真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
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福岡市在住のピンクス。ピンクスとは、ピンク映画愛好の士、を意味する造語である。
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大人の同級生 させ子と初恋
竹洞哲也
/
2019年05月30日
「
大人の同級生 させ子と初恋
」(2018/制作:Blue Forest Film/提供:オーピー映画/監督:竹洞哲也/脚本:深澤浩子/撮影監督:創優和/録音:山口勉/編集:三田たけし/音楽:與語一平/整音:吉方淳二/助監督:菊嶌稔章/制作応援:MASATO/スチール:阿部真也/仕上げ:東映ラボ・テック/出演:なつめ愛莉・香山亜衣・加藤ツバキ・細川佳央・津田篤・折笠慎也・イワヤケンジ)。遠出する頭数を渋るなり絞つたのか、助手部のクレジットはなし。
もうバービー人形ばりにスタイルのいい主演女優が田舎道、キャリーバッグを引くフルショットにサクッとタイトル開巻。都落ちした西原紅子(なつめ)がほてほて向かつた先は、青森県三戸郡五戸町の床屋「イトウ理容」(旧倉石村)。紅子が十六連射感覚でチャイムを乱打しても出て来ない家人、紅子の姉・碧(加藤)と夫の中澤慎介(津田)は、風呂桶の中大絶賛背面立位の真最中。伊藤とか伊東にしておけば別にいいぢやんといふのと、何某か所以の有無は知らないが十一月初頭に封切られた今作で、薔薇族込みでも2018年漸く初舞台となる津田篤が、経年劣化に抗へず大分体が緩んで来た。ピンクに出る以上絡みもあるのだから、抗つて欲しい。千葉真一曰く、肉体は俳優の言葉。高校卒業後十年、東京で読者モデルとして浮名を流す紅子は、同棲する劇団員が妊娠させた他の女(二人とも一切登場せず)と結婚するとかいふ、無体か雑な理由で住居を放逐。勢ひで仕事も辞め出戻つたものの、大量の荷物を着払ひで被弾させた実家からも、塩を撒かれて来たものだつた。どちらが本業なのか、姉夫婦の葱畑を手伝はされる紅子は、アイスを買ひに行つてマッチを買つて来る―劇中当地に初めて出来た―コンビニの表で、こちらも母の死を機に就職した仙台から先月帰郷した、高校の元カレ・阿久津礼二(折笠)と再会する。
配役残りイワヤケンジは、妻の死後阿久津家を一人で守る格好になりかけた、礼二の父・賢二。礼二の上に兄貴が少なくとも一人はゐるとなると、なほさら齢が近すぎる―公称十七歳差―違和感は、直截な見た目からも否めない。ワン・カットだけ見切れる妻の遺影は、流石に遠すぎてあれはスクリーン・サイズでも識別不能だらう。香山亜衣は、カレーをタッパに入れて阿久津家に度々現れる謂れがよく判らない、紅子・礼二と同級生の小暮すみれ、旧姓広岡。細川佳央は、矢張り紅子らと同級生の、すみれ夫・弘嗣。界隈最強に土の匂ひの似合ふ男、広瀬寛巳の出番は今回残念ながらなく。
竹洞哲也2018年第四作は、新たなる危機の到来を思はせかねない静かな問題作。紅子主導の限りなく据膳感覚で、サックサク焼けぼつくひに火を点ける紅子と礼二の周囲を、すみれがうじうじうろうろする。腹をたてるほどの、内容では必ずしもない、ものの。どうせOPP+に色目を使つてゐるにしては、平板な展開も兎も角、膨らませる余地どころか、本筋から漠然とした稀薄な物語が、殆ど余計な心配と同義の別の意味でミステリアス。挙句すみれは兎も角、R18版中終に礼二の口からすみれの名前は聞かれず終ひの上で、すみれが弘嗣と離婚し紅子は身を引き、すみれと礼二がくつゝく人を喰つた着地点には吃驚した。それでも七十分の尺があるにも関らず、高校時代の回想パートも丸々オミットしておいて、木に竹を接ぐ気でなければその結末は如何せん呑み込むに辛い。元来浮草の紅子が身を引くのも何処に流れて行くのも兎も角、弘嗣がすみれと別れるのは流石に些かハードルが高くはあるまいか。細川佳央が二度目に撃ち抜く、
知つてゐた表情
は数少なさを差し引かずとも、ドラマ上最強の見所ではあつたが。酔ひちくれ寝てゐたところを、嬌声で起こされる。なつめ愛莉と折笠慎也の絡みが完遂に至る瞬間に、イワヤケンジのどうでもいいカットを捻じ込む正気を疑ふ極大悪手は到底度し難いとして、あとは殊に三番手の量的不足と、二番手がより存在感を示す若干失した平衡を除けば、裸映画的にはぼちぼち寄りのそこそこ。ここは恐らく演出の成果で陽陰のキマッたビリング頭二人を擁し、各々男優部をフレーム外に排したショットは決して悪くない。さうは、いへ。加藤義一が若御大化しかねなかつた、絶不調の谷間を目出度く脱したのも束の間。話を戻すが霞よりも薄い物語と、あまりにぞんざいで仰天させられる着地点。要は、竹洞哲也が師匠にして
大御大
・小林悟の作風を現代風に幾分リファインした、新御大爆誕の悪寒もとい予感に、我々は慄かなくてはならない時が来てゐるのかも知れない。
紅子が膣トレ用のジョイトイを挿れたまゝ、阿久津家を訪れる一日。帰宅した礼二が空のチャリンコに目を留める件が、わざわざ設けた割に後に全く繋がつてゐない気がするのだが。例によつての、二兎を追つた弊害なのか?
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