真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
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福岡市在住のピンクス。ピンクスとは、ピンク映画愛好の士、を意味する造語である。
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パーフェクト・キス 濡らしてプレイバック
や行
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2024年08月07日
「
パーフェクト・キス 濡らしてプレイバック
」(2023/制作:オフィス吉行/提供:オーピー映画/脚本・監督:吉行由実/ラインプロデューサー:江尻大/撮影:小山田勝治/録音:大塚学/編集:西山秀明/助監督:河野宗彦/小道具:中津侑久/選曲:効果:うみねこ音響/整音:竹内雅乃/グラフィック:佐藤京介/スチール:本田あきら/監督助手:小林義之/撮影助手:ナカネヨシオ/ポストプロダクション:スノビッシュ・プロダクツ/仕上げ:東映ラボ・テック/出演:花音うらら・小池絵美子・広瀬結香・市川洋・安藤ヒロキオ・野間清史・河野宗彦・吉行由実・森羅万象)。
一応肩書的には女性学教授の母・山岸綾子(小池)の執拗な干渉を逃れ、念願の一人暮らしを始めた小百合(花音)が実家に荷物を取りに来る。ど初端から結論を先走ると、綾子の木乃伊取りが木乃伊作りに全力で精を出すが如き、チンコの取れたパターナリズムの源なり所以を、結局綺麗にか平然とスッ飛ばしてのける。より直截にはそれで泰然としてゐられる辺りが、浜野佐知とは根本的に異なる吉行由実のレイヤー。あるいは単なる、藪蛇な無頓着。不自然なフェミニズムを、不用意に持ち出す要が何処にも見当たらない。
本質的かも知れないけれど、閑話休題。この人は娘の意思を尊重して呉れる、義父の武雄(野間)と一緒に山岸家を離脱しようとした小百合が、叶はず綾子に捕まつた流れで、藪から棒なグリッドレイアウトのタイトル・イン。頓珍漢な意匠で木に竹を接ぎ続けるのは、吉行由実にとつて少なくともかつては盟友であつた筈の、清大と三人平成八年組の同期・荒木太郎をフィーチャした戦略では別になからうといふのは、全く以て為に吹く与太。
配役残り、安藤ヒロキオは綾子が勝手に決めた小百合の婚約者・平川。平川なのに、
何故ナオヒーロー当人を連れて来ない
。綾子の元部下とかいふ、地味な素性不詳、今は何者なのよ。小百合がロストバージンすら平川で済ませてゐる、苛烈な綾子の支配ぶりは決して地味でない。最初は瞬間的な回想に飛び込んで来る市川洋は、往時家庭教師をしてゐた小百合が唇を奪はれたのが騒動となり、結果―綾子に―教職の夢を断たれた元教へ子の水原弘樹。最終的に武雄ではなかつた、綾子がブルータルな女王様プレイを営む、相手役の奴隷がその時点では不明。二番手一回きり戦を轟然と加速する、広瀬結香と森羅万象は小百合の捌けたメンターを担ふ従姉の瑠美と、齢の離れた夫・達也。達也の造形は、煙草の銘柄風にいへばマイルド
鮫島
。矢張り多呂プロのみならずダイウッドの想起も狙つた、吉行由実なりの一人同窓会なのか、絶対違ふだろ。さ、て措き。確かに乳は太いにせよ腰周りも太ましい広瀬結香と、森羅万象によるドカーンとした濡れ場が序盤の圧巻、ドカーン。を、クライマックス前で超えてみせようとは、よもや夢にも思はなんだ。綾子に付き合はされるか振り回される買物の最中、小百合はその後進学せず、今はバーのfもとい「promis_9」を開業した水原と再会。河野宗彦と吉行由実は、その格好で家からこゝまで来たの!?と軽く引くレベルの、素頓狂なドレスで小百合が「promis_9」に来店、耳目も憚らず水原に大告白する。凡そ吉行由実以外に撮り得なささうな、無防備シークエンスのカウンター客要員。が、実際にはもう二人ゐて全部で四人。入口から見た背中の並びで、一番左が河野宗彦。右端がEJD、その隣に吉行由実。吉行由実と河野宗彦に挟まれた、既視感を覚えなくもないパーマ頭のグラサンがどうしても判らん。その他小百合と瑠美が艶話に花を咲かせる茶店のウェイターに、小百合に声をかける同性の同僚。「promis_9」最初の来店時、道中で小百合―この時は馬鹿みたいなチークを刷く―をナンパしかける輩三人組等、もう若干名フレーム内に投入される。
あの小川隆史の最初で最後作「
社宅妻 ねつとり不倫漬け
」(2009)主演を―里見瑤子のアテレコで―務めた、小池絵美子が実に十四年ぶりともなる驚愕の超復活を遂げた吉行由実新作。オフィス吉行次々作にも小池絵美子は継戦、最初のAVデビュー(2003年)からだと二十年の節目も通過した、何気な息の長さを誇る。
邂逅以前から水原が瑠美のセフレであつたりする、ありがちな爆発的か圧倒的な劇中世間の狭さが、作劇に及ぼす吉凶に関してはこの際議論を放棄する。それどころで、ないんだな。箱の中に閉ぢ込められてゐたヒロインが、晴れて籠の外に脱する。普遍性の徳俵を割り陳腐に呆気なく堕す、物語もしくは劇映画が屁より薄い反面、二人とも正真正銘のノーイントロで三番手の絡みを豪快に放り込んでのける、裸映画的にはゴリッゴリに攻撃的である印象を最も強く受けた、一旦は。実は偽装結婚であつた綾子が、武雄とは一切関係を持たない。終盤明かされる秘密で俄かに沸き起こる、ほんならあの犬誰なのよとなる原初的な謎。を足がかりに、吉行由実が遂にか出し抜けに辿り着く、辿り着いてしまつた深町章ばりの一昨日通り越して一昨年なベクトルの老成が、今作を珍作なりチン作の領域に易々と放り込む、絶対値だけは無闇にデカい明後日なハイライト。確かに構成上は、計算し尽くした妙もなくはないけれど。気を取り直しての締めを、キラッキラのガーリーガーリーに撃ち抜けば撃ち抜きれれば、まだしも吉行由実こゝにありを叩き込めたところが。そこで絶妙に攻めきれない、若干力尽きた感の否めない枯れたきらひも、老成と評した所以のひとつ。近年顕著な傾向たる、良くも悪くも円熟味の増す一作である。
備忘録< 小百合の父親は出生半年後急逝した、綾子不倫相手の教授。あと犬の正体は平川
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