みや子(有賀)を始め三人の家人が迎へる。日向と同性婚する代りに、養子縁組で妹となつたゆかり(井上)と、唯一の男衆である寡黙な書生の曽根崇(杉本)。長谷川が話を訊き始めたものの、みや子は遺された財産を手中に収めるゆかりの所業を仄めかし、曽根はみや子が、日向とゆかり二人のサディスティックなレスボスに日々虐げられる惨状を訴へ、片やゆかりはといふと、みや子が現れて以来、水上荘もとい日向邸の調和は失はれてしまつたと難ずる。各々の証言は何れも食ひ違ひ、軽く途方に暮れた長谷川は一旦上京、みや子・ゆかりの来し方を辿つてみることにする。
 配役残り、五代響子(現:暁子)の変名である山ノ手ぐり子は、日向担当の編集者・佐々木。こちらは高田宝重変名の的場研磨は、妹の同性愛に激昂し絶縁した、ゆかり実兄。凡そ、血が繋がつてゐるやうには見えない点に関しては気にするな。多分杉原みさおのアテレコぽく聞こえる林由美香は、みや子がホステスをしてゐた時の同僚・真由美、アテレコなのは間違ひない。山本竜二はその頃みや子と愛人契約を結んでゐた、不動産屋のカタギリマサヒコ。店でみや子と出会つた日向が、羽振りの全然いい新しいパパさんならぬママさんになつた格好。そして神戸顕一を間に挿んでの変名・ストリーム・アタックを地味か華麗に完成させる、イコール梶野考の征木愛造は水上荘風呂場のリフォームに入るうひはな業者。因みに今作の封切りは四月下旬で、佐野和宏の「変態テレフォン☎ O・N・A・N・I・E」(主演:岸加奈子)は一月上旬。梶野考マターで、持ち込んだ意匠なのかな。
 (緊急事態)宣言解除の翌日には、早速再起動した俺達の地元駅前ロマンに飛び込んで来た、未配信の池島ゆたか1993年第二作。ところでそんな駅前の新コロ対策具合はといふと、まづマスク無しでの来館禁止。敷居を跨いですぐに消毒ポンプを設置し、テケツにも厚ビニール。一列五席の客席を、列毎に両端と中央のみ座らせるかなりドラスティックな間引きを敢行し、なほかつ場合によつては入場制限も行ふとの予告。県下最後まで踏み止まり、そして最速で開けたフリーダム乃至アグレッシビティに反し、結構生真面目な徹底ぶり。当然ハッテン場たる自覚もある筈で、情け容赦ない、ガチ死活問題であるのかも知れないけれど。兎も角、小屋は開いてゐる。俺は行く、一応用心して。
 閑話休題、長谷川が藪の中で彷徨ふ風情にサルでも判る、ラショーモン・ピンク。一見不用意な長尺を割いてゐるやうに思へた山竜パートも、カタギリの、日向文枝と全く同様の最期―といふかこれバスタブも同じで、日向の件も水上荘で撮つてはゐないのでは―で本筋に綺麗に収斂。釣瓶撃ち続ける正攻法の濡れ場で全員怪しい状況を見事に構築すると、アバンを変形させた巴戦で堂々と締め括る、裸と劇映画の両立を見事に果たした高水準の量産型裸映画。第六回ピンク大賞に於いてベストテン九位に食ひ込んではゐるが、主演女優がもう少しパッとしてゐれば、もつと高く評価されておかしくはなかつたのではなからうか。だから荒木太郎もせめてこのくらゐの映画を一本はモノにした上で・・・・とか死んだ子の齢を数へるのはもう止めにするとして、この期に気づくのも我ながら大概どころでなくどうかしてゐる気もしつつ、池島ゆたかのエクセス期が、案外宝の山なのかも。アレのナニがチョメチョメで大蔵では撮れないのだとしたら、電撃エクセス里帰りするのは如何かなどと浅墓極まりない素人考へ。


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