大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

日ごろ撮影した写真に詩、短歌、俳句とともに短いコメント(短文)を添えてお送りする「大和だより」の小筥集です。

大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2016年05月14日 | 植物

<1598> 三峰山(御杖村)の白つつじ

         出会ひ得てこれかこれかと白つつじ

 このところの晴天により奥宇陀・御杖村の三峰山(一二三五メートル)で白つつじが咲き始めた。山頂から八丁平付近に多く、ほとんどの木が蕾の膨らんでいる状態で、中には五、六分咲きの木も見られた。というところで、見ごろは来週の後半ではなかろうかと思われる。三峰山の白つつじは初めて見たが、木や葉や花の姿からして、ゴヨウツツジやマツハダの別名を有するシロヤシオと思われる。

 シロヤシオはアカヤシオと対の名で、ヤシオは八潮染めのこと。つまり、花が白く染めたようだというわけである。ゴヨウツツジは五つの小葉が輪生しているためであり、マツハダは松肌で、古木になると樹皮がマツの木のように割れるからと言われる。言わば、花がなくても見分けることが容易に出来るツツジである。

                 

 シロヤシオは紀伊山地の大峰や台高山脈の標高一四〇〇メートルから一六〇〇メートル付近の尾根筋に多く見られ、五月の末ごろ、葉の開出直後に白い花を咲かせる。三峰山の花は少し小振りで、葉の開出と同時に咲き、葉が完全に開ききっていないものが多いので別種のようにも思われるところがある。これは標高差の生育環境によるものに違いなく、花が早く咲き出すか、葉が遅く開くためではないか。

 シロヤシオは岩手県以西の太平洋側と四国に分布し、アケボノツツジやアケボノツツジの変種であるアカヤシオと同じく紀伊半島では西南日本を南北に地質、地勢的に二分する中央構造線の地溝帯より南、即ち、太平洋側に分布し、三峰山はこの中央構造線の地溝帯に接していることをして考えを巡らせれば、白つつじが移植されたものでなく、自然分布しているものならば、貴重な地球上の自然的サンプルたり得る。

 どちらにしても、初夏に咲くシロヤシオの白い花は赤い花のヤマツツジと好対照な爽やかな花で、山頂一帯の風景とともに気分を快くしてくれる花ではある。 写真は白つつじ。十三日午後一時過ぎ、三峰山の八丁平付近で写す。後方の山並は奥吉野方面。

 

 

 


最新の画像もっと見る

コメントを投稿