大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

日ごろ撮影した写真に詩、短歌、俳句とともに短いコメント(短文)を添えてお送りする「大和だより」の小筥集です。

大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2018年02月02日 | 写詩・写歌・写俳

<2226> 余聞、余話 「アオバト」

        命あるものの切なさ自愛もて生きゐよ汝のその身の上を

 このところ日本列島は寒波の襲来によって北国では大雪に見舞われているが、大和(奈良県)でも冷え込みの厳しい日が続いている。この厳寒の中、広陵町の馬見丘陵公園に珍しいアオバト(緑鳩)がやって来て、このところ野鳥愛好家の注目を集めている。

                           

 アオバトはハト科アオバト属の留鳥もしくは渡り鳥で、昔はヤマバト(山鳩)と呼ばれていたこともある。体長は30センチほど、全体的にオリーブ色で、オスは黄色と赤色を交え、メスはオスより地味で、ともに虹彩と嘴は薄青色をしている。植物の実を好んで食べ、繁殖期は六月。日本、中国、台湾に棲息し、北海道のアオバトは夏鳥で、秋になると本州に渡る。本州、四国、九州のアオバトは留鳥として知られ、南西諸島から台湾、中国のアオバトは冬鳥として渡る。大和(奈良県)のアオバトは留鳥と考えてよさそうであるが、その行動は定かでなく、謎の多い鳥のようである。

 特に謎とされているのは、群をつくって海水を飲みに海岸に現われると言われ、よく目撃されている。ミネラルの補給ではないかとの見方もあるが、はっきりしたことはわかっておらず、全てのアオバトが同じ行動を取るかと言えば、そうとも言えないようである。

                               

  春に金剛山(1125メートル)に登ったとき、山頂近くのブナ林帯で鳥を撮影している人に出会い、何を撮っているのか訊ねてみたら、アオバトと言っていたので、馬見丘陵公園に姿を見せているアオバトは、もしかすると、厳しい寒さと積雪に追われて、それほど遠くない金剛山から下りて来たものかも知れない。季節が進み、暖かくなれば、また、山に帰るのではなかろうか。言わば、この馬見丘陵公園のアオバトは今冬の寒さを象徴しているようにも受け取れるところがある。

 公園には自然林があって、草木の実が豊富なところで、アオバトにはよい場所ということになるのだろう。この間からメス二羽が樹高15メートルほどの常緑高木であるツクバネガシの枝に止まり、野鳥愛好家の人たちが集まってカメラを向けているという次第である。 写真上段は二羽のアオバト。下段はアオバトの撮影に当たる野鳥愛好家の人たち (馬見丘陵公園)。