真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「盗撮レポート 人妻浮気現場」(1992/製作:小川企画プロダクション/配給:大蔵映画株式会社/監督:小川和久/脚本:池袋高介/撮影:伊東英男/照明:内田清/音楽:OK企画/編集:フィルム・クラフト/助監督:石崎雅幸/撮影助手:佐久間栄一/照明助手:佐野良介/録音:ニューメグロスタジオ/効果:協立音響/現像:東映化学/出演:小川真実・水鳥川彩・伊藤舞・吉岡市郎・鳥羽美子・栗原一良・杉本まこと・青木和彦・久須美欽一)。
 望遠レンズにタイトル開巻、何処から持つて来たのかまんま「探偵物語」ライクな、フュージョンの劇伴が鳴る。タイトルバックは有りもののエロ写真を適当に並べて、本篇の火蓋を切る久須美欽一のモノローグが「私は私立探偵」。清々しい直球ぶりが、豪快に火を噴いてのける。曰く覗きが昂じて興信所所員となつた―また派手に昂じたな!―野上博行(久須美)は、苦手を自認する尾行を始め失敗続きで、茶を挽く日々に燻る。その割に何某か営業職に就く概ね内縁の妻・サチコ(伊藤)と暮らし、サチコのために何時か大金をだなどと、浜省の歌詞みたいな安い野望を胸に秘めもする。そんな最中、行きつけの鳥羽美子がママの実店舗にて、野上は三谷産業社長の三谷(市岡)と出会ふ。野上が探偵だといふのに喰ひついて来た三谷は、社員の素行調査を持ちかける。
 配役残り、茂みに潜んで青姦を撮影する野上のイントロダクションに登場するカップルは、初めから特定可能なやうには抜かれてゐない。栗原一良(ex.熊谷一佳)はカウンター内のバーテンダー、但しアテレコ。ボックス席には、姿良三(=小川和久)もシレッと見切れる。水鳥川彩は三谷の浮気相手・ノリコ、三谷産業社員。そして小川真実が、三谷が当初は―無駄に―社員とか偽つた素行調査の標的にして、実は妻。杉本まことは三谷が夫人の浮気を疑ふ、確か日野のハウススタジオに教室を構へる社交ダンスの講師。青木和彦はその他生徒、ではなく杉まこのアシスタント。
 淡々と今上御大旧作を見られるだけex.DMMで追つて行く、小川和久1992年第五作。少なくともピンクは全部見てしまつた上で大悲願のハンドレッドにはなほ全然遠い、大御大を新着させて貰へないものか。それなりに抱へてゐなくもない筈の、エク動含めて。
 比較的女の裸にすんなり親和した物語かと思ひきや、意表を突いて青木和彦も参加する三谷夫人の巴戦写真を、何を血迷ふたか野上が三谷夫人―正確には吉岡市郎が三谷妻人―に売つた方が金になると踏む辺りから、みるみる迷走する展開が逆の意味で見事。正方向にいふと、まあ、アレだ。小川真実の両脇を水鳥川彩と伊藤舞のキューティーなツインドライブが固める、三人体制期のBABYMETALにも似た布陣はそれなり以上に強力。では、あるものの。藪からに下手な大風呂敷をオッ広げた挙句に、百万ぽつち入る入らない以前の、当然自身にも懸念され得る正しく致命的なリスクを、浜辺のロングに託(かこつ)けて野上が無造作に等閑視してのける壮大に惜しくも一歩手前の盛大なラストは、幾らイズイスティック映画とはいへ流石に底を抜かすにもほどがある。全篇を通して野上が逐一露呈する、お茶目な粗忽さくらゐしか見所も見当たらない一作。主要キャスト劇中唯一無垢なサチコが、男運がクソなばかりに終に報はれない点に関しては、地味に後味の悪い心を残す。


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