Vision&Education

木村貴志の徒然なるままの日記です。

無意識の教育

2012年11月02日 | Weblog
真に人間教育と呼びうるものは、
教師が意識しなかったところで授受される。

教室で算数を教える教師は、
そして2プラス2は4という純粋な知識だけを教えている教師は、
どうして他のことを教えずにすませるでしょうか。

「民主主義」や「平和」を教えても、
先生自身がそれを身につけていないならば、
生徒は結構、利己心や闘争心を養成される。

そういう影響力は教場においてもっとも強力に働くものです。
それなら、知識だけを教える過程において、
同時に、知識に対する態度が
自ずと生徒に伝わると言うことも否定できますまい。

そこから注意力や判断力が、
さらに公正、誠実、忍耐等の美徳が生まれてきましょうし、
お望みとあれば、「親孝行」の美徳も「社会性」の美徳も
養われるといってもいい。

教科における科目としてではなく、
こうして教える側の無意識のうちに授受される人間教育こそ、
大事なのではないでしょうか。

ここに、教育は知識教育に留まるべきだという
現実主義的なペシミズムと、
真に教えるに値するものは知識ではなく、
「人間的なるなにものか」であるという
理想主義的なオプティミズムとは、
十分に両立しうるのであります。

一方が無ければ、また他方も生じないでしょう。

~『日本への遺言』福田恒存より~
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