塩野七生著「ローマ人の物語」終わりの始まり 中、下

皇帝コモドゥス(在位180~192)は、五賢帝最後の皇帝であるマルクス・アウレリウスの息子です。
実の姉のルチッラに暗殺されかかり、それを機に皇帝コモドゥスは猜疑心の塊となってしまいます。自分を暗殺しようとしているとの噂を耳にすると、直ちにその相手を殺害してしまいます。
そして最後は側近に殺されてしまいます。
帝政ローマにおいて、皇帝は死ぬまで皇帝でい続けます。皇帝が暴君だったりした場合、その皇帝を取り除くには暗殺しかありません。
暗殺のあと、内乱を起こすことなく次の皇帝が決まれば、良かった良かったということになります。
コモドゥスを殺害した側近3人は、直ちに近衛軍団の長官エミリウス・レトーを呼び、レトーは直ちに元老院有力議員とはかって後継皇帝を決めてしまいます。
ジェノヴァで解放奴隷の子として生まれたペルティナクスは、自らの才覚でローマ市民権を得、さらに軍隊に入って頭角を現し、シリア属州総督まで務め、コモドゥス殺害当時は66歳でローマ首都長官を務めていました。レトーがこのペルティナクスを説得し、後継皇帝とします。老境のペルティナクスは、「自分は本当にふさわしい皇帝が現れるまでのワンポイントリリーフだ」とこころえ、受諾します。
ローマ帝国の各地の軍団を指揮する総督たちは、以前のペルティナクスの同僚という地位でしたが、ペルティナクスの皇帝就任に対して反旗を翻しませんでした。
ペルティナクスは、皇帝を世襲しないことを宣言し、次々と政策を実行していきます。ローマ帝国は、また五賢帝時代の安定を取り戻すかに見えました。
ペルティナクスを皇帝に推挙したレトーは、その見返りとして、エジプト長官に就任することを望んでいました。エジプト長官は蓄財のうま味があるのです。ところがペルティナクスはレトーのこの希望を叶えないまま、3ヶ月が経過します。待ちぼうけを食ったレトーが、ついに部下の近衛兵を扇動し、ペルティナクスを殺害してしまうのです。
ペルティナクスを排除したレトーが次に選んだ皇帝は、ユリアヌスでした。元老院出身で名誉あるキャリアを勤め上げ、60歳になっていました。
ところが今度は、前線の軍団を指揮する総督たちが、ユリアヌスを認めませんでした。ユーフラテス川防衛線を担当するニゲル、ブリタニアで指揮するアルビヌス、ドナウ川沿いの広大な防衛線を担当するセヴェルスの3人が、「自分こそ皇帝」と立ち上がります。
セヴェルスがいち早く軍団を率いてローマに進軍します。
勝ち目がないと悟ったローマの近衛軍団は皇帝ユリアヌスを殺害し、セヴェルスは無血でローマに入りますが寛容な政策は採りません。
セヴェルスは、同じく皇帝を宣言したニゲルを戦闘で破り、ついでアルビヌスも戦闘で破ります。戦闘とは、昨日まで友軍だったローマ軍同士が戦うわけです。
五賢帝時代に、広大なローマ帝国版図が安全と繁栄を謳歌したのが嘘のような内戦時代への突入です。
内戦はセヴェルスの勝利で終わりますが、そこには、軍事を優先する新しいローマ帝国時代が始まっていました。
塩野七生著「ローマ人の物語」文庫版は、今回の「終わりの始まり」上中下が29~31巻です。これまで淡々と読んできましたが、この巻で始めて、「何で歴史は非情なんだ」との感情が湧き上がりました。
たまたま、五賢帝最後のマルクス・アウレリウス帝に男の子がおり、そのコモドゥスが凡帝であったがために、ローマ帝国は衰退への道をたどり始めました。しかしうまい具合にコモドゥスが暗殺され、老境のベルティナクスが帝位につき、帝国の軍団もベルティナクスの治世を承認します。このままうまくいけば、五賢帝時代のように、ローマには平和と繁栄の時代が戻ったかもしれません。
ところがそのベルティナクスが、欲に目がくらんだ近衛長官レトーによって排除されてから、帝国は坂道を転がり落ちるように、内戦の時代に入り、同胞が相戦って血を流し、軍国主義的なローマ帝国へと変貌していくのです。
昭和初期の日本が、坂道を転げ落ちるように悪い方向へ向かった姿と重なるものがあります。


皇帝コモドゥス(在位180~192)は、五賢帝最後の皇帝であるマルクス・アウレリウスの息子です。
実の姉のルチッラに暗殺されかかり、それを機に皇帝コモドゥスは猜疑心の塊となってしまいます。自分を暗殺しようとしているとの噂を耳にすると、直ちにその相手を殺害してしまいます。
そして最後は側近に殺されてしまいます。
帝政ローマにおいて、皇帝は死ぬまで皇帝でい続けます。皇帝が暴君だったりした場合、その皇帝を取り除くには暗殺しかありません。
暗殺のあと、内乱を起こすことなく次の皇帝が決まれば、良かった良かったということになります。
コモドゥスを殺害した側近3人は、直ちに近衛軍団の長官エミリウス・レトーを呼び、レトーは直ちに元老院有力議員とはかって後継皇帝を決めてしまいます。
ジェノヴァで解放奴隷の子として生まれたペルティナクスは、自らの才覚でローマ市民権を得、さらに軍隊に入って頭角を現し、シリア属州総督まで務め、コモドゥス殺害当時は66歳でローマ首都長官を務めていました。レトーがこのペルティナクスを説得し、後継皇帝とします。老境のペルティナクスは、「自分は本当にふさわしい皇帝が現れるまでのワンポイントリリーフだ」とこころえ、受諾します。
ローマ帝国の各地の軍団を指揮する総督たちは、以前のペルティナクスの同僚という地位でしたが、ペルティナクスの皇帝就任に対して反旗を翻しませんでした。
ペルティナクスは、皇帝を世襲しないことを宣言し、次々と政策を実行していきます。ローマ帝国は、また五賢帝時代の安定を取り戻すかに見えました。
ペルティナクスを皇帝に推挙したレトーは、その見返りとして、エジプト長官に就任することを望んでいました。エジプト長官は蓄財のうま味があるのです。ところがペルティナクスはレトーのこの希望を叶えないまま、3ヶ月が経過します。待ちぼうけを食ったレトーが、ついに部下の近衛兵を扇動し、ペルティナクスを殺害してしまうのです。
ペルティナクスを排除したレトーが次に選んだ皇帝は、ユリアヌスでした。元老院出身で名誉あるキャリアを勤め上げ、60歳になっていました。
ところが今度は、前線の軍団を指揮する総督たちが、ユリアヌスを認めませんでした。ユーフラテス川防衛線を担当するニゲル、ブリタニアで指揮するアルビヌス、ドナウ川沿いの広大な防衛線を担当するセヴェルスの3人が、「自分こそ皇帝」と立ち上がります。
セヴェルスがいち早く軍団を率いてローマに進軍します。
勝ち目がないと悟ったローマの近衛軍団は皇帝ユリアヌスを殺害し、セヴェルスは無血でローマに入りますが寛容な政策は採りません。
セヴェルスは、同じく皇帝を宣言したニゲルを戦闘で破り、ついでアルビヌスも戦闘で破ります。戦闘とは、昨日まで友軍だったローマ軍同士が戦うわけです。
五賢帝時代に、広大なローマ帝国版図が安全と繁栄を謳歌したのが嘘のような内戦時代への突入です。
内戦はセヴェルスの勝利で終わりますが、そこには、軍事を優先する新しいローマ帝国時代が始まっていました。
塩野七生著「ローマ人の物語」文庫版は、今回の「終わりの始まり」上中下が29~31巻です。これまで淡々と読んできましたが、この巻で始めて、「何で歴史は非情なんだ」との感情が湧き上がりました。
たまたま、五賢帝最後のマルクス・アウレリウス帝に男の子がおり、そのコモドゥスが凡帝であったがために、ローマ帝国は衰退への道をたどり始めました。しかしうまい具合にコモドゥスが暗殺され、老境のベルティナクスが帝位につき、帝国の軍団もベルティナクスの治世を承認します。このままうまくいけば、五賢帝時代のように、ローマには平和と繁栄の時代が戻ったかもしれません。
ところがそのベルティナクスが、欲に目がくらんだ近衛長官レトーによって排除されてから、帝国は坂道を転がり落ちるように、内戦の時代に入り、同胞が相戦って血を流し、軍国主義的なローマ帝国へと変貌していくのです。
昭和初期の日本が、坂道を転げ落ちるように悪い方向へ向かった姿と重なるものがあります。
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