大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

日ごろ撮影した写真に詩、短歌、俳句とともに短いコメント(短文)を添えてお送りする「大和だより」の小筥集です。

大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2020年06月27日 | 植物

<3088>  大和の花  (1062) ノコギリソウ (鋸草)                                      キク科 ノコギリソウ属

                                          

 日当たりのよい山地や高原の草原に生える多年草で、茎は叢生し、直立して高さが50センチから1メートルほどになり、上部の葉腋で枝を分ける。葉は長さが8センチ前後の長楕円形乃至披針状線形で、羽状に中、深裂し、無柄で互生する。裂片には鋭い鋸歯が見られ、基部はやや軸を抱く。この葉がノコギリを思わせるので、この名がある。

 花期は7月から9月ごろで、茎頂や枝先の散房状花序に白色の小さな頭状花を密につける。花は周りに5個から7個の舌状花、中心部に筒状の両性花があり、上向きに開く。

 北海道、本州に分布し、朝鮮半島、中国、ロシア東部に見られるという。日本には固有種として知られる地域特性のあるエゾノコギリソウ、アソノコギリソウ、ヤマノコギリソウなどがある。

   大和(奈良県)では限定的で、私の知る限り、葛城山と曽爾高原であるが、最近、ほとんど姿が見えない。この状況により、奈良県版レッドデータブックの『大切にしたい奈良県の野生動植物』(2016年版)は「茅葺屋根の衰退によりカヤ場として維持されてきたススキ草原が放棄されて、しだいに森林化して生育地を失ったことが減少の主な原因である」として、絶滅寸前種にあげている。 

 なお、漢方では漢名の蓍(し)で見え、全草を健胃、強壮、または風邪薬として用い、ヨーロッパでは傷薬にし、タバコやビールのホップの代用としも知られ、若芽は生でも食べるという。

   奈良、平安時代には真っ直ぐな茎を集め、吉凶を占う筮占(ぜいせん)に用い、その後、ハギの一種のメドハギを経て、タケによる筮竹(ぜいちく)に変わり、今に及んでいる。多分、これはノコギリソウもメドハギの減少により揃わなくなったからであろう。 写真は茅原の草地で花を見せるノコギリソウ。     枇杷の実の枇杷の香ほのか少年期

<3089>  大和の花  (1063) セイヨウノコギリソウ (西洋鋸草)              キク科 ノコギリソウ属

                                             

 ヨーロッパ原産の多年草で、世界の温帯から寒帯にかけて広く帰化し、日本には明治時代に牧草に紛れる雑草として見つかった外来種である。叢生する茎は直立し、上部の葉腋で枝を分け、高さが30センチから1メートルほどになる。茎や葉など全体に縮れた白い軟毛が生える。

 葉は2、3回羽状に細裂する長楕円状線形で、根生葉と茎葉からなり、根生葉は有柄で、ロゼット状につき、茎葉は無柄で、互生する。花期は7月から9月ごろ、枝先に散房状花序を出し、白色もしくは淡紅色の頭状花を多数つけ上向きに開く。花は5個前後の舌状花と筒状の両性花からなる。

 ノコギリソウによく似て判別し難いが、大和(奈良県)では山間の道端で見かける。高いところでは大台ヶ原ドライブウエイの標高1600メートル付近、低いところでは上北山村の国道169号沿い(標高700メートル付近)の道端で見かけた。 写真はセイヨウノコギリソウ。全体にノコギリソウより花序にボリュウムがあるように見える。   初生りのトマト トマトの匂ひせり

 


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