大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

日ごろ撮影した写真に詩、短歌、俳句とともに短いコメント(短文)を添えてお送りする「大和だより」の小筥集です。

大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2020年06月26日 | 植物

<3087>  大和の花  (1061) ミヤコザサ (都笹)                                      イネ科 ササ属

           

 スズタケより標高の高いところ、即ち、より寒いところに生える傾向が見られ、稈は細く、高さもスズタケの半分くらい、50センチから80センチほど。普通分枝しないが、ときに基部の節から1個出る。稈鞘は節間の⒉分の1より短く、無毛。葉は15センチから25センチほどの披針形に近く、裏面に軟毛が密生する。葉鞘は無毛。葉耳があり、肩毛が発達して見える。花は稀。

 北海道、本州の太平洋側、四国、九州に分布する日本の固有種で、前述したとおり、スズタケより標高の高い深山、山岳に多く、群生する。大和(奈良県)では大台ヶ原や釈迦ヶ岳の支稜線などに広い群生地が見られる。ササ類は1稔性で、花が咲くと株全体が枯死する。スズタケもミヤコザサもこの点に変わりないようであるが、スズタケは常緑で、頂部に冬芽をつけるのに対し、ミヤコザサは年ごとに地上部が枯れ、地下に株が残って地中に冬芽を出す違いがある。

 シカによる食害の関係で、この芽出しの違いが両者の命運を分け、芽が食べられてしまうスズタケはシカの増大にともない、その食害によって、軒並み姿を消し、ブナ林の状況に異変をもたらし、今に至っている。これに対し、芽が地中にあって、保護される状況にあるミヤコザサはシカの食害を免れ、繁殖しているというのが各地の現状に見える。

 植生に対するシカの問題は大きく、ミヤマシキミ、バイケイソウ、カワチブシなどの有毒植物やミヤコザサのような被食耐性のある植物がよく残り、林床の植生を単純化しているというのが日本の山地の状況としてあり、ミヤコザサの繁茂はこの状況をよく物語っている。なお、ミヤコザサ(都笹)の名は京都の北嶺比叡山で最初に確認されたことによるという。 写真は左から大台ヶ原山のミヤコザサの笹原(一六五〇メートル付近、後方はツツジ科の低木群)、枯れた葉のミヤコザサに被われた台高山系の三津河落山(さんづのこうちやま・一六三〇メートル)山頂、花穂をつけた細い稈と花穂のアップ(大台ヶ原山)。   若苗のすくすく大和平野かな

 


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