東京多摩借地借家人組合

アパート・賃貸マンション、店舗、事務所等の賃貸のトラブルのご相談を受付けます。

裁判事例 競売妨害に当たる暴力団の占有と損害賠償

2009年03月17日 | 最高裁と判例集
福岡高裁判決 平成17年6月14日
(判例時報 1922号 86頁)
(判例タイムズ 1213号 174頁)

《要旨》
 競売の対象建物に入居して暴力団事務所として使用し、かつ同建物の敷地の一部を取得したことが、競売を妨害し、担保権者に対する不法行為となるとされた事例


(1) 事案の概要
 土地及び建物には根抵当権が設定されていたところ、平成6年1月18日に競売開始が決定、平成7年7月、最低売却価額を約3,204万円として期間入札が実施された。その後の数回にわたる期間入札の後、平成11年6月、指定暴力団組長Yは本件建物の占有を開始した。その後も、さらに数回にわたり期間入札が実施され、平成14年8月の最低売却価額は699万円であった。
 債権者であるXは、Yが本件競売を妨害したとして、①得べかりし配当金500万円と②その遅延による約331万円の損害を被ったとして、提訴した。
 一審は、①Yは、本件競売を妨害したものと認められる。②Yの妨害がなければ、最低売却価額を999万円とした平成14年3月に実施された期間入札で落札されたものと認められる。したがって、Xの損害は上記999万円を前提とした遅延損害金99万円余であると判断した。不服としたXが控訴した。

(2) 判決の要旨
 ①Yは、専ら本件建物が落札されることを妨げる目的で正常でない権原により本件建物を占有するなど、本件競売を妨害したものと認められる。
 ②抵当権者は、競売の結果を待つことなく、その売却前であっても、抵当権に対する侵害行為がなければ売却が実現できたであろう時期以後において、当該侵害行為により価値が減少し、従前の価値を回復する見込みがないと認められる場合にはその差額を賠償請求できると解するのが相当である(大審院判例昭和11年4月13日)。本件についてみるに、Yの不法な占有以外に本件不動産の売却を妨げるべき要因はなく、また、平成11年12月期間入札時の最低売却価額1,659万円か、少なくとも平成13年7月期間入札時の最低売却価額1,482万円程度で本件不動産を売却できたものと認められる。結局、平成14年8月期間入札時の最低売却価額699万円でも買い手が現れなかったことを考慮すると、Yの占有により本件不動産の価値は上記最低売却価額の低下額に相当する額だけ減少させられたものと認めるのが相当である。
 ③最低売却価額の下落が直ちにXの配当額の下落を意味するものではないが、Yによる不法占有以外に最低売却価額が次々と低下していった原因はなく、最低売却価額の下落をもって交換価値の下落を推認することができる。仮に、不法占有が終了し価値が回復するとしても、これをもって法秩序を無視する不法行為者が負わなければならない損害賠償義務が軽減されると解することはきわめて不当である。Xには、500万円を超える損害が生じた。


(3) まとめ
 様々な競売妨害行為が問題とされてきたが、最低売却価額の下落



借地借家の賃貸トラブルの御相談は

東京多摩借地借家人組合

一人で悩まず  042(526)1094 

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 派遣切りの3割弱が住まい得... | トップ | 派遣切り労働者の住居 借地... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

最高裁と判例集」カテゴリの最新記事