<459> 総選挙の始まりに当たって
気になるけれども どうにもならない もどかしさがある そのもどかしさの 一票一票の集積の
内実こそがいわば 票という不明確な 存在として私たちの 懐に入り そして 絡みつくのである
第四十六回衆議院議員選挙が公示され、十六日の投開票日に向けてスタートした。既成政党の分裂や新党の立ち上げなどがあって十二党が乱立する様相を呈する選挙となり、経済政策、社会福祉と税の在り方、原発への対応とエネルギー政策、東日本大震災における被災地の復興、安全保障並びに外交、沖縄の米軍基地問題、貿易(TPPなど)の方策、赤字財政への取り組み(議員削減、無駄の排除、公務員対策など)、地方分権、憲法論議等々国政の課題はまさに山積みと言ってよく、争点も絞り切れないところが見て取れる。国民にとっては見過ごせない重要な課題ばかりで、何を軸にして選に臨むかということになるが、果たしてどのような政界再編の展開が見られるのであろうか。今日は十二党乱立ということについて考察してみたいと思う。
十二の政党が乱立する様相にはさまざまな要因が考えられるが、その根本にあるのは国民が精神的な安定を得ていないからではないかということである。言わば、国民の精神的不安定状況が政党乱立という現象に至ったということではないかと考えられるわけである。頼れる政党があり、その政党が大多数の国民に支持されるような状況下では政党の乱立はまずあり得ないと言える。けれども、今回のように沈滞する国の状況において十分に頼れる政党がなければ、有権者の不満を素地として新しい政党の生まれ来ることは、政治の力学において、当然と言え、政党の乱立現象に通じることになる。これは単独で政権が担えない状況下では、連立を組まなければならないわけで、小さな政党でも、この状況下では、連立に与せる可能性が生まれ、与すれば政権の一端を担うことが出来るということを示しているのである。
政党の乱立は、民主主義の正常な運営の現われには違いないけれども、力学的政治の状況から考えれば、これは世の中の不安定さの反映にほかならないわけで、私たち国民にとっては決してよい国の状況とは言えないところがあるのである。小数政党で連立を組み、政権に就いた党は公明党や国民新党がよく知られ、小さな党でも、連立維持に貢献するという状況下ではキャスチングボートを握り、発言力を持つことも可能なわけで、小さな政党の議員でも、政権参加のチャンスが生れることになる。だから、選挙自身も大切ではあるけれども、選挙後の政界編成の成り行きというものにも目の離せないところがあると言えるのである。
つまり、国の状況が沈滞して安定せず、いろんな意見が飛び交うようなときには、安定政権が生まれ難く、仮に生れても、すぐに国民の不満が生じて来て、政権を倒す動きに向かうことが考えられるわけで、解散に追い込まれ、短命に終わった現民主党政権がよい例としてあげられるのである。公示前に行なわれたNHKの世論調査の結果を見ると、国民の政治に対する心情というものがよく現われているのがわかるが、どの政党に政権を任せるのがよいかという質問に対し、自民単独や自民民主連立よりもその他の政党による連立が三十パーセントを越えて多かったことで、このパーセンテージは注目に値すると思われるのである。
票読みの予想では自民候補の当選が圧倒的と言われているけれども、このNHKの調査結果は、国民の政治に対する心情の一端が垣間見えて興味を引かれるところである。言わば、この調査結果は、自民党が政権を取ったとしても、国民心情の安定に繋がるような施策を打ち出し、それを成果に結びつけなければ、すぐさま国民の不満が出て、政治の混乱に繋がることを物語っていると言えるのである。さて、選挙は如何なる結果になるのであろうか。 (写真はイメージ)。