COLKIDが日々の出来事を気軽に書き込む小さな日記です。
COLKID プチ日記
オーラ
D3X + PC-E Micro NIKKOR 45mm F2.8D ED
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もう20数年も前の話だ。
ドイツのとある有名なコンサートホールに僕はいた。
世界的に有名な音楽祭が開かれており、開場前の広場には、着飾った大勢の観客が集っていた。
まだ学生であった僕は、一着だけ持っていた背広を着て、それで正装のつもりで出かけたが、当然現地の雰囲気にはまったくそぐわず、肩身の狭い思いをしていた。
ルートが無ければチケットの入手も不可能な特別な演奏会である。
周りでは毎年参加しているであろう常連の名士たちが、華やかな衣装で歓談していた。
その中で日本から来た僕などは、その端のほうの席を少し分けていただいただけの存在であった。
ふと気付くと、目の前に東洋人の女性が立っていた。
一瞬目が合い、少し微笑んだその表情を見て、その方が日本人であることがわかった。
イブニングドレスを見事に着こなしたその女性は、ひとり凛とした姿で立っていた。
美しく整ったその顔立ちだけでなく、その女性は自分の周りに別の空間を作る強いオーラを放っていた。
驚くべきことだが、その日本人の女性の登場で、広場のすべての人間が脇役になってしまった。
主役は無言で微笑むその女性ひとりであった。
僕は誇らしい気分になった。
これだけのハイクラスの人たちが、ひとりの日本人の女性の前に色褪せた存在になっている。
遠巻きにしている男性も女性も、彼女のことを意識しているのは明らかであった。
やがてコンサートの始まる時間となり、僕は自分の席に向かった。
それきりその女性を見ることは二度と無かった。
後で別の日本人から、あれは頼近美津子さんだよ、と教えてもらった。
それが事実であったのかどうか定かではないのだが、今若い頃の頼近さんの映像を見ると、確かにあの時の女性によく似ている。
過去に何人か、強烈なオーラを発する人物にお会いしたことがある。
不思議なことに、レンズを通した映像には、そのオーラは写らない。
実際に目の前にした時に、ただ圧倒されるものなのだ。
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