大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

日ごろ撮影した写真に詩、短歌、俳句とともに短いコメント(短文)を添えてお送りする「大和だより」の小筥集です。

大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2018年07月09日 | 写詩・写歌・写俳

<2383> 余聞、余話 「この度の西日本における水害に思う」

      罔と殆この身一身励むほかあらざり思ひの袖に絡まる

 西日本一帯におけるこの度の洪水や山崩れなどの雨による災害は前線上に発生する線状降水帯による長時間に及ぶ膨大な雨量によって起きた。これは日本列島の気象的特殊性によるところ。地球温暖化の影響が大きいか、近年の現象傾向として見られる。技術力をつけ向上して来た気象予報はその悪夢的状況をよく見据え、予報において警戒を呼び掛けていた。にもかかわらず、甚大な被害が出た。なぜなのだろう。そして、この種の災害はなぜ繰り返し起きるのか。検証しなければならないところである。

  忘れもしない平成二十三年(二〇一一年)八月の末、台風十二号によってもたらされた降水帯の長雨による紀伊半島の被害は甚大だった。あれから線状降水帯の影響が問題視されるに至ったが、それ以後も、栃木県の鬼怒川の氾濫、昨年の北九州の豪雨災害、そして、この度の西日本の広い範囲に起きた洪水や山崩れによる被災と立て続けである。これらはみな同じような線状降水帯の発生が要因となっている。

  3・11の東日本大地震を契機とする地震対策は進んでいるようであるが、この線状降水帯による被害の発生については効果的な防御策がないまま今日に至り、同じ災害が各地で起きている。地震もさることながら洪水や山崩れによる災害は人命をも巻き込み、生活の基盤そのものに大きな打撃を与え、被災者を路頭に迷わせている。地震と違い、予報に確実性が持てる時代になったにも関わらず、この情報が生かされず、またしても甚大な被害が出てしまった。これはどうしてなのか。検証する必要があるだろう。

  それは私たちに何かが足りないからに違いない。その何かを探り、対処しなければ、こうした雨による災害はまたどこかで起き、そのたびに犠牲者を出して右往左往することになる。防災、減災の掛け声は高らかであるが、毎年のように何処かで起きているこの線状降水帯の豪雨の長雨による災害は収まる気配がないところにある。この突きつけられた事実を地域的個別のことと見なすのではなく、抜本的対策が必要な時代になった。今回の災害はそれを感じさせる。

                       

  思うに、線状降水帯の出来るのが止められないのであれば、それに対処して対策を講じるほかにない。その対策の基になる災害の要因分析を十分にし、それに基づいて対処する必要がある。そのためには被害地の調査をはじめとするところからはじめなければならない。だが、それが個別の一過性として捉えられ、災害に至った問題点が国レベルで共有されることなく、見過ごされて来た点があげられる。言わば、同じような災害が起きても、以前の災害の教訓が生かされず、また以前と同じように右往左往する状況が生じ、同じ悲劇が繰り返されているのが実情と言ってよい。

  つまり、災害が地域的なもので、一過性という考えの支配によって、他地域においては他人事の無関心が抜本的な防災対策の進まない要因になっているようなところがある。要するに、そこには過去の経験が生かされず、現在があるという状況が言えるわけで、この連続する被災の状況が収まらずあるのは、ここに大きい一因があると見て取れる。こうした考え方を持たず、災害を他人事として受け止めている以上、またいつか、どこかで同じ悲劇が繰り返される。もっと抜本的な対策が必要に思える。

  この度の洪水の状況を見ると、広島市にしても、倉敷市にしても中心部の市街地は被災しておらず、近郊の住宅地が洪水に見舞われている。これは何を意味しているのか。こうしたところから分析して対策は練られて行かなくてはならない。例えば、水が大量に出ると、水はどのように流れ、どこに溜まって被害を及ぼすことになるか、こういうのをシミュレーションし、対策すること。これが肝心なように思われる。

  今一つには中山間地域や新興住宅地の山崩れや土砂崩れによる被災が顕著に見られること。これについてもこの種の豪雨による被害の一端として認識される。これについても事前の対策が求められる。それは地域の住宅政策にも関わることであるが、どちらにしても、毎年、同じような災害が起き、泣きを見ている人々がいる。これは何とも歯痒い現象である。

  とにかく、毎年同じような半端でない雨による災害が起き、どこで起きてもおかしくないような状況にあって、何も対策がなされずにいるという鈍感さが重ねられている様相がこの度の災害にも現れた。どうすればよいのか、知恵が求められて止まない。 写真はこの度の洪水。左は倉敷市真備町、右は広島市安佐北の状況 (NHK総合テレビのニュース解説の画面による)。