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地主と借地人との間で、借地人が地主に相当額の更新料を支払う旨の合意をしたと認め、更新料の相当額を認定して支払いを命じた事例(東京地方裁判所令和2年7月31日判決)

2024年05月01日 | 最高裁と判例集
借地契約における更新料の支払に関して、多くの裁判例では、裁判所において客観的に更新料の額を算出することができる程度の具体的基準を契約書等で定めておかなければ、具体的権利性を認めることはできないとされています。しかしながら、更新料の支払いを巡る交渉段階での地主とのやり取りによって、たとえ契約書に更新料算出に関する具体的基準が定められていなくても(しかも、法定更新であったにもかかわらず)、更新料の支払義務が認められた事例がありますのでご紹介します。
 本事例における借地契約では、期間は平成30年7月18日までとされ、更新については、「地主と借地人の合意により更新する場合には、借地人が相当額の更新料を地主に支払う」とされていました。
本借地契約は、結果として法定更新され、法定更新に基づく更新料の支払いは認められませんでした。しかし、当事者間で別途更新料の支払の合意があったとして、更新料の支払いが認められてしまいました。
地主の代理人弁護士は、期間満了が近付いた平成30年7月3日、本件更新条項を前提に借地人と面談し、更新料の支払を申し入れました。借地人も同弁護士から更新料の提示があることを認識して面談に臨み、更新料の額及び根拠には納得しませんでしたが、持ち帰って検討すると述べたほか、更新料の大幅な減額と引換えに多少の賃料増額には応じる余地があるとも述べ、更新料の額について、地主のみならず借地人からもその額の提案をしました。
 裁判所は、上記事実を踏まえ、平成30年7月3日の面談当時、従前の経緯及び本件更新条項の合意等から、本件借地契約を更新する場合は、借地人が地主に相当額の更新料を支払うものと認識していたといえ、この限度で意思の合致を認め、相当額の更新料を支払う旨の合意が成立したと認めました。その上で、当該合意の際にも具体的な金額の合意はなかったのですが、更新料の額につき更地価格の4%程度が妥当と判断しました。
 このように契約書に更新料の金額について明確な基準がない場合でも、慎重に交渉することが必要ですし、事前に組合や弁護士等にご相談してもよいかと思います。

(穐吉 慶一弁護士)


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