大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

日ごろ撮影した写真に詩、短歌、俳句とともに短いコメント(短文)を添えてお送りする「大和だより」の小筥集です。

大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2016年12月27日 | 植物

<1824> 大和の花 (111) ホソバテンナンショウ (細葉天南星)     サトイモ科 テンナンショウ属

                  

  続いてテンナンショウ属の仲間の紹介。大和(奈良県)はテンナンショウ属の多い土地柄にあり、山道を歩いているといろんなテンナンショウ属の仲間に出会う。出会った場合、取りあえず撮影しておくようにしている。現場では微妙に判別がつかないものが多いからである。このホソバテンナンショウも細い葉が気になってカメラを向けた。本州の関東地方から近畿地方にかけて分布する日本の固有種で、山地の林内や林縁などに生える多年草である。

 葉は2個つき、葉柄の基部が偽茎に重なり、下の葉が上の葉よりも大きい。披針形から線状披針形の小葉は鳥趾状に10個から20個前後つく。雌雄異株で、花期は5月から6月ごろ。仏炎苞の開口部は広く、口辺部は耳状に張り出す。舷部は卵形で、筒部より短いのが特徴で、先は尖る。肉穂花序の付属体は細い棒状で、先端は緑色を帯びるが、ムロウテンナンショウほど濃くない。 写真は白い条の入った仏炎苞を開くホソバテンナンショウ(左)、仏炎苞のアップ(中)、赤い実をつけたホソバテンナンショウ。

 花は時 時を定めて訪ひ行くに 花は訪ひ行く数に関はる

 

<1825> 大和の花 (112) ヒロハテンナンショウ (広葉天南星)    サトイモ科 テンナンショウ属

               

 ブナ帯に生えると言われる多年草で、高さは大きい個体で50センチ前後とテンナンショウ属の中では小形の部類に入る。地中の球茎は多数の子球をつけ、子球からも偽茎が立ち上がるので群生することが多い。偽茎は葉柄と同長で、葉は普通1個、稀に2個つくものもある。小葉は狭卵形乃至は楕円形で、5個から7個が掌状につく。

 雌雄異株で、花期は5月から6月ごろ。仏炎苞は葉より下につき、黄緑色から緑色で、隆起する白い条が見られる。筒部は7センチほどで、口辺部は多少開出し、舷部は卵形で先が尖る。肉穂花序の付属体は黄緑色乃至緑色で棒状になる。ヒロハテンナンショウは北海道から本州の日本海側と九州北部に分布する日本の固有種であるが、ここで示す写真の個体は東吉野村の明神平(標高1320メートル)の草地で見かけたもの。葉が細く見えるのは展開が終わっていない状況によるものと思われる。 

 写真は群生して生えるヒロハテンナンショウ(左)と仲良く並んで仏炎苞を開くヒロハテンナンショウ(右)。花茎の基部に襟のような襞が見られるのもヒロハテンナンショウの特徴であると言われる。(いずれも東吉野村の明神平)

    花に会うにはねえ 花は歩いて来ないから こちらから出向くほかない

    それも花どきに 咲いていたら みんな拒むことなどなく 迎えてくれる

    花との出会いは 言わば これの繰り返しなんだ 四季を通していつも 

 

<1826> 大和の花 (113) コウライテンナンショウ (高麗天南星)    サトイモ科 テンナンショウ属

              

  丘陵地から山地の林縁や林内に生えるテンナンショウ属の多年草で、全国的に見られ、中国東北部、シベリア南東部、朝鮮半島にも分布するのでコウライ(高麗)の名がある。高さは70センチから80センチほど。葉は2個で、先が尖る長楕円形乃至は楕円形の小葉が鳥趾状に数個から10数個つく。

  雌雄異株で、花期は4月から6月ごろ。仏炎苞は普通緑色で、卵形の舷部は縦に白条が入り、先が細く尖って。白条のはっきりしない個体はマムシグサと判別が難しいところがある。肉穂花序の付属体は緑色を帯びた白色のやや棍棒状で、開口部はやや広く、口辺部は少し張り出す。 

 写真は緑色の仏炎苞をつけるコウライテンナンショウ(左)、背後から見た白い条の入ったコウライテンナンショウの仏炎苞(右)。白い縦の条は光に透けて花粉を運ぶ虫たちの興味を引き、仏炎苞の中にある花へ誘うようになっているのだろう。仏円苞の内部の奥にはトウモロコシ状に実を生らせるように小さな花が花序にびっしりついている(野迫川村の伯母子岳登山道)。

 天の時地の利に山野の草木も花を咲かせる恵みとはなし   

 

 


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