<3776> 写俳二百句(133) スイカズラの花
曇天下匂ふ道々すひかづら
スイカズラ(忍冬)は全国の山野に自生するスイカズラ科のつる性常緑木本で、ほかの草木などに絡んで這い上る。葉が冬にも枯れず耐え忍んで青々としているところから忍冬(にんどう)。これは漢名による名で、和名においてはこの忍冬をスイカズラと読ませ、忍冬の名もよく知られている。スイカズラの名は、花に甘い蜜があり、吸う意。薬用植物で、葉に出来物の毒を吸い取る作用がある意。また、冬を耐え忍ぶシヌヒカツラ(忍蔓)の意などその由来には諸説ある。
花期は五月から六月ごろで、対生する卵形の葉の腋に芳香のある二つの花を並べてつける。花は細長い筒状で、開花すると唇状に開き、上唇は大きく二裂し、下唇は裂けず、みな反り返り、雄しべも雌しべも花の外に長く伸び出してつく。咲き始めの花は白く、咲き終わるころになると黄色になり、同じつるに黄色と白色の二色の花がつくのでキンギンカ(金銀花)の別名(漢名)でも呼ばれる。
花の咲き始めから咲き盛るころは曇天無風の日でもよく匂い、その芳香は道を歩いていても匂って来て、「スイカズラだな」と目を向けさせるところがある。実は球形で、秋に黒く熟す。
スイカズラは古代エジプトの装飾文様「忍冬文」で知られ、その紋様は日本にも伝来し、正倉院御物や法隆寺の玉虫厨子の透かし彫り金具などに見ることが出来る。このようにスイカズラには誇らかな歴史が刻まれてあり、親しみの持てる植物である。
反面、スイカズラは北アメリカやヨーロッパでは観賞用に導入したものが、野生化し、旺盛な繁殖力によって、雑木化し、繁茂し過ぎて、嫌われる存在になっているところがある。東西における文化の違いであろうか、評価が分かれるから、世の中はわからないものである。とにかく、今の時期、山野の道を歩くと、このスイカズラの花に出会う。 写真はともに道端の草地で他物に絡み花を咲かせるスイカズラ(大和郡山市)。
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