真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「お姉さんの性生活 抜かせ放題」(1994『どスケベ姉さん -ハメ狂ひ-』の2001年旧作改題版/企画:セメントマッチ/製作:オフィスバロウズ/提供:Xces Film/監督:池島ゆたか/脚本:五代響子/撮影:下元哲/照明:郷鈍浮入澄/編集:酒井正次/スチール:津田一郎/助監督:高田宝重/監督助手:森山茂雄/撮影助手:郷田アール・田中益浩/照明助手:穂手留幸和/録音:シネキャビン/現像:東映化学/出演:原恵美子・吉行由美・神戸顕一・杉原みさお・池島ゆたか・小林一三・山科薫・黒沢俊彦・山ノ手ぐり子・沢木るか・《写真》鶴水まひる)。出演者中、小林一三・沢木るか・鶴水まひるは本篇クレジットのみ。照明部は二人とも誰の変名なのかといふ以前に、郷鈍浮入澄は一体どう読ませる気だ。
 騎乗位でユッサユッサ弾むロケット乳を、アオリで抜くジャスティス開巻。殆どその瞬間に、この映画の勝利を確信したといつても過言ではない。十九歳女子大生の長谷川なつみ(原)が、教授の安藤(池島)を自宅に連れ込む。なつみの両親(遺影は沢木るか、と高田宝重)は親不孝娘いはく“財産遺して早死に”、少なくとも二棟のマンションを相続したなつみは、悠々自適セックス三昧の生活を送つてゐた。何回戦目かの再戦を期して、尺八を吹いてゐるところに無粋な電話が鳴る。姉からで、義兄急死の報になつみが度肝を抜かれると、ジャジャジャジャンとベタな劇伴が起動して暗転タイトル・イン。明けて飛び込んで来る義兄・桃山サトルの遺影が、小林一三こと樹かずの本名。無体な会社から早々に社宅を放逐された、姉のケイコ(吉行)がなつみ宅に転がり込んで来る。劇中文言ママで“種違ひ”のケイコとなつみは元々姉妹仲が宜しくなく、男を連れ込めないとなつみは窮する。さういふ差別的な遺言でも残してゐたのか、ケイコが遺産―大半はなつみ実父である宝重の財産―の恩恵を受けてゐないらしき素朴な疑問に関しては、豪快に放置して済ます。
 配役残り、樹かずに勝るとも劣らず大正義イケメンの黒沢俊彦はなつみにとつて年長の幼馴染で、今はマンションの住み込み管理人・ケンジ。ケイコを訪ねて来る神戸顕一は、サトル込みの三人で高校の同級生・青柳拓郎。サウンド・オブ・サイレンスなんて鳴らして幕を開ける、色調もセピアな高校時代の回想が、カット跨いで巴戦に突入する超飛躍には吃驚したものの、文句なく正しい、絶対的に正しい。杉原みさおは後輩のなつみに対抗心を燃やす、佐伯か冴木ミユキ。多忙の安藤になつみが構つて貰へない、流れで登場のタイミングが読めた山科薫は、なつみがテレクラで調達する男。誰か知らんけど普通に美人な沢木るかは、ミユキの友達。そしてイコール五代響子の山ノ手ぐり子はケイコを急襲する、サトルの子供を妊娠したと称する女・尾崎弥生か彌生。
 地元駅前ロマンに着弾した、これまで未見の池島ゆたか1994年第三作。何はともあれな決戦兵器が、山科薫に誇示する劇中スペックでバスト98.5cm・Gカップ、おヒップもパッツンパツンに見事なダイナマイト・バディで銀幕を轟然と撃ち抜く主演女優。サックサク俳優部が登場する、軽快にして案外完璧な序盤を通してあつらへた、なつみがケイコに早々に出て行つて欲しい下地を、態度を豹変させた山科薫になつみが犯される絡みで加速。尾崎の件で姉妹を―何となく―和解させ、そして最大の妙手が、安藤をミユキに寝取られる一件を通して、なつみが捨て鉢紛れに青柳と寝て濡れ場の回数を稼ぎつつ、最終的にはそれまでケンジの片思ひであつた恋路を成就させる。三番手―と山科薫―を展開の動因に機能させる的確な論理が素晴らしい、綺麗な綺麗な裸映画。脇を固めるのが吉行由美に杉原みさおとなると、当然オッパイ・ストリーム・アタックも爆裂。挙式目前のケイコ・青柳と、その内のなつみ・ケンジが乱交するクライマックスも無茶苦茶なんだけどだからジャスティス。物語だとかテーマだとか蓋然性だなどと、然様な些末シネフィルにでも喰はせてしまへ。タップンタップンな女の裸を一時間タップリ堪能させて、後には清々しい余韻しか置いて行かない慎ましやかなピンクの完成形。要らぬか至らぬ筆を例によつて臆面もなく滑らせると、梯子を外された事件については擁護するに吝かでなく個々の論考に対しては首を縦に振るべき点も大いにあるにせよ、括弧つきだらうと何だらうとピンクが終つただの大啖呵を切るならば、荒木太郎には今作クラスをせめて一本くらゐはモノにした上でにして欲しかつた、完全に過去形かよ。


コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )


« 師匠の女将さ... 獣色官能婦人/... »
 
コメント
 
 
 
郷純浮入澄 (キルゴア二等兵)
2020-02-25 21:09:24
これは多分、「純」が「鈍」の間違いで「ごうどんういりす」(ゴードン・ウイリスのもじり)ではないでしょうか。
 
 
 
>郷純浮入澄 (ドロップアウト@管理人)
2020-02-25 22:03:07
 おお、凄い。それだ!
 全く以てこの男がその手の映画的教養がレス・ザン・ゼロなもので・・・・
 感服致しました、そして訂正しました。
 
コメントを投稿する
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。