真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「ストリッパー ~愛欲の日々~」(2005/製作:小川企画プロダクション/提供:オーピー映画/監督:小川欽也/脚本:水谷一二三/撮影:図書紀芳/照明:岩崎豊/音楽:OK企画/助監督:加藤義一/監督助手:竹洞哲也/照明助手:高柳賢/撮影助手:吉田剛毅・鶴崎直樹/協力:SHOW-UP大宮劇場/出演:水来亜矢・風間今日子・前田あきな・竹本泰志・なかみつせいじ・平川直大・岡田智宏・石動三六・山名和俊・姿良三・時祭天磨)。出演者中石動三六以降は、本篇クレジットのみ。
 残念ながら同年の十月に閉館してしまつた―因みに今作の封切りは二月―さいたま市は大宮区のストリップ小屋(劇中ではショーパブといふ扱ひ)「SHOW-UP大宮劇場」舞台上、竹内久子(水来)と先輩ストリッパー・原田悦子(風間)の百合プレイにて開巻。男女の仲にもある振付師・川井吾郎(竹本)の粘着質な性格と袋小路に陥りつつある関係とに嫌気の差してゐた久子は、パトロンの宮田正樹(なかみつ)と姿を消し、宮田に宛がはれた広尾の高級マンションでの新しい生活をスタートさせる。通院治療中ではあるものの、宮田は事故の後遺症で不能状態にあつた。そのことで若い久子の気持ちと肉体とが離れてしまふことを宮田は懼れる反面、久子自体は、ひとまづ現状に満足してゐた。セックスの最中、開かれた久子の体越しにいふことを聞かぬ自らの肉体への複雑な表情を浮かべる宮田のショットを明確に押さへてみせる辺りに、少なくともこの時点に於いては確かにらしからぬ小川欽也のヤル気は窺へた。ところがそんなある日、久子は街で悦子に目撃される。新居に乗り込まれた久子は、このことを川井らに口止めする代りに、豪華な部屋を悦子の逢瀬に貸す羽目になる。
 平川直大は、そんな訳で悦子が久子の部屋に連れ込む、若い割には専務の田口和夫。濡れ場要員の鑑ともいへる、呑気な好色漢を好演する。小川欽也映画の三番手女優にしては画期的な美人ともいへる前田あきなは、久子が居なくなつた為川井が仕方なく仕込む最中の、新人ストリッパー・小林洋子。洋子に手をつけた事後の川井によると、久子は三段締めの名器の持ち主らしい。
 中盤中弛みながらも、最初は嫌々悦子につけ込まれてゐた筈が、田口との情事をこれ見よがしに見せつけられると、一旦は押し殺しもした不能の宮田に対する肉の飢(かつ)ゑに久子が直面する展開は、らしからぬも通り越した手放しの充実を予感させ、はしたのだが、結果論からいふと予感に止まるといふか、直截には錯覚させただけに終つた。あるいは、単なる純然たる早とちりか。岡田智宏は、そんな次第で男根担当として宮田が用意する、ホストの三条雅也。バイアグラを服用した上で、三条に抱かれる久子の姿に発奮し、男性機能を取り戻すといふのが宮田の目論見であつた。
 と、そこまでは良かつたのだが。フラグ通り律儀に宮田が久子の腹の上で爆死してしまつてから以降が、小川欽也が取り戻して呉れなくとも完全に構はない本来の相に回帰する。気付くと殆ど尽きた尺に任せて、何もかにも清々しく放棄した映画は壮絶なハード・ランディングを敢行する、といふか正確にいへば墜落する。女優三本柱の粒が綺麗に揃つてはゐることと、本職はストリッパーでもあつた水来亜矢の踊りには確かに自信を持つた力強さも溢れ、とりあへずその限りに於いて裸映画としては元は取れる。さう考へる乃至は自らを偽らうと偽るまいと思ひ込ませることが出来たならば、辛うじて重たい首も縦に振れよう、所々で期待もさせておいて、最終的には何時もの小川仕事である。

 出演者中石動三六以下は、小屋にて悦子の舞台に垂涎する客の皆さん。この中で初めに登場する山名和俊は、悦子が観音様で切断したバナナの御賞味に与り、名前の仰々しさは兎も角正体は清々しく不明な時祭天磨は、板の上で張形を捻じ込ませて貰ふ。石動三六と、イコール小川欽也イコール水谷一二三な姿良三は、恐らくスタッフ勢であらう二名と共に客席におとなしく見切れるのみ。


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