弁理士の日々

特許事務所で働く弁理士が、日常を語ります。

尖閣~中国とのパイプ

2010-10-16 09:02:10 | 歴史・社会
尖閣で逮捕した中国船船長の勾留を延長して以来、最悪の事態となっていた日中関係は、10月4日に管首相と温家宝首相がブリュッセルで25分間ほど廊下でお話した後に徐々に鎮静化しつつあります。
この間、日本の官邸と外交当局がどのように機能したのかあるいは機能不全に陥っていたのか、記録に残そうと思いつつ、最近ちょっと忙しくて記事がまとまりません。だいぶ古新聞になりましたが、取り敢えずメモしておきます。

<菅首相>中国首相と会談 民間交流復活など合意
毎日新聞 10月5日(火)7時5分配信
『菅直人首相は4日夜(日本時間5日未明)、アジア欧州会議(ASEM)首脳会議の開かれているベルギー・ブリュッセルで中国の温家宝首相と約25分間、会談した。両首脳は沖縄県・尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件で悪化した日中関係について「現在の状況は好ましくない」との認識で一致。両国が戦略的互恵関係を進展させるほか、ハイレベル協議の開催や民間交流を復活させることを確認した。
  ・・・・・
会談はブリュッセルの王宮で、ASEM首脳会議の夕食会が終わった直後、廊下の椅子に座る形で約25分間にわたって行われた。どちら側から声をかけたかについて、菅首相は「(夕食会場を出て)同じ方向に歩いており、『やあやあ、ちょっと座りましょう』という感じで、割と自然に話ができた」と説明。会談が実現したことに関しては「話ができたことは良かった」と意義を強調した。』

会談の演出は、「予定なく突然」ということでしたが、中国の温家宝首相には日本担当者(日本語通訳)が付いたといいます。その場に日本担当者が居合わせたのは偶然とはいえず、やはり事前に準備されていたのでしょうか。
ところが日本の管首相には、外務省の中国担当者(中国語通訳)が付いていなかったというのです。これはどういうことでしょうか。

現在の日中間の激突、即ち日本の国難に際して、日本外務省はどれだけ国をサポートできているのでしょうか。
ひょっとして、日本外務省は力を発揮していないのではないかと危惧します。
10月10日の日経朝刊に以下の記事があります。
『(中国船船長勾留以後)首相官邸と外務省にも深い溝が生まれた。
「外務省は中国とのパイプが全く機能していない。」9月中旬、中国の対日姿勢がエスカレートする中、仙谷長官は周囲にいら立ちをぶつけた。実際、このころ中国政府は駐中国日本大使館や日本の外務省との交渉を断絶していた。
日中外交筋によると複線は9月12日未明に戴秉国(たいへいこく)国務委員が丹羽宇一郎大使を呼び出した事件。日本では「未明の呼び出しは無礼」と受け止められた。中国側は当初、11日午後6時の会談を申し入れたが調整がつかず、12日未明の会談になったという。その経緯を伏せた日本側に戴氏は激怒し、日本大使館との交渉を打ち切ったという説明だ。
仙谷長官が旧知の仲である中国通の民間コンサルタントを通じて独自に戴氏との交渉を模索し始めたのはその後。新たな外交ルートを探っていた中国側と思惑が一致し、細野豪志前幹事長代理の極秘訪中につながった。
「日中首脳会談に向けた交渉は外務省には極秘で進められた」。外交関係者はこう語る。福山哲郎官房副長官やコンサルタントなど急ごしらえの“仙谷外交チーム”が奔走した。1日、外務省は官邸独自の対中交渉の内容を把握するため、戴氏と長官の電話協議を準備したが、仙谷長官は外務官僚らの前での電話協議では一切、日中首脳会談の準備などは口にしなかったという。
首相官邸が外務省に不信感を抱き、官房長官の人脈に依存した外交を展開していることが知れ渡れば、外務省による他国との交渉に与える影響は甚大だ。政府内が一枚岩でないと見透かされれば「相手国につけいるスキを与えかねない」と、外務省関係者は管政権の外交の危うさを指摘する。』

週刊ポスト 10月15日号
9月29日の細野訪中に関連する記事の中で
『本来、こういうときにこそ外務省の「チャイナスクール」が日頃の人脈を生かすべきなのだが、
「チャイナスクールは、管政権が中国大使を政治任用したことで、サボタージュしている。“外務官僚をないがしろにするからだ。困るだけ困ればいい”という空気が強い」(同省幹部)
という有り様。民間から大使を任命したことは失政ではないが、その大使を支えるよう官僚たちを指導できないところに、前原氏、仙谷氏のいう“政治主導”のレベルが現れている。
丹羽宇一郎・大使は、夜中に呼び出されたり、高官に会談を拒否されたりと、中国政府から信じがたい屈辱を受けたが、なぜか外務省プロパーの領事らは、拘束されたフジタ社員にも簡単に会えた。うがった見方をすれば、外務省は自分達の中国パイプを誇示しつつ、丹羽大使と官邸に恥をかかせた疑いすらある。』

こうして報道を見る限り、官邸と外務省との間は最悪ですね。これでは有効な外交を展開することは極めて困難でしょう。外交問題で日本が国益を毀損する状況はしばらく続きそうです。

ところで、「中国当局が丹羽駐中大使を未明に呼び出したという報道は事実と異なる」という点について、9月17日にすでに以下の記事がありました。

尖閣問題で日中関係は再び冬の時代に戻るのか中国が犯した2つの誤算~中国株式会社の研究~その76(6ページ)
2010.09.17(Fri) 宮家 邦彦
《未明の呼び出しは非礼か》
『日本国内で批判が集中したのは「呼び出し」の時間である。確かに「未明の呼び出し」は異例であり「けしからん」とは思う。
だが、よく調べてみると、必ずしも真夜中に突然連絡が入り、直ちに外交部に「呼びつけられた」わけではないようだ。
中国外交部から日本大使館に連絡があったのは前夜午後8時過ぎだという。双方で日程調整した結果、最終的に会談のタイミングが「未明」となったようだ。
今回の会談時期が異例だったことはその通りだが、手続き的に異例なことはない。「未明の呼び出し」は、船員14人の釈放が近いことを知った中国側の焦燥感の表れと見るべきではないか。』

日本側はいたずらに、中国政府筋のメンツを潰すような対応ばかりを繰り返していたように思います。民主党政権は、本当に中国との賢い付き合い方を知らないのでしょうね。それを知らずに“政治主導”で素人外交を断行するものだから、こんなことになるのでしょう。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 細野祐二著「公認会計士vs特... | トップ | 特捜検察~東京と大阪の違い »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

歴史・社会」カテゴリの最新記事