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自ら法律に反していながら法的救済を求めるのは信義則に反するとした事例

2008年11月25日 | 最高裁と判例集
 判例紹介

 自ら法律に反していながら法的救済を求めるのは信義則に反するとした建築距離違反の事例 (大阪地裁昭和63年9月26日判決、判例タイムズ695号)

 (事案)
 Aは甲土地、Bは乙土地をそれぞれ所持し両土地と隣接している。

 Aは両土地の境界線をイ、ロを直線で結んだ線であるとして境界の確定を請求し、同時にBが民法234条で定める建築距離である境界線から50cm空けずに建物を築造しているため、本来空地であるべき土地部分を利用できなかった損害賠償としてBに対し40万円の支払を求めた。

 BはAの主張する境界線を争い、Bの建築物が仮に民法234条に違反しているとしても、A自身も同条に違反しているから、Aの請求は認められないとして争った。

 (判決)
 「信義則上、およそ法的救済を求めんとするものは自ら潔きをもって来るべし、という要請があると解すべきであるところ、AはBに対し民法234条の遵守を求め、これに従わなかったとして賠償を請求しているけれども、右認定のとおりA自身も同条に違反しているので、それは右信義則に反することになる。一般に、信義則違反の事実が認められる場合で、強行法規が適用される場合には、その強行法規の強行性の程度、内容と法の目的に照らして衡量し、後者が前者に優位するときに限り信義則の法的効果を承認することができると解すべきである。」

 (寸評)
 判決は、民法234条のうち火災の延焼防止の目的は公益的要素の強いものであるが、隣地上の築造、修繕の便宜、日照、通風の確保等の利益の保護は利益的要素に属するとして、A、B双方の建物が耐火建築物であることを考慮し、本件では民法234条はそれほど強い強行性があるといえないとしている。

 強行法規に反した相手方の行為と信義則の関係につて参考となる事例であるので照会した。

(1992.12.)

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より



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