<3649> 奈良県のレッドデータブックの花たち(163) セッコク(石斛) ラン科
[古名] スクナヒコナノクスネ(少彦名薬根)、イワグスリ(岩薬)。
[学名] Dendrobium moniliforme
[奈良県のカテゴリー] 絶滅危惧種
[特徴] 岩上や樹上に多くの根を張って着生する多年草で、節のある茎が束生し、高さが10~30センチになる。茎の節間には縦の条が入る。葉は長さが5センチ前後の披針形で、質は厚く、互生する。
花期は5~6月で、葉が脱落した節から細い花茎を伸ばし、白色または淡紅色の花を1~2個つける。萼片3個と側花弁2個はほぼ同長で、長さが2.5センチほど。唇弁はやや短く、卵状楕円形で、ともに先が尖る。仲間に花が黄色を帯びるキバナノセッコク(黄花石斛)がある。
[分布] 本州(中部地方以西)、四国、九州、沖縄。国外では朝鮮半島、中国。
[県内分布] 宇陀市、川上村、上北山村、下北山村、十津川村。
[記事] セッコク(石斛)の名は漢名石斛(セキコク)の音読みによるもので、セキコクがセッコクになったと言われる。古名のスクナヒコナノクスネ(少彦名薬根)やイワグスリ(岩薬)は古来より健胃、強壮の薬とされて来たことを物語るもので、平安時代初期の『本草和名』にはその名が見える。少彦名は記紀の神話に見える神で、大国主命とともに医薬の道を開き導いた神として知られる。一方、イワグスリ(岩薬)は岩の上に生える薬草の意としてセッコクであると言われる。
なお、熱帯アジアにはセッコクの仲間が多く、中でもよく知られるものに花の美しいデンドロビュームがある。セッコクは一時期観賞ブームが起き、激しい採取に見舞われ激減した。その後、栽培技術の向上により、人工的に株を増やすことが出来るようになって価値が薄れたが、それでも見つけ次第採取され、自生地、個体数とも著しい減少が見られるという。写真は岩崖に着生し、花を咲かせるセッコク(左)と束生する花のアップ(右)。
岩場は小さい植物の居場所になっている
これは岩が大きい植物の進出を阻み
害を及ぼす動物を寄せつけず
小さい植物を守護していることが大きく
小さい植物の聖域または楽園状況を
その場につくり上げているからである
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます