真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「密通の宿 悦びに濡れた町」(2019/制作:Blue Forest Film/提供:オーピー映画/監督:竹洞哲也/脚本:当方ボーカル/撮影監督:創優和/録音:山口勉/編集:三田たけし/音楽:與語一平/整音:吉方淳二/助監督:江尻大/監督助手:島崎真人/撮影助手:高橋草太・日高紘貴/協力:深澤浩子/スチール:田中幹雄/仕上げ:東映ラボ・テック/出演:なつめ愛莉・南涼・倖田李梨・細川佳央・森羅万象・柳東史・櫻井拓也・ダーリン石川)。
 テトラポッドを背景に、細川佳央が釣り糸を垂れるロングにタイトル開巻。何某かの影響か単なる腕の問題か、さて措きその日もボウズの雲田雄太(細川)を、屋号不明な食堂の大将・鉄川哲男(森羅)が揶揄する。その頃雄太が主人の民宿「秀風荘」では、町を離れる災害支援のジブシー作業員・表野六児(櫻井)と、秀風荘を常用するデリ嬢・米川葵(なつめ)が最後のプレイ。餞別代りに雄太が弁当を寄こす、表野との別れに政治家一家に入婿、のち町長となる雄太の兄・野村現(ダーリン)が家を出た時の回想を噛ませて、葵いはく客が来るのが一大事の秀風荘に、見るからなスメルを漂はせる春木力也(柳)と蝶子(倖田)の夫婦が現れる。春木夫妻が大略を埋め、大体四十分前後で明らかとなる顛末。国からの補助金を撒き餌に、現が誘致した絶対安全を謳つた処理場が、以後も雄太や哲男は普通にその土地で暮らしてゐはする程度の重大な事故を起こし、兎も角事実上町は死ぬ。失職した現は失踪、哲男の娘で、現と不倫関係にあつた笑子(南)は、現を捜さうと往来に飛び出した瞬間車に撥ねられて命を落とす。配役残り、後頭部しか抜かれない三人の町民要員は特定不能で特に困りもしないが、沖縄に移つた葵の客である、眼鏡のデブがEJDにしては肥え過ぎてゐないか。永井卓爾に迫る勢ひの太りやうに目を疑ひ、果たしてEJDなのか否かも自信がない。
 第二十七回ピンク大賞に於いて優秀作品賞を始め、監督×脚本×主演女優×男優賞(森羅万象)を嘗めた2014年第三作「背徳の海 情炎に溺れて」(脚本:小松公典=当方ボーカル/主演:友田彩也香)の夢よもう一度と、小松公典が社会派ごつこに戯れた竹洞哲也2019年第一作。ん?話が終つてしまつてゐるやうにも思へるのは気にしないで。
 先に裸映画的な側面から触れておくと、過去パートで大概唐突に捻じ込む二番手濡れ場の木に竹を接ぎぶりにさへ目を瞑れば、ひとまづくらゐには安定する。矢張り二番手を務めた竹洞哲也前作「田園日記 アソコで暮らさう」(2018/脚本:当方ボーカル/主演:白木優子)では画期的に脱いでゐない南涼が、二戦目の正直で漸く絡みらしい絡みをこなし、なつめ愛莉は初端から、素立ちではあれ―多分―無修正の陰毛を披露する。
 片や物語の方はといふと、何かしらヤバい廃棄物の処理場が、人が住めなくなるほどではないインシデントを仕出かした。そこまでは酌めるなり語られるものの、具体的な枠組みが何一つ、本当に一ッ欠片たりとて構築されないとあつては、如何せん話の首が据わらない。その癖、得意とする―つもりの―会話劇は一向踏み込みもしないまゝに、あるいは同一円周上で相も変らず饒舌に花盛り。外堀ばかりを飾りたて、ハリボテにすら至らない展開の本丸を見やるに、未来を喪つた町を描く以前に映画自体が未来を喪つた、性懲りもなさの印象が兎にも角にも強い。土台が笑子の死に関して、インスタントな最期をぞんざいな音声情報のみで処理する、所謂―何が所謂なんだ―キキーッ死演出はこの期に及んでどうなのよ。苔生したクリシェを逆手に取る戦法もなくはなからうが、今作のシリアス嗜好もとい志向は、その手の捻くれた笑ひを呼び込むものでも求めるところでもあるまい。ついでにダーリン石川は、町長がその小汚いパーマ頭は如何なものか、弟の方が余程しつかりしてゐる。尤も、フレームに入る物理的時間に於いて、少なくとも形式的なビリング上は下位である倖田李梨にすら南涼が後塵を拝する一方、直截に片付けると無駄話に尺を割いた怪我の功名で、主演女優を愛でる分にはそこそこ以上に申し分ない。ヒールで砂浜を走り回る、何気か健康的な身体能力の高さを披露するのに加へ、スクリーン一杯になつめ愛莉が満面の笑みを輝かせるラスト・ショットが、少々無理からでもとりあへず、一篇を爽やかに締め括つてみせるのが数少ない救ひ。


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 「田園日記 アソコで暮らさう」(2018/制作:Blue Forest Film/提供:オーピー映画/監督:竹洞哲也/脚本:当方ボーカル/撮影監督:創優和/録音:山口勉/編集:三田たけし/音楽:與語一平/整音:吉方淳二/助監督:菊嶌稔章/制作応援:MASATO/スチール:阿部真也/協力:深澤浩子/仕上げ:東映ラボ・テック/出演:白木優子・南涼・横山みれい・水野直・細川佳央・折笠慎也・津田篤・イワヤケンジ)。久し振りに改めて、脚本の当方ボーカルは、小松公典の変名。それと引き続き遠出する頭数を渋るなり絞つたのか、助手部のクレジットはなし。
 美顔ローラーを転がす母・宏美(白木)と、出店を憧れるカフェの物件をノートでつらつら見る、双子の姉のあずみ(南)。に、家族団欒のアンチテーゼだとか称し、ツッ立つて虚空を凝視する引きこもりにして、当人曰く“割とレベルの高い出不精”の双子の弟・優一。一方、宏美の夫で一家の主たる長崎堅実(水野)はといへば、声のみ聞かせる嬢(多分横山みれい)相手に店舗風俗。仕事を辞めた祝ひと虚勢を張つた堅実が一拍息を呑み、スッカーと晴れた空の下に広がる畑の画にタイトル・イン。榊英雄ピンク映画参入作「オナニーシスター たぎる肉壺」(2015/脚本:三輪江一/主演:三田羽衣)でピンク初陣、二本目を撮らせて貰へるのが不思議な山本淳一の「マジカル・セックス 淫ら姫の冒険」(2018/脚本:大畑晃一・山本淳一/主演:阿部乃みく)を経て、水野直は初の本隊作。とは、いへ。如何にもピーピープラス臭い、竹洞哲也である辺りはお察し。
 早期退職の憂き目に遭つた堅実は、幼少期に見た名前も覚えてゐない海外ドラマへの過剰な思ひ入れを拗らせ、家族で僻地の農村に移住。指南役・関満雄(イワヤ)の指導を受けての、全員未経験である農業生活に入る。宏美が東京に残して来た、泡沫俳優・富士生馬(津田)との不倫なる何気でなく起爆剤も抱へる中、あずみは初見で双方向に見初めた、有力者の息子でもある農協職員・武藤圭吾(折笠)の伝(つて)で農協に事務として入り、優一も、初の労働で農業といふブルータルなM:Iに、何故かすんなり順応。サクサクあずみと武藤の結婚が決まるまで、万事順風満帆に進む。
 配役残り、首から上は日焼け防止装備で覆はれた農村婦人部二名は、どうやつても特定不能。横山みれいは優一を手懐けようと、堅実が遥かエリア外の彼方から呼び寄せた、ディスコミニュケーションを爆裂させるデリ嬢・マイト、ハングマンのリーダーではない。最終盤に続々投入される内トラ部隊、菊嶌稔章が巨漢の刑事で、阿部真也と深澤浩子が新たなる移住者夫妻。
 武藤の軽トラが八戸ナンバーである点―逆に、それ以外に地名を匂はせさへする情報は一切見当たらない―も見るに、超絶近所の青森県三戸郡五戸町近辺で撮影してゐた前作と、二本撮りしたとしか思へない竹洞哲也2018年第五作。二作の封切り間隔も四週間と、極端に短い。それと折笠慎也のカントリーな口跡が矢鱈達者に聞こえたのは、この人ネイティブなんだ。
 二番手の濡れ場が極端に、脱いでゐたか不安になるほど少ない不満―乳はまだしも、尻すら見せてゐない―さへさて措けば、裸映画的にはまあまあ。さて措けぬとする南涼クラスタの激憤に関しては、当然是認する。折角綺麗に成就しかけた長崎家の幸福を、開墾一家があくまで父親が中心となつて諸々の困難に立ち向かひ克服する。パターナリズム丸出しの手前勝手なファンタジーに囚はれた堅実が見事爆砕する展開は、家族各々のツッコミも的確に、ひとまづ酌める。尤も、ここから先は殆ど生理的な好きヘイトにも左右されよう点は一応恐縮ながら、ワーキャー姦しいばかりの水野直が、兄貴程度ならばまだしも大黒柱にはそもそも程遠く、如何せん厳しい。拭ひ難い年恰好の違和感も含めるとなほさら、大本命?なかみつせいじあるいは、吉田祐健なり小林節彦の役であつたのではなからうか。もしくは迸らせる狂気の一点突破で、北千住ひろし×羽田勝博のギョロ目部、この人等が現役なのかどうかは甚だか結構怪しいけれど。

 とこ、ろで。長崎家一同の農作業初日、皆で関の下へ向かはうかとしたところで、画面奥の遠目に見切れる人影はあれは目の錯覚か何かか?一般映画に色目を使つた弊害だか何だか知らないが、回収されぬサムシングに一々立ち止まらざるを得ないのは、実に煩はしい。


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 「大人の同級生 させ子と初恋」(2018/制作:Blue Forest Film/提供:オーピー映画/監督:竹洞哲也/脚本:深澤浩子/撮影監督:創優和/録音:山口勉/編集:三田たけし/音楽:與語一平/整音:吉方淳二/助監督:菊嶌稔章/制作応援:MASATO/スチール:阿部真也/仕上げ:東映ラボ・テック/出演:なつめ愛莉・香山亜衣・加藤ツバキ・細川佳央・津田篤・折笠慎也・イワヤケンジ)。遠出する頭数を渋るなり絞つたのか、助手部のクレジットはなし。
 もうバービー人形ばりにスタイルのいい主演女優が田舎道、キャリーバッグを引くフルショットにサクッとタイトル開巻。都落ちした西原紅子(なつめ)がほてほて向かつた先は、青森県三戸郡五戸町の床屋「イトウ理容」(旧倉石村)。紅子が十六連射感覚でチャイムを乱打しても出て来ない家人、紅子の姉・碧(加藤)と夫の中澤慎介(津田)は、風呂桶の中大絶賛背面立位の真最中。伊藤とか伊東にしておけば別にいいぢやんといふのと、何某か所以の有無は知らないが十一月初頭に封切られた今作で、薔薇族込みでも2018年漸く初舞台となる津田篤が、経年劣化に抗へず大分体が緩んで来た。ピンクに出る以上絡みもあるのだから、抗つて欲しい。千葉真一曰く、肉体は俳優の言葉。高校卒業後十年、東京で読者モデルとして浮名を流す紅子は、同棲する劇団員が妊娠させた他の女(二人とも一切登場せず)と結婚するとかいふ、無体か雑な理由で住居を放逐。勢ひで仕事も辞め出戻つたものの、大量の荷物を着払ひで被弾させた実家からも、塩を撒かれて来たものだつた。どちらが本業なのか、姉夫婦の葱畑を手伝はされる紅子は、アイスを買ひに行つてマッチを買つて来る―劇中当地に初めて出来た―コンビニの表で、こちらも母の死を機に就職した仙台から先月帰郷した、高校の元カレ・阿久津礼二(折笠)と再会する。
 配役残りイワヤケンジは、妻の死後阿久津家を一人で守る格好になりかけた、礼二の父・賢二。礼二の上に兄貴が少なくとも一人はゐるとなると、なほさら齢が近すぎる―公称十七歳差―違和感は、直截な見た目からも否めない。ワン・カットだけ見切れる妻の遺影は、流石に遠すぎてあれはスクリーン・サイズでも識別不能だらう。香山亜衣は、カレーをタッパに入れて阿久津家に度々現れる謂れがよく判らない、紅子・礼二と同級生の小暮すみれ、旧姓広岡。細川佳央は、矢張り紅子らと同級生の、すみれ夫・弘嗣。界隈最強に土の匂ひの似合ふ男、広瀬寛巳の出番は今回残念ながらなく。
 竹洞哲也2018年第四作は、新たなる危機の到来を思はせかねない静かな問題作。紅子主導の限りなく据膳感覚で、サックサク焼けぼつくひに火を点ける紅子と礼二の周囲を、すみれがうじうじうろうろする。腹をたてるほどの、内容では必ずしもない、ものの。どうせOPP+に色目を使つてゐるにしては、平板な展開も兎も角、膨らませる余地どころか、本筋から漠然とした稀薄な物語が、殆ど余計な心配と同義の別の意味でミステリアス。挙句すみれは兎も角、R18版中終に礼二の口からすみれの名前は聞かれず終ひの上で、すみれが弘嗣と離婚し紅子は身を引き、すみれと礼二がくつゝく人を喰つた着地点には吃驚した。それでも七十分の尺があるにも関らず、高校時代の回想パートも丸々オミットしておいて、木に竹を接ぐ気でなければその結末は如何せん呑み込むに辛い。元来浮草の紅子が身を引くのも何処に流れて行くのも兎も角、弘嗣がすみれと別れるのは流石に些かハードルが高くはあるまいか。細川佳央が二度目に撃ち抜く、知つてゐた表情は数少なさを差し引かずとも、ドラマ上最強の見所ではあつたが。酔ひちくれ寝てゐたところを、嬌声で起こされる。なつめ愛莉と折笠慎也の絡みが完遂に至る瞬間に、イワヤケンジのどうでもいいカットを捻じ込む正気を疑ふ極大悪手は到底度し難いとして、あとは殊に三番手の量的不足と、二番手がより存在感を示す若干失した平衡を除けば、裸映画的にはぼちぼち寄りのそこそこ。ここは恐らく演出の成果で陽陰のキマッたビリング頭二人を擁し、各々男優部をフレーム外に排したショットは決して悪くない。さうは、いへ。加藤義一が若御大化しかねなかつた、絶不調の谷間を目出度く脱したのも束の間。話を戻すが霞よりも薄い物語と、あまりにぞんざいで仰天させられる着地点。要は、竹洞哲也が師匠にして大御大・小林悟の作風を現代風に幾分リファインした、新御大爆誕の悪寒もとい予感に、我々は慄かなくてはならない時が来てゐるのかも知れない。

 紅子が膣トレ用のジョイトイを挿れたまゝ、阿久津家を訪れる一日。帰宅した礼二が空のチャリンコに目を留める件が、わざわざ設けた割に後に全く繋がつてゐない気がするのだが。例によつての、二兎を追つた弊害なのか?


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 「人情フェロモン もち肌わしづかみ」(2018/制作:Blue Forest Film/提供:オーピー映画/監督:竹洞哲也/脚本:当方ボーカル/撮影監督:創優和/録音:山口勉/編集:三田たけし/音楽:與語一平/整音:吉方淳二/助監督:江尻大/監督助手:村田剛志/撮影助手:比留間遼・赤羽一真/スチール:阿部真也/仕上げ:東映ラボ・テック/協力:スナックRiz、スナック マ・ヤン、スナック マダムシルク/出演:友田彩也香・加藤ツバキ・工藤翔子・山本宗介・イワヤケンジ・安藤ヒロキオ・ダーリン石川・東中野リズ子・森羅万象)。
 アッサリしたフォントでスタイリッシュなタイトル開巻、日本語を解さない者に見せたなら、凡そ商業ポルノグラフィーとは思はないのではあるまいか。
 JR東中野駅東口を出た主観カメラが、徒歩すぐの飲食店街「東中野ムーンロード」(正式名称:東中野駅前飲食店会/ex.飲食店街住吉小路)入口近くのスナック「マ・ヤン」に。カウンターに東仙(友田)とママの丸高歌子(工藤)が入り、常連客の桜田(森羅)らで賑はふ店内、雑誌の取材が入つた体。加藤義一2017年第二作「愛憎の嵐 引き裂かれた白下着」(しなりお:筆鬼一/主演:佐倉絆)のナレーターを除けば、工藤翔子(歌舞伎町の居酒屋『寺子屋』女将)が案外空いてて同じく加藤義一2015年第二作「巨乳狩人 幻妖の微笑」(脚本:筆鬼一・加藤義一/主演:めぐり)以来。それと、我等が旗艦館前田有楽は画面が暗いのが弱点につき断定はしかねるが、ここで森羅万象の隣に座つてゐるのが竹洞哲也に見えたのは気の所為か。その日の「マ・ヤン」が閉店したのは、完全に日も上つた翌朝。お姉さん的な幼馴染で、亡夫の遺した店を守りつつ、早朝バイトに向かふ長田美鈴(加藤)を見送り、桜田と別れた辿は、同世代の幼馴染、なのに、今は町の地上げの片棒を担ぐ竹原馨(山本)と交錯する。端からオッカナイ剣幕の仙に、煙草のポイ捨てを咎められた薫は、「ゴミ箱だろ、こんな町」。櫛の歯を欠く再開発と桜並木の伐採が、界隈を揺らしてゐた。
 配役残り、イワヤケンジは辿の夫・秀、官能小説家か何か。小林悟の未亡人かつ、ゆかりの店「リズ」を継いだ端唄歌手・雅仙よしの変名である東中野リズ子は、ムーンロード外堀担当のほぼほぼハーセルフ、友田彩也香とは二度目の共演。安藤ヒロキオは、ナリはラフながら馨らよりも大手の地上げ屋尖兵・轟真澄。台詞の与へられるダーリン石川(新宿ゴールデン街町会長)のほか、「マ・ヤン」客要員がノンクレジットで十人前後投入される。
 秀が脱稿した画面越し、OPP+タイトル「ムーンロードセレナーデ」が本篇ラストの、竹洞哲也2018年第三作。東中野のアクチュアリティーを主軸に据ゑた正攻法の人情劇は、腹が立たない程度には観てゐられる。余計な御託の多さをさて措けば主演女優は濡れ場の手数を自然数最小に稼ぎ、二番手三番手はドラマの下駄を履く。徳俵一杯一杯で、裸映画に辛うじて踏み止まりもする。マダムシルク相手に、桜田がパラノーマルな飛び道具の火蓋を切るカットは、掛け値のない出来映えを撃ち抜く。さうは、いへ。友田彩也香の厚塗りに胸焼けするのはパーソナルな好みの範疇で片付けるとしても、三本柱各々に見せ場を振つたのが却つて禍してか、小さく纏まつた展開は特段面白くも何ともない。今回この期に初めて辿り着いた、竹洞哲也×当方ボーカル=小松公典コンビ最大の諸刃の剣が、名あり登場人物の全てが日常会話に於いて―しかも最終的には同種の―レトリックを駆使する世界に対する違和感。東中野はどんな―人間ばかりが住む―町なんだ、ブランキー・ジェット・シティか。無駄口で薄めるくらゐなら女の裸をもつとひたすらに撮らんかと、大御大には弟子の枕元に立つて欲しい。御当地映画といつたところで所詮買取である以上、映画の出来は最早さて措き、世間一般のやうに旨い汁だけ吸ひ逃げられる訳でもなからう。オーラスで混濁するものの、森羅万象が一旦は撃ち抜くファンタジーで最低限形になつてゐなくもないにせよ、加藤ツバキの前戦「弱腰OL 控へめな腰使ひ」(2016/主演:辰巳ゆい)同様ナッシングレフトな一作。いまおかしんじや城定秀夫のやうに、殆ど変らない―らしい―ストロングスタイルで挑むならばまだしも。全く別物とさへ伝へ聞く、下手にプラス戦線に色目を使つた結果、R18版はピンクス強硬派からそつぽを向かれ、反面R15+版もR15+版で城定秀夫はおろか、横山翔一が商業デビュー作で辿り着いた単騎公開にも手が届かない。要は、ものの見事に二兎を得られないでゐる現状を、全体当人達なりオーピーは如何に見るのか。


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 「青春のさゝくれ 不器用な舌使ひ」(2018/制作:Blue Forest Film/提供:オーピー映画/監督:竹洞哲也/脚本:深澤浩子/撮影監督:創優和/録音:大塚学/編集:三田たけし/音楽:與語一平/整音:吉方淳二/助監督:江尻大/監督助手:増田秀郎/撮影助手:武藤成美/スチール:阿部真也/仕上げ:東映ラボ・テック/出演:川上奈々美・竹内真琴・美泉咲・細川佳央・櫻井拓也・岡田貴寛・安藤ヒロキオ)。
 公衆トイレの手洗ひで手を洗つた川上奈々美が、顔も拭ひ、鏡で笑顔の練習をする。左から右に流れる、電車の車窓と思しき田舎の風景にタイトル・イン。作りは丁寧だが、タイトルバックの訴求力は薄い。逆に、あへてプルーンな画を狙つたのかな。
 大学生の門脇大智(細川)が、海に近い片田舎の叔母宅を訪ねる。ところが叔母の伊藤小夜子(美泉)は、配偶者ではない門脇の見知らぬ男とニッコニコ親し気にしてゐた。出入りさせてゐる便利屋の、上田義明(安藤)だといふ。大した情報量でもない割に、編集がグッチャグチャで時制が無駄に混濁する序盤を仕方がないのでザックリ整理すると、門脇は恋人の沢村麻利絵(竹内)を他の男(岡田)に寝取られ、恐らく大学を退学まではせず一時的に東京を離れる。消えた門脇を追ひ、後輩の富山千夏(川上)も片田舎に現れ、たまたま帰りの上田に道を教はり伊藤家に辿り着く。一年前の矢張り冬、サークルかゼミか知らんけど、兎も角何某かの合宿で千夏と門脇はそこそこデカい伊藤家を利用。場に馴染めず別室に一人でゐた千夏を、門脇は酔ひ醒ましがてら散歩に誘ひ出す。冬の海を見に行く―門脇的には単なるその場の口―約束をし繋いで呉れた手を、千夏は健気か頑なに覚えてゐた。その件、セミモノクロの色調から、二人の手が繋がれた瞬間フルカラーの色彩がフワッと火を噴くカットは、竹洞哲也らしい繊細なパンチ。散発的に上田を連れ込み絡みの回数を稼ぐ以外には、昼間どころか夜も小夜子―に限らず姿形を一切見せない小夜子の夫も―が一体全体何処で何をしてゐるのか。といふ初歩的だか根本的な謎は豪快にスッ飛ばした上で、門脇は帰れといふのに帰らない千夏を、叔母に見つからぬやう一室にほぼほぼ軟禁する。
 甥と叔母設定の細川佳央と美泉咲が、実年齢は同い年―母方の祖父母が頑張るかやらかしてゐれば、決してなくもない話ではある―といふ地味なツッコミ処はさて措くにしても、通り過ぎられないのが麻利絵役の竹内真琴。三月末で引退した竹内真琴にとつて、黄金週間前封切りの今作が可憐に初土俵を踏んだ国沢実2015年第二作「スケベ研究室 絶倫強化計画」(脚本:高橋祐太)、ビリングに疑問を感じさせるほどの超活躍で今世紀最強の痴漢電車を支へた「痴漢電車 マン淫夢ごこち」(2016/監督・脚本:城定秀夫)に続く三作目で、残念ながらラスト・ピンク。と、いひたい気持ちではあつたのだが。全般的にギャルいのみならず背中も汚く、劣化とかぞんざいな単語を使ひたくはないものの、今回映つてゐたのは、少なくとも当サイトが知る竹内真琴ではなかつた。
 配役残り櫻井拓也は、上田が出会つた翌日からのアルバイトを一方的に決めた門脇を、迎へに来る便利屋の従業員・御木本伸介。千夏に、脊髄で折り返した興味を持つ。
 OPP+戦線に於いて山内大輔と無双する、竹洞哲也2018年第二作。原題兼、予告が何故か門脇目線のR15版題が「つないだ手をはなして」で、尺は85分。画期的にブツ切つたラストが、「つな手」も観た方の評によると起承転結を転で端折つた、いはば竹洞哲也が師匠の大御大・小林悟の荒業―兎に角多過ぎて代表例を絞り難いが、とりあへず「小林ひとみの快楽熟女とろける」(1997/脚本:五代暁子)―を継承した格好の代物らしく、さうなるとベルの音に釣られて「小屋に木戸銭落とした客ナメてんのか、この野郎!」とキレる筋合にもあらうところが、案外満更でもない辺りが映画の妙。一度手を繋いだきりのメモリーに文字通りの捨て身で突つ込んで来る千夏と、小夜子ロスも癒えぬまゝ、さういふ晩熟の後輩が鬱陶しくて鬱陶しくてしやうがない門脇。そんな二人による、「何でもいふこと聞きます」とマキシマムに膳を据ゑる千夏を、現に門脇は恣に嬲る。今時にタグ付けするところの肉便器ものは低劣な嗜虐心を激弾きする川上奈々美の持ちキャラにも加速され、細川佳央に対しこの娘に手を上げようものならキルるぞ小僧!とかいふスリリングまで含め、必ずしも悪くない。女に捨てられた御木本の、それはそれとしてそれなりの絶望を千夏が受け止める件も、カッコつけずにもう少し引いて乳尻抜けよといふ不満さへ強ひて呑み込むならば、ピンク映画ならではの名シーン。ついでに竹内真琴はいつそ忘れてしまふとボローンと熟れた、美泉咲のオッパイは激しく悩ましい。事実上ともに濡れ場要員につき、主演以外の番手に意味はない。ブツ切られたラストもラストでショット単体の完成度は高く、画力(ゑぢから)の一点突破で幾許かの一皮剝けた余韻は残す。無碍に処断する議論はひとつの議論として成立し得るにせよ、それもそれで忍びないなかなか複雑な一作である。


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 「おつとり姉さん 恥骨で誘ふ」(2018/制作:Blue Forest Film/提供:オーピー映画/監督:竹洞哲也/脚本:当方ボーカル/撮影監督:創優和/録音:山口勉/編集:三田たけし/音楽:與語一平/整音:吉方淳二/助監督:江尻大/監督助手:平田圭一/撮影助手:酒村多緒・小山樹理/特殊造形:土肥良成/スチール:阿部真也/仕上げ:東映ラボ・テック/協力:恩田真弓・深澤浩子/出演:神納花・しじみ・白木優子・飯田浩次郎・世志男・櫻井拓也・イワヤケンジ・森羅万象)。
 山ん中のバス停にタイトル・イン、二時間に一本のバスを待ちがてら、坐骨神経痛に苦悶する遠藤一男(飯田)が、齢の離れた妻・愛子(神納花/ex.管野しずか)を木々に紛れて後ろから突く。痛いのに不自然といへば不自然だが、そこは開巻に絡みを叩き込まうとする、遮二無二な誠意を酌んで無粋なツッコミは呑み込むべきだ。飯田浩次郎の逆マグロはさて措き、何だかんだの末に完遂。茂みの中に潜んでゐた、通称か蔑称アパオこと、一男の幼馴染で白痴の麻田朝男(森羅)に驚いた二人は、バスを逃す。巨漢をプリミティブに包んだ森羅万象のエプロンもとい裸オーバーオールに、琴線が切れるくらゐ揺さぶられる薔薇クラスタの御仁もゐるのかな?足が痛くて長椅子に横たはる一男と、長男の嫁にしてはもう少し堂々としてゐても罰の当たらない愛子以下、寿司職人―但し店は潰した―の次男・二郎(世志男)と、体のラインに張りついたワンピがエロい妻の踊(白木)に、茸オタクの息子・長生(櫻井)。長女兼末妹の里奈(しじみ/この期にex.持田茜)が、母・トメ(何もかも一切登場せず)の死去に伴ひ揃つた遠藤家。アパオを伴ひ現れた弁護士の本村武也(イワヤ)は、“一部”の範囲は任意に設定し得る遺産の一部を、晩年世話をして呉れたアパオに。残り全てをトメが一番大切にしてゐるものを見つけた者一人に相続させるとかする、漠然とした飛躍が高い以前に、骨肉に争へといはんばかりの遺言を家族に告げる。未だ離婚には至らないものの、旦那に放置された結果ありがちな宗教に流れたと思しき里奈の立ち位置に関しては、例によつて小ネタ過多の始終の中、タイムライン感覚で情報が流れ過ぎて行く。内トラ一人配役は残らないが、土肥良成の仕事は、長生が見つけるLGBTなカラーリングの茸か。
 OPP+が大絶賛お祭り中の、竹洞哲也2018年第一作。ところでプラスの内訳が、竹洞哲也と山内大輔が六本づつ。外様五本に、ギネス級の電撃作戦を敢行しオープニングに飛び込んで来た城定秀夫。何だかなあといふラインナップでしかない、竹洞哲也&山内大輔による、ビッグショーならぬふたりの映画祭か。今作のプラス題が、「遠藤家遺産戦争」。訴求力に欠くニュートラルな題名にも思へるのは兎も角、尺が驚愕の98分!半時間違ふとなると何処までピンク版は削り込まれてゐるのかと、事前にはこれまでも踏まへ匙を投げかけたけれど、長生のオタクとしての未熟を除けば諸々のギミックも的確に配し、終盤は流石に粗さが際立つにせよ一応お話は成立する。俳優部に開いた唯一にして最大の大穴が、男優部の分際で、エクセスライクな何処から連れて来た感を爆裂させる飯田浩次郎。そもそもの魅力と表情とに激しく欠きながらも、ダーリン石川並の口跡は、良くも悪くも小松公典らしい歯止めの利かない会話劇を最低限繋ぐ。といつて特別に心を掴まれるほど面白くは全くないが、とまれ三本柱の濡れ場はひとまづ十全に見せる。その裸映画を決して疎かにはしない姿勢は、一般映画に浮気したプラス戦線の中では一際際立つ。何だか屈折したといふか何といふか、物凄くレベルの低い議論をしてゐるやうな気がして来た。


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 「まぶしい情愛 抜かないで…」(2017/制作:Blue Forest Film/提供:オーピー映画/監督:竹洞哲也/脚本:当方ボーカル・深澤浩子/撮影監督:創優和/録音:山口勉・廣木邦人/編集:中村和樹/音楽:與語一平/整音:吉方淳二/助監督:江尻大/監督助手:平田圭一/撮影助手:酒村多緒・杉田陽介・木村風志郎・佐藤京郎/スチール:阿部真也/仕上げ:東映ラボ・テック/協力:恩田真弓・橘秀樹・佐野彰則・深澤幸太・松井理子/出演:優梨まいな・那波隆史・若月まりあ・工藤巧真・白木優子・森羅万象)。橘秀樹・深澤幸太に加へ、津田篤と吉田俊大がポスターのみ出演者。
 ライターで火を点けた線香の、炎を手で扇ぎ消してタイトル・イン。夫(深澤幸太)が殺人を犯した直後に自殺した藤沢美奈子(白木)、後述する前篇では語られなかつたバーテンの修行時代、恋人のナカダユウコ(口頭に上る名前しか登場せず)を学生運動の内ゲバで喪つた過去を実は持つ木村亘(那波)。ここは正直驚いたのが、前篇ラストで半同棲相手の添野一馬(吉田俊大)が交通事故死してゐた、前回ヒロインの木本夏(若月)。それ判るかなあ、例によつての節穴自慢ならば面目ない限り。閑話休題、娘にして夏の母親(影も形も見せない山口真里)に、この人も交通事故で先立たれた仁志(森羅)。そして夏とは大学の同級生で、木村が経営するバー「バイオレット」でアルバイト中、出会つた常連客の岡田将也(津田篤)と交際。するも痴情のもつれから、眼前で服毒死された藤野乃亜(優梨)。銘々の来し方なり辛気臭い心情を、2010年の新春痴漢電車「痴漢電車 夢指で尻めぐり」(監督:加藤義一/脚本:近藤力=当方ボーカル=小松公典/主演:かすみ果穂)を脊髄で折り返して彷彿させる、言葉尻を次の話者が引き継ぐ、輪唱形式のモノローグで綴る。以前からあつた映画用語で、輪唱形式の有無はさて措き、さういふ語り乃至は回想で過去を描写する手法を、ナレーションとモンタージュの合成語でナラタージュといふらしい。如何にもシャレオツな響きの用語ではあるが、別に標準的なメソッドで、新語を捻り出す特段の意味はないやうにも思へる。再度閑話休題、周囲の目に耐へかね引越した美奈子は、妻とも死別し娘の死以来一人暮らしの仁志と、家事代行の仕事を通して出会ふ。ところで優梨まいなの濡れ場は、話を聞くに―岡田が乃亜に筆卸して貰つたのでなければ―岡田と付き合ひ始める時点では既に、木村と時折関係を持つてゐた形で処理される。
 配役残り工藤巧真は、少なくとも通つてゐるやうには凡そ見えない大学を、乃亜ともども休学してゐるのか退学したのかは完全に等閑視して済まされる夏が、再会する中学の同級生・西寺勇夫。勇夫に工場を継がせる旨を詫びる母親の声は山口真里とされつつ、あれ山口真里の声か?何処かに見切れてゐるとしたらロストした、松井理子なのかも。橘秀樹は二人で歩く夏と勇夫がミーツする、佐野彰則と政治ビラを撒く大学生。勇夫が活動に興味を示す一幕の跨ぎ際に、佐野彰則が「この国を潰しませう」だとか出鱈目なシャウトを放り込んでゐる、荒木太郎の昭和天皇映画よりも問題だろ。
 前作「ヤリ頃女子大生 強がりな乳房」(主演:若月まりあ)と全く連続した二部作を成す、竹洞哲也2017年第五作。漫然としかしてゐなかつた序盤中盤から、「ヤリ乳」が終盤結構持ち直して後篇に期待を繋げた、ものの。とりあへず優梨まいなと若月まりあの独白が壊滅的で、殊に若月まりあは口腔に問題を抱へてゐるやうにもパッと見見えない割に、呂律さへ回らない暴ならぬ大迷走、趣向を根底から木端微塵に爆砕する。重ねて対尺比で相変らず引き算知らずの情報量を詰め込み過ぎたのか、那波隆史は兎も角、森羅万象までもが明らかに性急なリズムの中苦戦を強ひられる始末。最終的に勇夫と別れた夏は出奔、乃亜は木村から受け取つたユウコの無駄にキナ臭い遺品を、岡田が農薬を呷つた歩道橋から空に捨てる。仁志との殆ど生活に近い関係に辿り着いた美奈子が、一人―あるいは二人で―昨日までとは違ふ明日に向かひ始める反面、夏と乃亜の物語は、欠片たりとて何某かの着地点に行き着くでなく、宙ぶらりんのまゝ放置される。父親の遺品である、動かなくなつたブリキ製のロボットを直して呉れた、勇夫の機械油に塗れた手に触れた瞬間、夏が「動きだした」と人生の再起動を確信するカット。美奈子との一旦の別れを経て、久し振りにコンビニざるそばを口にした仁志は、ボソリと「何の味もしなかつた」。確かに映画が力を持つ、あるいは持ちかける瞬間も所々ないにせよ、結局何も残らないある意味清々しい空疎の筈なのに、七十分を見せきるのが逆の意味で凄い。船頭の多さが禍したのか、泥船が全速力で白夜の樹海に突入するが如きちんぷんかんぷん作。これで女の裸にもう少し―どころでなく―時間を割いてゐれば、まだしも立つ瀬があつたものを。竹洞哲也にしても小松公典にしても、下手な色気が邪魔してストイックになりきれない。竹洞哲也前々々作「熟女ヴァージン 揉まれて港町」(主演:白木優子)に於いてやつとの思ひで初日を出したのも束の間、深澤浩子の苦戦もこの分だと依然続きさうだ。

 とこ、ろで。ちんこ股コレ、もといこんちこれまた。例によつてOPP+版では、夏と乃亜にも十全に形がつくだとかいはんぢやろな、模造刀振り回してスクリーンに穴開けんぞ   >やめれ


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 「ヤリ頃女子大生 強がりな乳房」(2017/制作:Blue Forest Film/提供:オーピー映画/監督:竹洞哲也/脚本:当方ボーカル/撮影監督:創優和/録音:山口勉・廣木邦人/編集:三田たけし/音楽:與語一平/整音:吉方淳二/助監督:江尻大/監督助手:平田圭一/撮影助手:酒村多緒・杉田陽介・木村風志郎・佐藤京郎/スチール:阿部真也/仕上げ:東映ラボ・テック/協力:恩田真弓/出演:若月まりあ・優梨まいな・石川優実・山口真里・森羅万象・吉田俊大・櫻井拓也・山本宗介・可児正光・津田篤・細川佳央・青山卓矢・那波隆史)。出演者中、細川佳央と青山卓矢は本篇クレジットのみ。逆に後述する後篇にしか出て来ない工藤巧馬が、ポスターには載る。
 ライン画面にタイトル開巻、デモ参加を促すラインと、女同士による主演女優の彼氏に関する遣り取り音声。何処そこ大学の政治サークル部室、部長の増宮春来(山本)と蔵野公正(可児)に、件のストーカー彼氏・中村修吾(櫻井)の顔見せ噛ませて、蔵野と寝た木本夏(若月)に、友人の藤野乃亜(優梨)は至極全うに異を唱へる。サークル活動にはてんで参加しない割に、夏が増宮とも寝る一方、乃亜はバイト先であるバーの常連客・岡田将也(津田)と付き合ひ始める。
 配役残り那波隆史が、非ステドの乃亜バイト先マスター・木村亘。森羅万象は、母親と折り合ひが悪く、滅多に家に帰らない夏を温かく見守る祖父・仁志。挨拶程度の松岡邦彦フィルム最終作「つはものどもの夢のあと 剥き出しセックス、そして…性愛」(2012/脚本:今西守・関谷和樹/主演:後藤リサ)、榊英雄ピンク映画第三作「裸の劇団 いきり立つ欲望」(2016/脚本:三輪江一/主演:水城りの)に続いてと地味にしぶとく戦績を積み重ねる―若月まりあは竹洞哲也2016年第二作「大人志願 恥ぢらひの発情」(脚本:小山侑子)以来のピンク第二戦で、二番手は初陣―石川優実は、増宮の実は厄介な彼女・矢沢絵里。不脱の山口真里が、娘に対し禁句中の禁句を平然と連呼する母親・節子。細川佳央は夜の繁華街、ビラを撒く増宮をボコるウェーイ、背格好がEJDには見えない連れは不明。青山卓矢は、絵里の輪をかけて厄介な兄貴。そしてビリングの高さが的確な吉田俊大が、双方媒介人を務める形で夏とミーツする添野一馬、職業は一般映画の助監督。オッサンに片足突つ込んだ演出部に女子大生の彼女が出来る、健気な夢物語を偶さか花咲かせる。
 三週間後封切りの「まぶしい情愛 抜かないで…」(深澤浩子との共同脚本/主演は優梨まいなにスライド?)と、二部作を成す竹洞哲也2017年第四作。今時年五本となると、エース格のナベ、さうでなくとも関根和美をもが本数を減らす中、相変らずの重用ぶりではある。何はともあれ裸映画的には、兎にも角にも夏が誰彼構はずヤッてヤッてヤリ倒す、ものの。何れも淡泊な上に最中もゴチャゴチャ余計な能書が多く、濡れ場は数こそ打てど当たらない。寧ろ、優梨まいなの着衣でも目を引くオッパイのジャスティスに下賤な琴線を激弾きされざるを得ないのは、哀しい男の性か、知らんがな(´・ω・`)。劇映画的にも昨今の異常な世相に居た堪れなくなる気持ちならば酌めぬではないにせよ、藪から棒な祭りの季節感に展開上の必然性は殆どなく、何かしたいのかも知れないが、何がしたいのかは判らない。絵里兄貴が夏を狙ふかが如き不穏なカットなんぞは、その癖以降に全く繋がりもせず―矢沢兄妹は後篇には出て来ない模様―となると、相ッ変らず小屋の客をナメたプラス路線の皺寄せか?だなどとついつい邪推のひとつもしてしまふ。例によつて漫然と茶も濁さないのかと、思ひきや。天候にも恵まれた空に抜ける格好のロケーションの下、岡田が毒を呷るショッキングを山といふか谷底に、ドミノ倒し式にほぼ全員不幸になつて行く終盤は猛加速。増宮との結婚を誇る絵里に、夏が据わつた視線を向ける辺りから若月まりあが漸く輝き始め、「ごめんねだと」と、仁志が娘の最期の言葉をザクッと投げる件では、森羅万象一撃必殺の重低音がバクチクする。依然前篇全篇に首を縦に振るには遠いまゝに、後篇で大化けした好例も胸を過らぬではなく、ロビーにポスターが貼られてゐたところを見るに、来月来る「まぶ純」を一旦待ちたい。ポップ・カルチャーの極北、あるいは一期一会を宗とする量産型娯楽映画にあつて、さういふ形を採ること自体、本来無条件に肯ずるものでもないのだけれど。


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 「疑心乱交 闇夜にうごめく雌尻」(2017/制作:Blue Forest Film/提供:オーピー映画/監督:竹洞哲也/脚本:当方ボーカル/撮影監督:創優和/録音:山口勉/編集:三田たけし/音楽:與語一平/整音:吉田淳/助監督:江尻大/監督助手:市原博文/撮影助手:佐藤雅人・三輪亮達/スチール:富山龍太郎/仕上げ:東映ラボ・テック/協力:嬬恋フィルムコミッション/出演:辰巳ゆい・青山はな・黒木歩・世志男・吉田俊大・山本宗介・森羅万象・竹本泰志)。編集の三田たけしと整音の吉田淳が目見田健と吉方淳二のトラップではあるまいなと勘繰つたものだが、ポスター共々そのまゝクレジットされてゐた。
 意表を突く、茶碗に盛られた御飯にタイトル・イン。そこだけ切り取ると、ホームドラマを通り越してCMのカットにも見える。松田宏樹(竹本)は内縁の妻・松宮ゆきこ(黒木)が作つた茶漬けをサラサラッと入れると、求めに応じ準夫婦生活もサクサクッと片付けた上で、如何にも堅気ではない風情を匂はせ出撃する。潔く一幕限りで御役御免の純正濡れ場三番手が、開巻に飛び込んで来る奇襲が鮮やかに決まる点は兎も角、松田フェイバリットの梅―茶漬け―を切らしてゐた云々の件は別にも何もまるで意味がない、相ッ変らず引き算が苦手なやうだ。
 明けて大仰な男の悲鳴と、林道を飛ばす車。ハンドルを握るのは松田で、助手席には菅野昭二(世志男)。菅野の後ろの山中慎吾(吉田)が撃たれた左太股から大量に出血するとともにワーギャー呻き、運転席後部座席の永野みゆき(青山)はクールに手を拱く。四人は表向きの顔のラーメン屋大将が超絶サマになる、劇中呼称で“仕切り屋”の田中国男(森羅)に集められた、ヤマを踏む毎に顔と名前を変へる面倒臭い犯罪のプロフェッショナル。今回の仕事は、実は松田の故郷で行はれる川野組の取引を襲撃しての、代金の奪取。ところがその場に川野組でも取引相手でもない第三の勢力が現れ、金は手にしたものの山中が深手を負ふ。誰が糸を引いてゐるのか判らない以上下手には動けず、アテがないなら作ると菅野はたまたま見かけた一人で歩く御子柴かずみ(辰巳)を拉致。かずみが管理人として月に何度か訪れる、山中の保養所に四人は一旦転がり込む。
 俳優部残り、吉田俊大の所作は兎も角メタメタの発声に頭を抱へるにつけ、配役逆でよくね?といふ思ひも強い現代ピンク男優部最後の希望・我等が山宗こと山本宗介は、菅野が修羅場の勢ひで弾除けがてら攫つて来た、川野組組長のドラ息子・川野巧巳。男前すぎるのが竹本泰志を引き立たせる画面(ゑづら)の都合上逆に忌避されたのか、それとも、山内組との近似を回避したものか。その他、犯された後菅野に舌を切り取られる、小松の嫁は背格好から辰巳ゆい―主演女優が二役をこなすのも、ピンクならではではある―にしても、みゆきにブッ刺される二人組は顔も隠され流石に判らない、定石でいふと演出部辺り。
 当方ボーカル=小松公典が師匠の関根和美譲りの大振りを爆裂させる、竹洞哲也2017年第三作。屋外に於ける松田との遣り取りで、かずみが思はぜぶりどころではない謎めいた発言で煙を巻き続ける時点で気付くべきであつたのか、裏切り者は誰かなレザボア・ドッグス的クライム・サスペンスから、何処となくセイレーン・シリーズも彷彿とさせるエロティック・スリラーへとフルモデルチェンジを果たす、驚天動地の超展開には正方向にビックリした。丁寧に観客を騙す過程で、たをやかといふ言葉は目下この人のためにあるのではとさへ思へる、辰巳ゆいの裸がともしなくとも物足りない不満には大いに憤慨しかけつつ、かずみが窓越しにオッパイを見せ菅野を誘ふ一撃必殺級の名ショットが火蓋を切る、終盤の猛スパートで一息に挽回。物理的な尺の上ではそれでも不足は否めないにせよ、腹ならぬチンコ八分、このくらゐで寧ろちやうどいい塩梅とでもいふことにしてしまへ。いよいよ抜けて来た、俺の底。何をこの期にはさて措き、ちぐとはぐを最大限上手いこと接いだ豪快な一作。これで、ダム脇から森羅万象が伝へる事後報告だけでなく、一行が此処から彼処へと岸を跨いだ旨を示す、一手間でも設けてあればダイターンな特大技がなほ見事に決まつたやうな素人考へも胸を過りながら、例によつて節穴が見落としただけなのかも。
 備忘録< 辰巳ゆいの正体は故郷を捨てる松田(仮名)の後を追ふ過程で事故死した少女の霊


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 「熟女ヴァージン 揉まれて港町」(2017/制作:Blue Forest Film/提供:オーピー映画/監督:竹洞哲也/脚本:深澤浩子/撮影監督:創優和/録音:山口勉/編集:目見田健/音楽:與語一平/整音:吉方淳二/助監督:江尻大/監督助手:市原博文/照明助手:小松麻美/美術協力:富田悠/スチール:阿部真也/仕上げ:東映ラボ・テック/出演:白木優子・月本愛・通野未帆・和田光沙・櫻井拓也・津田篤・橘秀樹・山本宗介)。
 「明日香でえす☆」と軽やかに火蓋を切る、何の変哲もないそこら辺の公園にて、十八歳になつた記念にと女子高生が縄跳びの二重飛び百回に挑戦する投稿動画。ところで、二重飛びに見えないのは気の所為か。一方アラフォー女の、見るから引きこもつた薄暗い部屋。女が鉛筆を走らせる、動画の女子高生の背景に見切れるベンチで菓子パンを頬張る津田篤の、何故か逆アングルのイラストにタイトル・イン。美術協力の富田悠が、鉛筆画の主なのか?
 優等生であつたものの、高三の時から凡そ二十年引きこもる藤森和子(白木)の部屋に、妹の美沙(通野)がノックもせずに入つて来る。遺影もスルーする両親は二年前に事故で死去、和子の面倒を託された格好の美沙が、家事に関する文句を一頻り吐く。翌日、美沙が婚約者の岡本雅也(櫻井)を家に連れて来る。家賃は妹夫婦が出しての別居を提案された―見るから部屋着なスウェットの―和子は、無言で居間の席を立つ。一応和子を慮る岡本に対し、美沙が有無をいはさぬ速攻を仕掛ける婚前交渉の最中、和子は荷物をまとめ出奔。目指した先は、名称をロストした女子高生縄跳び動画の公園、の津田篤がジャムパン―如何に特定したのか最後まで語られはしないが、和子によるとジャムパンらしい―を食べてゐたベンチ。ホケーッと和子が座つてゐると、そこに縄跳び動画の女子高生・木崎明日香(月本)が私服で現れ、再びてれんてれん縄跳びを始める。最初は自身をガン見する正体不明の中年女を警戒した明日香も、和子が動画を見たと知るや胸襟を開き、津田篤と動画撮影当日軽く話をしてみたところ、実家の民宿を継ぐため静岡に帰るといつてゐた旨を伝へる。すると脊髄で折り返して静岡にレッツらゴーな和子に、その場の勢ひに呑まれた明日香も同行。如何にも日本的な、海の間近まで山が迫つたロケーション。山裾を曲りくねつた海沿ひの線路を電車に揺られ、二人は静岡に入る。
 配役残り橘秀樹は、ひとまづ波止場にやつて来た和子と明日香に、「そんなところで何してるの?」と声をかける大体ナンパ師・白井。車に乗せて呉れたお礼にと、明日香が白井に膳を据ゑる件。明日香が当初提示した手コキを固辞する白井に、明日香は返す刀で「オッパイ見る?」。棚から転がり落ちた牡丹餅が、葱を背負つた鴨に空中でトランスフォームするが如きドリーミングなシークエンスに加へ、明日香が勿体ぶりもせずたくし上げたセーターから、ボロンと零れる爆乳が素晴らしい。明日香と白井がそのまゝザクザク突入した青姦に於ける正常位こと立位後背位を、目撃した和子が衝撃を受ける事後、二人は明日香が肌身離さず持ち歩く、何某か因縁もあるらしき写真の撮られた砂浜に。幼少期一度だけ連れて来て貰つた海に触れなかつた和子が、明日香に促され恐る恐る波打ち際に近づくと、入水でもするのかと早とちりした地元の猟師・中尾智晴(山本)が「早まるな!」とドラゴンロケット。逆に中尾に冬の海に突き飛ばされた和子は、中尾懇意の民宿「もちづき」に。和田光沙が、料理人の夫とは五年前に死別、「もちづき」を一人で切り盛りする望月めぐみ。和子と明日香は「もちづき」に逗留、中尾の力も借りての和子曰くジャムパンマン捜しに本格的に着手する。
 2012年第五作「三十路義母 背徳のしたたり」(脚本:エバラマチコ/主演:結城みさ)、2016年第二作「大人志願 恥ぢらひの発情」(脚本:小山侑子/主演:若月まりあ)に続いての五作ぶり三度目で、竹洞哲也が小松公典以外の脚本家を迎へた2017年第二作、OPP+題が「出会つてないけど、さやうなら」。ついでといつては何だが白木優子は竹洞哲也2015年第二作「四十路熟女 性処理はヒミツ」(脚本:小松公典)、月本愛はいまおかしんじ大蔵第二作「感じるつちんこ ヤリ放題!」(2017/脚本:守屋文雄/主演:涼川絢音)三番手、通野未帆は竹洞哲也2016年第一作「純情濡らし、愛情暮らし」(脚本:当方ボーカル)以来と、三本柱が揃つてピンク第二戦。
 部屋から出ない内に大人を通り越してオバサンになつた女と、“JK”と称するのがより相応しい今時な女子高生の二人旅は、ビリング後ろ二人の矢継ぎ早な投入もテンポよく、順調に軌道に乗る。月本愛を介錯すると、潔くスッパリ退場する橘秀樹の大絶賛濡れ場要員ぶりはピンク映画的に実に清々しく、現代ピンク最強の男前たる山宗はこの上なく見事な壁ドンを、しかも足で決める。屋外では気合を入れたロングを多用する、画の力も強い。とはいへ肝心要のジャムパンマン捜しが釣りでいふところのボウズ続きで、流石に間がもたなくもなりかけた終盤、何気に丹念に積み重ねられた、静岡の嘘が明かされる。それまではそれなりに苦しんで来なくもなかつた和子の傍ら、飄々と刹那的に生きて来たかに見せた明日香も、矢張り心に何の隙間も抱へてゐない筈がなかつた。寧ろ和子の物語にケリがつくよりも先に、明日香に血肉が通ふ瞬間が最初のハイライト。地力のなせる業なのかツキなのか、下手な物言ひを滑らせるやうだが、月本愛はいい映画に出たと思ふ。むくれた表情が、明日香の心のさゝくれにフィットする。そして静岡行でイニシエーションを経た和子が、君“きみ”に感謝の気持ちを込めて告げる出会つてもゐないのにな別れが、ふたつめのハイライトにして真のクライマックス。流石に幾ら何でもハイキーの度が越した画面は、余程上等なプロジェク太でなければ厳しからうが。実はピンク映画としては女の裸比率は案外でもなく結構低く、オーラスの大出世した自立ぶりは些か荒唐無稽の領域にさへ突入してゐながらも、行程の前と後ろとで決して全てが変りはしないにせよ、確実に開けた扉もなくはない綺麗な綺麗なロードムービー。何はともあれ、家を出た和子がとりあへず辿り着いた、津田篤が菓子パンに舌鼓を打つてゐたベンチ。ここでの、メガネにボサッとニット帽を合はせ、呆然と佇む白木優子の破壊力が比類ない。何故だか判らないけれど兎に角無性にエモーショナルなそのショット一撃で、今作はエターナル。削る削るといふほどの絡みの分量がそもそも存在せず、二十分長いOPP+に際して何処をどう水増ししたものやら知らないが、これ、既にR18版で意は尽くされてあるのではなからうか、下手に尺を持て余すでなく十二分に完成してゐる。蔑ろといふと言葉が過ぎるのかも知れないが、少なくともピンクが疎かになる形でOPP+路線を明確に苦戦してゐたやうに映る竹洞哲也が、うつかり高を括つてゐると放つて来たクリーン・ヒット。深澤浩子的にもピンクに於ける初日である点に、改めて論は俟つまい。
 明日香の嘘の備忘録<静岡の民宿で働いてゐたのはミッちやん―明日香母―と別れた明日香実父


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 「レンタル女子大生 肉欲延滞中」(2017/制作:Blue Forest Film/提供:オーピー映画/監督:竹洞哲也/脚本:当方ボーカル/撮影監督:創優和/録音:山口勉/編集:目見田健/音楽:與語一平/整音:高島良太/助監督:江尻大/監督助手:市原博文/照明助手:小松麻美/スチール:阿部真也/仕上げ:東映ラボ・テック/出演:彩城ゆりな・酒井あずさ・櫻井拓也・イワヤケンジ・森羅万象・吉田俊大・友田彩也香)。照明助手の小松麻美が、地味に竹洞哲也2014年第一作「痴漢電車 いけない夢旅行」(脚本:小松公典/主演:辰巳ゆい)ぶりの中復帰。
 拍子抜けするくらゐアッサリしたタイトル開巻、居酒屋にて、何某かの撮影中。カメラを向けられる側の中岡有希(彩城)に、仕事終りの五島幸一(イワヤ)が合流、愛称テルこと池田輝雄の話から始まる。同じゼミ生で就職活動に爆死し大絶賛引きこもるテル(櫻井)を、何気に想ひを寄せぬでもない有希が案じて訪ねる。別に下級生で問題はないが、有希の進路に関しては等閑視される。何だかんだの末、社会に必要とされないのならひとまづ個人からと、有希はサイト登録制の緩い何でも屋「自分レンタル」にテルを誘ふ。製薬会社部長の五島は、あるいは五島も、自分レンタルを介したテルとの出会ひを通して、自らも自分レンタルを始めた口。ところでしかも役職つきが、その会社は副業を認めてゐるのか。おひとりさまウェディングが趣味のOL・新倉美和子(友田)に新郎役で呼ばれて以来、気に入られ重用されるテルが、美和子に入れ揚げる様子に有希はやきもきする。
 配役残り、自分レンタルのイントロダクションに背中だけ見せるのは当方ボーカル当人の小松公典。酒井あずさは、五島の妻・蓮。闇雲に重い役所で、普段はあまりでなく意識させない端正さを際立たせる森羅万象は、起承転結の転部要を担ふ自分レンタル顧客・福田治郎。吉田俊大は、テルを撃墜し有希を内心喜ばせる、美和子の恋人・陣内貴志。その他、右手から彩城ゆりなを抜いた居酒屋の奥に見切れる客が二組。中盤の周磨要と東京JOEには辿り着けるとして、序盤の異常に美人の二人連れが激しく判らない。あと、クライマックスにヒムセルフで飛び込んで来るのは阿部真也。
 “レンタル”の文言から脊髄で折り返して想起した、山内大輔2006年第三作「レンタルお姉さん 欲望家政婦」(主演:姫川りな)には特にも何も全く掠りもしなかつた、竹洞哲也2017年第一作。「サイコウノバカヤロウ」とかいふ仮題ばりにダサいタイトルで、OPP+ver.も公開されてゐる。外堀から埋めて行くと主演の彩城ゆりなは、松岡邦彦のデジエク第五弾「女と女のラブゲーム 男達を犯せ!」(2014/脚本:今西守/主演:水希杏)と、渡邊元嗣2015年第三作「愛Robot したたる淫行知能」(脚本:山崎浩治)に続くピンク三戦目。入れ替り立ち替り時々のAVアイドルが通り過ぎて行つてゐるやうにも見えて、案外息が長い人もゐれば、途方もなく長い人もゐたりするのが、歴史の名に値するだけの年月を積み重ねた量産型娯楽映画たる、ピンク映画の面白さ。
 それは、さて措き。終始撮影中の何某かの正体が、ピシャッと撮影者込みでラストに明らかとなる構成は酌める。今年は薔薇族や伊豆映画にまで出まくる櫻井拓也は昔日の―あへて断じるならば“戦犯”―久保田泰也の完全上位互換で、俳優部にも穴はない。画期的な濡れ場の僅かさに関しては、オーピーが初めからプラスありきで考へてゐる以上、最早一観客風情がどうかういふてもせんない、にせよ。一応有希起点のテルとのラブ・ストーリーといふ全篇を貫く主軸、覚束なさを加味するとチュ軸もなくはないとはいへ、最後まで観通してみると、退屈はしないばかりの尺が淡々と過ぎて行く始終には、呆れるほどの疑問も残らない。女の裸がなければ、強固な物語も燃えるやうなエモーションも、挙句にツッコミ処さへない。どうしたものか、どうしたいのか。本当に日本一短い手紙で猛然と一撃必殺を狙ひに来て現に見事モノにしてみせた、気概なり体力はもうこのコンビには残されてゐないのであらうか。


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 「弱腰OL 控へめな腰使ひ」(2016/制作:Blue Forest Film/提供:オーピー映画/監督:竹洞哲也/脚本:当方ボーカル/撮影監督:創優和/録音:山口勉/編集:有馬潜/音楽:與語一平/整音:高島良太/助監督:小関裕次郎/監督助手:左夏子/撮影助手:高橋草太/スチール:阿部真也/仕上げ:東映ラボ・テック/出演:辰巳ゆい・しじみ・加藤ツバキ・和田光沙・山本宗介・吉田俊大・橘秀樹・森羅万象・那波隆史)。
 日没の地方都市のロングに、「昼とはガラリと変る、夜の街の景色が好きだ」と辰巳ゆいのクレジット起動。変りたいだ変れないだの独り言ちつつ、ヘッドフォンを装着した辰巳ゆいはもどかしい現実を忘れさせてくれるとの夜の街を歩き、山本宗介の車の助手席には、後述する日出美とは逆コースで一旦帰郷と再上京を経ての、加藤義一の監督デビュー十周年記念作「どスケベ検査 ナース爆乳責め」(2012/脚本:小松公典/主演:あずみ恋・Hitomi)以来、脱ぎありの三本柱としてだとその前作、渡邊元嗣2011年第五作「エッチ指南 はだける赤襦袢」(脚本:山崎浩治/主演:眞木あずさ)以来のピンク帰還となるしじみ(ex.持田茜)。山本宗介がカーステをつけるとポップで力強いエレクトロが鳴り始め、加藤ツバキはラブホにて吉田俊大と逢瀬を交す。ホッつき歩く辰巳ゆいが、ネチャッと踏んだ汚物に上下からタイトル・イン。シュッとした開巻に、この時はまさかこんなことにならうとは。
 仕事に没頭する部数を漸減させるタウン誌『大里CLiPS』の編集員・布野桐子(辰巳)に、編集長の野田佳代(和田)は原日出美が又ぞろ取材先の男と関係を持つたとのクレームに頭を抱へる。当の日出美(しじみ)は桐子を前に欠片も悪びれるでなく、取材で知り合つた板前・熊野真人(山本)と二度目に寝る。人妻の大須木乃美(加藤)は同窓会で再会した雲井亘(吉田)と不倫を重ね、日出美とは対照的に、浮いた話のまるで聞こえて来ない桐子は日出美に薦められた昼間しか飲めない美味しいコーヒーを飲みに行つた喫茶店で、ナポリタンを常食する早期退職した元教師・鮫川陽介(那波)と出会ふ。
 配役残り森羅万象は、最後まで首から上は抜かないつもりかと気を持たせた茶店のマスター。肝心要の土壇場でのフェイス・オープンは、確かにか僅かに有効。この人の場合茶店のマスターよりも、定食屋の大将の方が数兆倍しつくり来るやうな気がする些末は、我ながらどうでもいい。橘秀樹は桐子にトラウマを残す、望まぬ性行為を強要した高校生時代の彼氏。辰巳ゆいが現在の桐子の弱腰OLぶりを綺麗に形にしてゐる以上、幾ら絡みの種とはいへ蛇足気味のエピソードといふ以前に、ウルトラ大人の女であるにも関らずおさげ×セーラー服で武装した辰巳ゆいの何気な破壊力。多分昼間はゐない茶店のウエイトレスは、演出部動員で左夏子か、おいとしか配偶者を呼ばない木乃美夫の声の主は不明。
 東京ではOPP+の上映が終了した翌日といふタイミングで我等が前田有楽に着弾した、竹洞哲也2016年最多第五作。予告を見た限りでは、三者三様の恋愛模様が2015年第六作「恋人百景 フラれてフつて、また濡れて」(脚本:当方ボーカル/主演:友田彩也香・樹花凜・加藤ツバキ)で到達した深く大きな視座に辿り着くものかと、思ひきや。木乃美はビリング頭二人と劇中掠りもしないのに加へ、桐子と日出美の傍らを、それぞれ男が通り過ぎて行くだけの何も起こらなければ変りもしない、それどころかそもそも変りたい気配さへ殆ど窺はせない展開には、トムとジェリーの如くあんぐり開いた口の顎が接地した。鼻につく那波隆史のウェットな惰弱さと筆卸男優部の軽薄さを除けば一幕一幕の完成度は決して低くなく、まさかよもや主演女優の濡れ場を見せない一大横紙破りをやつてのけるのではあるまいなと、逆の意味でのスリリングは尺が押し迫るにつれ猛然と加速しはするものの、思はせぶりなばかりで、結局何ッにもない何ッでもないスッカラカーン具合には唖然とした。一本の劇映画として成立してゐるのか否かから甚だ疑問なレベルで、起承転結を木端微塵に粉砕する箍の外れたルーチンが、前衛性の領域にさへ突入しかねない御大映画でも観てゐた方が全然マシ。どうやら、OPP+版では如何程かは知らぬがその辺りも補完されてあるやうだが、だから何度でも繰り返す

 知るか

 ピンク映画の新時代を切り拓かうとする―あるいはより直截には延命―問題意識とそれなりの戦果も上げてゐさうな営み自体は兎も角、それで旧来の小屋に木戸銭を落とした客を蔑ろにして済ますのだとしたら、本末転倒の名にすら値しない。となると改めて脳裏を過るのは、ピンクと、女の裸をオミットして代りに素のドラマを上乗せした一般映画とを一発で二本撮りする方法論に於いて先行した上に、出来上がつたデジエクでは何時も通りに何時も通りの筋を通してゐるのに対し、山﨑邦紀が好き勝手し倒した一般映画版を逆に自分の映画ではないとまで時に口滑らせる、浜野佐知のジャスティス感も迸る稀有な離れ業。


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 「失恋乱交 ツユだく姉妹どんぶり」(2016/制作:Blue Forest Film/提供:オーピー映画/監督:竹洞哲也/脚本:当方ボーカル/撮影監督:創優和/録音:山口勉/編集:有馬潜/音楽:與語一平/整音:高島良太/助監督:小関裕次郎/監督助手:林有一郎/撮影助手:柳田純一・福島沙織/スチール:阿部真也/仕上げ:東映ラボ・テック/制作進行:植田浩行/協力:嬬恋村フィルムコミッション/出演:友田彩也香・和田光沙・葉山美空・可児正光・橘秀樹・イワヤケンジ)。
 タイトル開巻、後々語られる両親は淡路島に殆ど移住、ロッジ風の一軒家に三姉妹で暮らすサナダ家。朗報と思しきメールが着弾しウキウキで目覚めた次女のユキ(友田)は、占ひに従つた結果出鱈目なコーデの靴で出勤する。奥手で日々些末に一喜一憂するユキに対し、上級者を自負する長女のカツコ(和田)が素頓狂な恋愛指南を垂れ続ける一方、いはゆる腐の三女・タマミ(葉山)は、二人の姉にも姿を見せないレベルで自室に引きこもつてゐた。
 配役残り橘秀樹は、かつて客のカツコを喰つた糞マスター・キタノシュン。同様に回想パート要員の可児正光は、ダニ体質のユキ元カレ・マスカワエイゴ。竹洞哲也二作前のピンク初陣、「大人志願 恥ぢらひの発情」(脚本:小山侑子/主演:若月まりあ)の印象は全く薄い可児正光は今回は今回で固定された芝居を強ひられつつ、この人、強ひていふならばRefined太田始か。そしてイワヤケンジが、ユキ意中の職場同僚・ミノシマミツル。その他カツコの武勇伝中に見切れるのは、小関裕次郎がゐたやうな気がするから多分演出部動員。
 大蔵からの優遇ぶりが窺へる、制作ペース―だけ―は順調な竹洞哲也の、年内にもう一本残す2016年第四作。師匠に反旗を翻すアンチ伊豆映画級の前作ほどではないにせよ、相変らずわざわざ嬬恋にまで出張つておいて、絶好のロケーションを無駄遣ひさへ殆どしない粒の小さな会話劇に終始。友田彩也香と和田光沙の気が利かなくもない丁々発止は通して楽しく見させ、扉越しにLINEを介したユキとタマミの遣り取りは、地味に胸に染み入る。のは、結果論として精々焼け石にかける水。終盤力技か無理からな大展開も控へてはゐるものの、最終的には「だから何?」といつた程度の突き放した感興に止(とど)まる。2009年頃から2013年初頭辺りまで長く戯れた、学芸会じみたキャラクター主体の、といふか体をなした物語が存在せず粗製されたキャラクターくらゐしか見当たらない凡作群よりはまだしもマシとはいへ、如何せんことこの期に及んでなほ何処にも抜ける気配すら感じさせない、既視感ばかりを拗らせる薬籠を狙つたつもりの自家中毒は如何なものか。今作中唯一にして当然最大の切札は、タマミに用意した食事にユキが添へた手書きの顔文字が激越に可愛らしい、真心溢れるメモの数々。一撃必殺、正攻法のエモーションを撃ち抜くチャンスも、決してなくはなかつた筈なのだが。


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 「悶える義妹 遺影の前で抱いて」(2016/制作:Blue Forest Film/提供:オーピー映画/監督:竹洞哲也/脚本:当方ボーカル/撮影監督:創優和/録音:山口勉/編集:有馬潜/音楽:與語一平/整音:高島良太/助監督:小関裕次郎/監督助手:林有一郎/撮影助手:酒村多緒・柳田純一/スチール:阿部真也/仕上げ:東映ラボ・テック/制作進行:植田浩行/協力:嬬恋村フィルムコミッション/出演:朝倉ことみ・星野あかり・倖田李梨・世志男・ダーリン石川・イワヤケンジ)。
 タイトル開巻、開口一番はイワヤケンジのモノローグで、「私は、突然死にました」。適宜ツッコんだりボケてもみたり、そのまゝイワヤケンジの軽妙な喋りで話を進める、竹洞組でよくある手法。家族で居酒屋「美蔵」を営む箕島家、長女・延子(星野)の入婿・ミツル(イワヤ)が自宅の階段から落ちて突然死、しての四十九日。身内だけの法要に参列したのは、両親はすでに死去してゐるのか延子のほか、家を出た役立たずの長男・長男(世志男)とその嫁で意地汚い実和子(倖田)に、何故かミツルにしか心を開かなかつた次女の和歌子(朝倉)。和歌子の好意を意識し、延子とは五年レスの状態にあつたミツルもよからぬ劣情を拗らせないでもなかつたが、あくまで一線は越えずにゐた。配役残りダーリン石川は、五十日と一日勘違ひして洋菓子持参でのこのこ箕島家にやつて来る、延子の浮気相手・真倉義経。オーラス間際に二人見切れる、飲食客要員には手も足も出ない。
 ピンク四戦目にして朝倉ことみが初めて山内組から外征した、竹洞哲也2016年第三作。一方通算第六戦の星野あかりは、国沢実2016年第一作「陶酔妻 白濁に濡れる柔肌」(脚本:高橋祐太/主演:美泉咲)に続く五年ぶり復帰第二戦。尤も残念ながら星野あかりは六月で無期限活動休止してしまつてゐるゆゑ、七月終盤公開の今作が打ち止めとなる模様。
 恐らく意図的にミスリーディングを狙つたと思しき、朝倉ことみが美しく亡き義兄への思慕を募らせるリリカルな予告には全く反し、本篇が現代的にコッテコテしたコメディである奇襲には、ひとまづ完全に意表を突かれた。ひとつひとつのギャグの精度、イワヤケンジの話術ともに申し分なく、序盤は箕島家の面々だけで通過、中盤に至つて真倉を投入し加速を図る展開も手堅い。そして、卓袱台が派手に引つ繰り返る終盤。とこ、ろが。二転のどんでん返しが綺麗に決まるとはいへ、如何せん二転目のレス・ザン・目新しさは否めず、最後まで見通してしまふと却つて七十分も費やすほどのネタかといふ疑念を正直拭ひきれない、粒の小さな物語といふ印象が強い。裸映画的にも締め以外濡れ場は何れも散発的なものに止(とど)まり、倖田李梨に至つては乳すら見せない不義理。折角五年の間に色香を爆増させた星野あかりを擁しておいて、どうしてもつとゴリゴリ観客の金玉、もとい琴線を激弾かうとしない、とかいふ明後日だか一昨日な不満も残る。完成度が低くはない割にインパクトは弱い一作の中、地味に特筆すべきはクレジットを見るに嬬恋まで出張つてゐる筈―現に舞台は美蔵だ―なのに、俳優部どころか表からの忌中ショットを除けば撮影部も建物の中から一歩たりとて外に出ない、師匠の伊豆映画と真逆のアプローチには軽く驚いた。ここから先は純然たる素人の浅墓な邪推に過ぎないが、2016年も竹洞哲也はただ一人今時驚異の全五作を量産する大車輪状態で、今回は前作から二ヶ月強、次作までは二ヶ月弱といふハイペース。もしも仮に万が一、モノローグ主導の構成も現場の負担を軽減するための戦略的選択であつたとするならば、よもや三日さへかけてゐなかつたりする省力撮影なのかしらん。その場合、城定秀夫みたいに名義でカミングアウトして貰へると判り易いのに、紳士服のザザホラヤよろしく竹洞也とか   >福岡にしかねえよ

 最後に、イワヤケンジが“どういつた類”といふ箇所を、普通“たぐひ”とならうところを、“るい”で読んでゐたのが耳についた。“るい”でも間違ひとは必ずしもいへない上に、そもそも後付けのモノローグにつき、わざッと“るい”で読ませたのかも知れないけれど。
 どんでん二転の備忘録< 寿司を食ひ大笑する四人を昏倒・拘束、更に灯油を撒いた和歌子が「今、逢ひにいきます」とライターで点火する修羅場は、実際にはまるでダメ子な和歌子の小説中の出来事


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 「大人志願 恥ぢらひの発情」(2016/制作:Blue Forest Film/提供:オーピー映画/監督:竹洞哲也/脚本:小山侑子/撮影監督:創優和/録音:山口勉/編集:有馬潜/音楽:與語一平/整音:高島良太/助監督:小関裕次郎/監督助手:林有一郎/撮影助手:酒村多緒・高橋草太/撮影応援:佐藤文男/スチール:阿部真也/仕上げ:東映ラボ・テック/協力:広瀬寛巳/出演:若月まりあ・吉川いと・みおり舞・橘秀樹・山本宗介・可児正光、他一名・春日いぶき・竹本泰志)。出演者中、ロストした他一名と春日いぶきは本篇クレジットのみ。決して拾ひきれない情報量―とスピード―ではなかつた筈なのだが、体力の限界に力なく屈する。
 タイトル開巻、貧血を拗らせ高校生にして二留中の澄川茉莉子(若月)が、通ふ学習塾「学友会」のソファーで例によつてしんどくなつて寝てゐると、出勤して来た学友会―オーナー兼?―講師の富田浩一(竹本)は驚く。富田も富田で、劇中学友会には茉莉子を主に常時誰かしらが入り浸つてゐるのだから、一々吃驚しなくてもいいのに。といふか、塾生に鍵持たせてるの?茉莉子の学校は違ふ学友会の友達・中村友美(吉川)らの大学受験合格を祝ふパーティーの席、葉山修平(可児)が現役で東大に合格する一方、東大三浪に突入した河田真生(橘)は荒れる。皆はカラオケに行つたのち、友美と葉山は給湯室にて致し、相変らずソファーで寝てゐた茉莉子も、出し抜けな告白とともに迫つて来た河田に体を開く。翌朝姿を消し、再び茉莉子の前に現れた時、河田はあとは写真を入れるのみの、偽造した東大の学生証を二人分用意してゐた。五月封切りの今作が初陣で、現在もなほピンクに継戦中の可児正光に話を戻すと、一応イケメンではあるのだが、出番の少なさ以上だか以下に印象は薄い。
 新入生を装ひ東大に潜り込んだ茉莉子は、鏡花好きの河田に連れられる形で文学研究会に入部する。配役残り山本宗介は、三留中の文研部長・尾崎洋介。みおり舞が―二人しかゐないが―文研副部長で、尾崎とは男女の仲にもある松田尚子、この人はストレートで銀行の就職まで決めてゐる。他一名と春日いぶきは、カメラが無闇に動く合格パーティー要員、頭数の少なさでも誤魔化したつもりなのか。
 ピンク映画四十八作目―薔薇族一本足して通算第四十九作―にして、竹洞哲也が2012年第五作「三十路義母 背徳のしたたり」(脚本:エバラマチコ/主演:結城みさ)以来、二度目に小松公典以外の脚本家と組んだ2016年第二作。といつて、全体的な出来栄えが素人目にはさほども何も特段変らない点をみるに、小松公典の我が強く滲み出てゐるやうにも見受けてゐたものだが、矢張りといふか何といふか、これまでもこれで案外竹洞哲也の映画であつたのかしらん。アッサリかマッタリとした始終を経ての終盤、茉莉子が尾崎に跨る、少し多めに尺は残すけれども締めの濡れ場。「優しくなんかない」から劇伴が猛然と鳴り始めた瞬間には、終にアクセルを踏み込んで来たかと色めきたつたものの、結局詰めが甘くさしたる結実は果たせず。詰まるところは人一人の死を出汁にした、在り来たりだか生温いモラトリアム卒業物語は、ホップの2015年第六作「恋人百景 フラれてフつて、また濡れて」(主演:友田彩也香・樹花凜・加藤ツバキ)、ステップの前作「純情濡らし、愛情暮らし」(主演:通野未帆・世志男)と来ての、満を持した大ジャンプとは行かなかつた。因みに次作以降、竹洞哲也は再び小松公典と組んでゐる模様。
 要は都合のいい自堕落さを、黒髪の似合ふアイドル的容姿で上手いことアンニュイの枠内に押し込んだ主演女優とと、正反対のキャラクターでど直球の正論をドッカンドッカン放り込んで来る二番手との対比も悪くないが、最も特筆すべきは、純然たる三番手濡れ場要員の浜野佐知デジエク第四弾「僕のオッパイが発情した理由」(2014/脚本:山﨑邦紀/主演:愛田奈々)、二番手に昇格し若干前に出た竹洞哲也2015年第三作「湯けむり温泉芸者 お座敷で枕芸」(主演:友田彩也香)を経て、再びビリングは三番手に後退しながら、ピンク三戦目で完全に一皮剝けたみおり舞のプログレス。プロフェッショナルの確実が透けて見える安定した佇まひに加へ、そこら辺にゐさうな女の絶妙なエロさを、同時に空前のクオリティで撃ち抜く様には腰から下の琴線を激弾きされて激弾きされて仕方がなかつた。ヒロインに据ゑた場合地味かつエモーショナルなドラマの構築に難儀しさうにも思へ、この人を三人目に置いておけば、裸の劇映画的にも裸映画的にも極めて戦ひが楽になるやうに映つた。

 とか何とかいひつつ、最大の見所は、枝葉に咲いた大概な徒花。物語上不可欠なアイテムにつき、枝葉扱ひは妥当ではない気もするが。何処からかそれとも自作したのか、河田が調達して来た偽造東大学生証といふのが、台紙はちやんとしてゐる―風に見えた―免許証状のカードに、上から証明写真を直貼りしただけといふ代物。プラス戦線を今回は初めから辞退したが如き、薄味の展開とはいへそれまでそれなりに丹念に積み重ねて来た全てを、ワン・カットの一撃で卓袱台する衝撃のプリミティブ小道具には良くなくも悪くも度肝を抜かれた。レス・ザン・イントロダクションをものともせず箆棒な配役で飛び込んで来る倖田李梨といひ、一見おとなしさうに見せて、竹洞哲也は時々とんでもない無茶をする。


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