大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

日ごろ撮影した写真に詩、短歌、俳句とともに短いコメント(短文)を添えてお送りする「大和だより」の小筥集です。

大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2015年10月20日 | 植物

<1394> 柿に寄せて

         柿食へば 大和の味と 思ふなり

 この間、スペインの旅行をした知人に地中海地方特産の缶入りのオリーブ油と柿入りのミルクチョコレートを土産にいただいた。小さな柿なのだろうか、ヘタのついた生の干し柿にミルクチョコレートを塗し、それを銀紙に包んだもので、柿とミルクチョコレートのコラボに素朴な甘さがり、美味しくいただいた。知人の話では地中海に面しているスペインは、オリーブにも言えることだが、果物が豊富で、その中に柿も見られるという。どうも日本から取り寄せたもののようで、その名はやはり「かき」というようである。

 聞くところによれば、研究熱心な日本に見られる丸々と太った富有柿よりも小ぶりらしいが、店先にも見られるとのことである。柿はカキノキ科の落葉高木で、中国原産と言われ、日本には奈良時代のころ中国から渡来したとされる。『万葉集』には登場を見ないが、万葉歌人の第一人者である柿本人麻呂に柿の字が見えることは、この時代すでに柿の渡来があった証と言えるから、その渡来は中国との交易が頻繁になった飛鳥時代に遡るかも知れない。因みに、この柿本の姓は柿本人麻呂の家の傍に柿の木があったからとの説がある。

 言わば、スペインの柿は中国が発祥で、日本で改良され、スペインにも渡ったということになる。紫陽花(あじさい)は日本が原産国であるが、これが中国に渡り、中国から西洋にもたらされ、改良されて西洋紫陽花(せいようあじさい)として日本に逆輸入されて来た。今や紫陽花と言えば、この西洋紫陽花がイメージされるほどで、日本中を席巻している。

                                 

 ミルクチョコレートに包まれた柿のスペイン土産はスペインで工夫されたものであろう。日本にも登場を見るかも知れない。食した感触では渋柿を干したもの、つまり、干し柿を利用しているように思われる。多分、文化交流の一端に生まれたものという認識があって知人には土産にしてくれたのだろうと察っせられる。

 大和は五條市をはじめとする柿の一大産地で、今まさに柿の収穫が真っ盛りの時期である。天理市の刀根叔民さんが開発した種無しの渋柿を化学処理によって甘くし、刀根早生の名で早出ししている。この柿の後に甘柿の富有柿や御所柿などが出て来る。 写真はスペイン土産の柿入りチョコレート(左)と熟れた甘柿の実(右)。  

   柿食はば 大和の味と 思ふべし

    人も言ふ 大和に柿の 多きこと

   柿の里 いいねと歩く ひとの声

   秋だねと 柿の里行く 浪速びと

   天の青に 柿の充実 くきやかに

   眺めても食ってもよけれ 柿実る

     子規に柿 大好きな柿 わたくしも