<1403> 「うむ」の来歴
日月の速さに棹を差しながら 「うむ」の来歴いまに及べり
来歴七十年。長いか、短いか。過ぎてみれば短いような気もする。その間、折り節に諸事情があったと顧みるにその度ごとに「うむ」の言葉をもってその諸事情を胸に納めて来たように思われる。そのときどきの思考、判断が正しかったかどうか。ときには撹乱されるという仕儀にも及んだが、それもこれも「うむ」のうちに納めて来た。
よしにつけ悪しきにつけ、これは一つの実績であり、あるは愚かと賢さ、あるは弱さと強さの現れにほかないところ。自らの内に残ったものが何かは知らず、一顆の重さを掌にしているその感。以後も「うむ」に納めてゆくべく精進のほかにはあらずと言ったところである。以下に五首の歌あり。明日への一歩というほどの心持ち。 写真はイメージで、リンゴ。
肯定も否定もと惑ひゐることも 言はばすべては「うむ」のうちそと
現身の事情あれこれ 「うむ」のうち 「うむ」三千の身のほどを来ぬ
それよその 如何にあれども「うむ」にあり 丸き林檎は「うむ」を諾ふ
「うむ」によりことは納まり得る そして そこより見ゆる地平の彼方
「うむ」といふ言葉は心の言ひにして 定まる道をありがたくする