真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
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福岡市在住のピンクス。ピンクスとは、ピンク映画愛好の士、を意味する造語である。
仮名遣ひは正仮名を使用。
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監禁の館 なぶり責め
竹洞哲也
/
2009年01月05日
「
監禁の館 なぶり責め
」(2008/製作:Blue Forest Film/提供:オーピー映画/監督:竹洞哲也/脚本:当方ボーカル/撮影監督:創優和/助監督:山口大輔/監督助手:新居あゆみ/撮影助手:宮永昭典/照明助手:小松麻美/音楽:與語一平/出演:沢井真帆・倖田李梨・Aya・岡田智宏・石川雄也・松浦祐也・サーモン鮭山・青山えりな)。何がどうスッ転んだものか、松浦祐也の下の名前がポスターでは“拓也”にされてしまつてゐる、きのふけふピンクに出始めた訳でもなからうに。因みに、松浦祐也のピンクデビュー作はといふと「
お仕置き家庭教師 ノーパン個人授業
」(2004/監督:新田栄/脚本:岡輝男/主演:望月梨央)の、更に前に、実はカメオで城定秀夫必殺の処女作「
味見したい人妻たち
」(2003/主演:Kaori)に顔を出す。脚本の当方ボーカルは、小松公典の飽くなき変名。
音も照明も貧弱ないはゆる今時のクラブと、木馬の置かれた殺風景な部屋。結果論からいふと、クラブ描写の惨状が、以降の全篇を象徴しもする。
仲良く喧嘩しながら奥深い山道を行く、左千夫(岡田)と喜子(倖田)。左千夫は滝の眺めの絶景な穴場に喜子を連れて行くと、その場で一撃必殺を期した求婚を申し出る。感激に一旦は綻びかけた、喜子の頬が恐怖に引き攣る。二人の前に助けを求め不意に現れた傷だらけの男・哲治(石川)と、それを追つた、真つ赤な長襦袢に手には金槌を握つた昧宮真耶(沢井)に、更に滝の上には子供サイズのチビTに短パン姿の安(松浦)兄妹。真耶の金槌に昏倒させられた左千夫は、車椅子に拘束された上山荘に監禁される。自由を奪つた左千夫に跨る真耶、一方、喜子を陵辱する安の傍らには、ある時は人間食卓である時は人間犬の、朋子(Aya)が従順に傅いてゐた。
竹洞組の山奥監禁陵辱ものといふと、二年前の決死の傑作、「
乱姦調教 牝犬たちの肉宴
」が容易に想起されよう。とはいへ今作は、「牝犬たちの肉宴」とは比ぶるのも憚られる、睡魔の波状攻撃に徳俵で屈するのが精一杯の凡作に堕してしまつた。主な敗因は、メリハリを全く欠いた演出と、起伏に乏しい展開。そして酷い目に遭ふ主人公が、青山えりな(と倖田李梨)から、岡田智宏に移行してしまつたことも大きいか。男が沢井真帆に蹂躙されたとて半ば結構なことにも思へて来る、といふ仕方もないだらしなさの以前に、異常な体験に慄いてゐる筈の表情が、吹き出すのを堪へてゐるかのやうに見えてしまふ、十三年といふ芸暦をモノともしない岡田智宏の天真爛漫さが完全に致命的。青山えりなは、クラブで目星をつけた哲治を誘惑し尺八を吹くと見せかけて、
男性自身にスタンガンをフル・コンタクトしてKOする
、といふ荒つぽいにも程がある手口で―そこで使ひ物にならなくなつてはどうするつもりだ?―安・真耶兄妹の“新しい玩具”を調達する、長姉・亜子、濡れ場も無し。前作―といふいひ方が許されるとして―の決戦兵器を最前線に投入、しなかつたのか出来なかつたものかは兎も角、主戦場での青山えりな不在も本作不発に響いたか。
尺も後半戦に突入、漸く左千夫が脱出を果たし、たものの最初に襲撃された時点で落としてゐた携帯はお亡くなりになつてしまつた為、仕方なく自力での喜子救出を果たすべく山荘に戻つたタイミングで、新たに囚はれてゐたサーモン鮭山登場。折角シャバに出て来たといふのに直ぐにこんな羽目になつてしまつた、元粗暴犯と思しき“気紛れ丈二”―劇中さう自称する―が制止する左千夫も振り切り飛び出したところで、これで物語も少しは動き出すかと期待したのも本当に、見事に束の間。丈二も秒殺で、その描写も割愛されたままに返り討たれしまふと半ば万事休す。人間雑木林も画としての貧相さが先に立ち決定力を持ち得ず、厳冬から見るからに心地良ささうな初秋頃に季節を移した風景も、そこで快適になつてしまつてどうする、といふ話に終らう。明かされる真相も“友達”を“玩具”と言ひ換へただけでロジックは全く成立せず、強ひなくとも挙げられるヒット・ポイントといへば、Ayaの人間犬ぶりくらゐといふ有様である。他は劇伴に使用される、清々しく薄いエレクトロか。真横にフォロー・スイングを取りながら、結局は真耶が上から相手の脳天を撃ち抜くのは、頓珍漢な方向に可笑しかつた。
ひとつ余計な与太を吹くと、惨劇の被害者が青山えりなから岡田智宏へ。このセンを明後日に推し進めれば、更に二年後恐ろしい体験をするのは
ソフィービー・ルミ
か。そこに一義と花子とが救出に飛び込んで来る類の、前半と後半とでまるで趣向を違(たが)へるミクストな娯楽映画というのも、それはそれで一興といへるやうな気もする。
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