大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

日ごろ撮影した写真に詩、短歌、俳句とともに短いコメント(短文)を添えてお送りする「大和だより」の小筥集です。

大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2018年02月09日 | 植物

<2233> 大和の花 (435) キササゲ (木豇豆)                                                     ノウゼンカズラ科 キササゲ属

                     

 中国中南部原産の落葉高木で、高さは10メートルほどになる。古くから植栽され、野生化した個体も見られる。樹皮は灰褐色で、縦に浅く裂ける。葉は長さが10センチから25センチの広卵形で、浅く3、4裂し、先は短く尖る。縁に鋸歯はなく、基部は心形。葉柄は葉身とほぼ同長で、対生または3輪生する。

 花期は6月から7月ごろで、枝先に長さが10センチから25センチの円錐花序を出し、淡黄白色の花を多数つける。花冠は長さが3センチほどの広漏斗状で、上部は浅く5つに裂け唇形状になり、内面に濃紫色の斑紋が入る。雄しべは5個で、上側の3個には葯がない。雌しべの柱頭は2裂する。蒴果の実は長さが30センチほどの線形で、マメ科のササゲ(豇豆)に似るのでこの名がある。種子は長楕円形で、両端に長い毛が密生し、これによって風に運ばれ遠くへ飛び散る仕組みになっている。

 いつの時代に、何の目的で渡来したのかはっきりしていないが、材はキリ(桐)に似て軽く、下駄や版木などにされ、カワギリ(河桐)、カワラギリ(河原桐)の別名もある。また、バラ科のナナカマド(七竃)やセンダン科のチャンイン(香椿)などと同じく、雷が落ちやすい木としてライデンボク(雷電木)、カミナリサザゲ(雷豇豆)の異名を持つ。奈良・興福寺宝物館脇のキササゲは、落雷に見舞われても、このキササゲが雷を受け止めて宝物館はじめ堂塔伽藍を守る意によって植えられているのだろうと思われる。ほかにもアズサ(梓)の別名を持つ。

  一方、薬用植物としても知られ、ササゲのような実は漢方で梓実(しじつ)と呼ばれ、利尿剤に用いられる。また、根や樹皮は解熱剤や駆虫剤として利用されて来た。 写真はキササゲ。円錐花序の花とササゲのような実(興福寺ほか)。   春は来るきっと来るなり冬芽立つ

<2234> 大和の花 (436) アメリカキササゲ (亜米利加木豇豆)                              ノウゼンカズラ科 キササゲ属

             

 北米原産の落葉高木で、明治時代に渡来した帰化植物である。高さは10メートルほど。樹皮は灰褐色で、中国原産のキササゲ(木豇豆)に似るが、葉は長さが15センチから20センチの広卵形で、キササゲのように浅く裂けることはなく、先が長く尖る違いが見られる。

  花期は6月から7月ごろで、枝先にキササゲと同じような大きい円錐花序に多数の花を咲かせる。キササゲの花冠が淡黄白色であるのに対し、本種は白い違いがある。30センチほどの線形の蒴果もキササゲに似て、実だけでは判別し難いところがある。

 大和(奈良県)ではあまり見られないが、御所市の川岸で野生化しているのを見かけたことがある。 写真は花を咲かせるアメリカキササゲ(左)と花序のアップ(中)とササゲに似る実(右)。   先がけの一輪健気梅の花